マガジンのカバー画像

ブックレビュー

9
運営しているクリエイター

記事一覧

【ブックレビュー】ライオンのおやつ

私はいつも「死にたい」と思って生きている。自分の最期がどういう風になるのかばかりを考えている。 だから、「長生きして色々な世界を見たい」と語る人は、自分にとっては眩しすぎるし、近寄りがたいと、いつも感じる。私は早く死にたいのだ。それも、できる限り、はやく。 でも、私は自分で死を選ぶことはしない。そう決めている。もちろん、今のところは、だが。生きているのではなく、生かされていると思うから。 人は、生を受けたそのときから修行が始まっている。生きることは行なのだと、いつも思っ

【ブックレビュー】正欲

好きになったらのめり込みやすい体質で、最近は、元ブルゾンちえみさんこと藤原しおりさんの YouTube ばかり見ています。 木曜日に更新された動画の中で、しおりさんが最近読んだ本として紹介されていたのが、朝井リョウさんの「正欲」。「『多様性』という言葉の中で生きづらさを感じる人たちの話として、興味深かった」というようなことを、しおりさんは話されていました。 もともとこの本はタイトルとシンプルな装丁、そして朝井リョウさんが書かれたということで気にはなっていたのですが、なかな

【ブックレビュー】進撃の巨人(33)

本日配信開始、進撃の巨人33巻読了。 もうこのマンガ、凄すぎる。 普段だったらあまり言いたくないし、そんな語彙力、表現しかできない人を残念に思ったり揶揄してしまうような嫌な人間なのだけれど、もうその「残念な言葉」しか出てこないくらいに圧倒される。 「泣ける」 これだけ世の中を的確かつ残酷に、そして美しく描いたマンガがあっただろうか。 これはただのマンガじゃない。 私はこのマンガを「哲学書」として、これからも何度も何度も繰り返し読み続けることになるのだろう。 #ブック

【ブックレビュー】 猫たちの色メガネ

浅生鴨さんの「猫たちの色メガネ」という短編集を読んでいます。 浅生鴨さんといえば、NHK の公式 Twitter アカウント「@NHK_PR」の中の人第一号として有名になられた方です。 東日本大震災のときに NHK の番組が無断でネット配信されているのを、独断にて Twitter で情報拡散してしまったとして、物議を醸しました。 「今は何よりも、どんな方法であれ、情報を求める人たちに伝えることが大事だ」との判断だったとしています。その覚悟と潔さがカッコいいと多くの支持を

【ブックレビュー】伴走者

漆黒の闇の中から音だけが聞こえる。なぜかとても静かで、聞こえるのは自分の足音と淡島の声だけだ。街の音は聞こえない。 不思議だった。浅生鴨さんの「伴走者」を読んでいるときの自分はいつもこんな風だった。主人公は伴走者である淡島なはずなのに、私がいつも憑依してしまうのは、盲目のランナー内田の方だった。 伴走者。視覚障害のある選手の目の代わりとなって周囲の状況や方向を伝えたり、ペース配分やタイム管理をしたりする存在。 元プロサッカー選手で事故で盲目となった傲慢で自分勝手な内田を

【ブックレビュー】伴走者②

違うのかもしれない。 慮るだけではダメなのかもしれない。 前回、浅生鴨さんの「伴走者」について書いたブックレビューについてだ。 実は前回のブックレビューは、「夏・マラソン編」を読み終えた直後に書いた。そして、この文章は、「冬・スキー編」を読みながら書いている。 私たちは、無意識にコミュニティを選ぶ際、自分自身がマジョリティになれるコミュニティを選ぶことが多いのではないだろうか。 お金持ちはお金持ちと、同じ大学出身者同士と、子供がいる家族同士と、同じ性的嗜好を持ち合わせ

【ブックレビュー】青くて痛くて脆い

人生において「忘れることのできない大きな後悔」というのは、誰しもが持っているのではないだろうか。 昔、「一人で生きていこう」と決めたことがあった。誰かに影響されることではなく、誰かに影響を与えてしまうことが怖かった。それが自分を守るための唯一の方法だった。 でも、大人になった今は思う。 一人でいることはそんなに難しいことではないかもしれない。 一人でいれば傷つかないかもしれない。 でもさ、やっぱり、つまらないんだよ、生きてないんだよ、と。 だから「生きている限り傷つけ!」

【ブックレビュー】どこでもない場所

「事実は小説よりも奇なり」などという言葉はあるけれど、これが事実なのか小説なのか、本当に分からなくなるから、まさに迷子だ。 浅生鴨さんの最新刊「どこでもない場所」は、エッセイ本として出版されているが、まるで短編小説を読んでいるかのようだった。 ただ、この世の中に「事実」などというものはなくて、全ての物事は「自分の目」というフィルターを通してのみ表現される幻想なのだから、それが真実だろうと幻想だろうと、他の人から見れば等しく「物語」なのだろうとも思う。 表題作の「どこ

【ブックレビュー】OKUDAIRA BASE 自分を楽しむ衣食住 : 25歳、東京、一人暮らし。月15万円で快適に暮らすアイデアとコツ

今年のゴールデンウイークはなんかいつもより楽だなぁと感じていた。 それは、「何もしなくていいこと」を初めて正当化してもらった気がするから。 長期休暇明け誰かと会うのは、いつもちょっとどこか憂鬱だった。 「どこに行ったの?」とか「何してたの?」とかいつも言われるから。 「そうか…何かしなくちゃいけなかったんだ…」って、何もしていなかった自分をどこかでいつも責めてた。 どこかに行ったり、誰かに会ったりするのは、私にとってはとても疲弊することで、私は時間があったら何もせず家にい