【青森旅行記:前編】元気で行こう。
2022年11月24日、私は函館港でスーツケースを引きずっていた。旅に出ていたのだ。"おきまりの苦しさ"のせいではなく、太宰治の生家を訪れるために。目的地は津軽。
私の恥の多い生涯の傍には常に太宰治の小説があった。いつか太宰の故郷を訪ねようと夢見ながらも、母親譲りの出不精でだらだらと足踏みしていたところ、友人のSに旅行に誘われた。それならば青森に行きたいと伝え、遂に私は津軽に足を踏み入れることになったのだ。私たちは太宰治が第一創作集『晩年』を刊行した時と同じ年齢だった。タイミ