ユーゴー「レ・ミゼラブル」第1部を読んで
第1部「ファンティーヌ」の観どころというか、読みどころというか、は次の3つの箇所かなと思います。
① ジャン ・ヴァルジャンがミニエル司教から銀の食器を盗んだのを司教は認めずに、さらに銀の燭台も渡す箇所。ジジャン ・ヴァルジャンは信じられない思いで頭が混乱します。
➁ ファンティーヌがジャヴェル警視に捕らわれて、市長マドレーヌ(実は出世したジャン ・ヴァルジャン)に会い市長の顔に唾を吐きかける箇所。それでも市長はファンティーヌを即時に開放するように警視に命令します。ファンティーヌはマドレーヌが経営している工場から解雇されたため市長に恨みを抱いていました。
③ジャン ・ヴァルジャンに間違われたシャンマティユーが、裁判にかけられていることをジャン ・ヴァルジャンは知ります。その裁判に出廷するかしないかジャン ・ヴァルジャンは懊悩します。悩んだままに彼は裁判所に行き、自分がジャン ・ヴァルジャンであることを告白する箇所。
わたしが意外に思ったのは、小説冒頭です。
主人公のジャン・ヴァルジャンは登場しないで、ミニエル司教の生活、思想や信仰に関する話が延々と続く第1部第1編「正しき人」をとても興味深く読みました。
主人公が登場するのは、次の第2編「墜落」からです。
ミニエル司教の言葉で興味を覚えた個所を以下のとおり引用します。
(岩波文庫 レ・ミゼラブル 第1部第1編「正しき人」 豊島与志雄訳より)
次に、ジャン ・ヴァルジャンが食器を盗んだとして憲兵がミニエル司教のもとに連れてきた箇所を引用します。
(岩波文庫 レ・ミゼラブル 第1部第2編「墜落」 豊島与志雄訳より)
引用しました箇所を再読しますと、トルストイがこの小説を愛読する1冊としたことに納得します。
理想を追い求めて彷徨うトルストイの心情にもつながるような気がしましたが、わたしの思い過ごしでしょうか。
わたしには、ミニエル司教の言葉の深い意味が、理屈ではなくしみじみと心に沁みとおるように思えました。
ミニエル司教から銀の燭台も与えたといわれたとき、、いったいジャン ・ヴァルジャンは、どんな表情をしていたのか。
BBCドラマのその個所をもう一度観てみましたが、ミニエル司教の言葉に反発するとともにこの状況を理解しがたいものとして演じているように見えました。
ジャン ・ヴァルジャンとミニエル司教とのこの対面の場面は、二人の役者さんのリアルな演技力に見ほれました。
やはり、この小説はドラマやミュージカルに仕立てると見ごたえがあるのかもしれません。
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