【ブックレビュー】正欲
好きになったらのめり込みやすい体質で、最近は、元ブルゾンちえみさんこと藤原しおりさんの YouTube ばかり見ています。
木曜日に更新された動画の中で、しおりさんが最近読んだ本として紹介されていたのが、朝井リョウさんの「正欲」。「『多様性』という言葉の中で生きづらさを感じる人たちの話として、興味深かった」というようなことを、しおりさんは話されていました。
もともとこの本はタイトルとシンプルな装丁、そして朝井リョウさんが書かれたということで気にはなっていたのですが、なかなか手に取れていませんでした。
昨日の夕方から1週間強の夏休みに入ったので、「気になっている人が、気になっていた本を紹介しており、そして、自分には時間が少しできた。これは、たぶん読むタイミングなんだ」と運命思考が働いて Kindle で購入し読むことにしました。
実は、私自身もダイバーシティと声高に叫ぶことにはどこか息苦しさみたいなのを感じていました。
それは「多様性を認める」という言い方のせいだったのかもしれない、とこの本を読んで思いました。「認める」ということは、「認める」側の人間と「認められる」側の人間がいて、やはりそこは「認める側優位」の構図からは何も変わっていないと感じるからです。そして、たぶん、私は「認められる側」の人間に属しているとずっと感じているのだと思います。
ダイバーシティの象徴としてよく用いられる LGBTQ+ 。けれど、カテゴライズできる人たちは、「マイノリティの中のマジョリティ」であるということ。
以前、水川あさみさんが藤原しおりさんの YouTube に出ていたときに、ビーガンについて話をされていたことがあったのですが、そのときに「なんでもカテゴライズしたがる違和感」みたいなことを話されていたのを思い出しました。
ダイバーシティって、もっと個対個の関係性の中に存在するものであると思うし、つまるところ、「他者を尊重する」ということでしかない気がするのに、何でもカテゴライズして「理解できないものを理解しようとする魔法の言葉」的に表現されているケースが多いことに違和感を感じる、ということなのかもしれません。
それよりも、理解できないものが世の中には存在する、と言うことに対する寛容さ、それを恐怖なく受け入れるだけの強さみたいなものが必要なのかもしれないですね。
この本を読んだ感じたのは、「誰もが孤独であり、マイノリティなんだ」ということでした。きっと、それをどうにか誤魔化し合いながら、今日を、明日をどうにかやり過ごしているのではないかと。
だから、多分、自分だけが「認められる」側と感じていることはきっと間違っていて、誰しもが「認められる側」なんじゃないかなと感じました。そういう意味では、少し息苦しさからは解放された気もします。
改めて Amazon のページを確認すると、オードリーの若林さんと西加奈子さんが帯にコメントを寄せていました。「無遠慮にお勧めすることが憚れる大傑作」「この小説は、安易な逃亡を許さない。」。まさに。やはり、文章を書く方は鋭いコピーを残すなぁ。
#ブックレビュー #朝井リョウ #正欲
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