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ICTで支える介護の未来

総務省統計局のデータを見ると、総人口に占める高齢者人口の割合は一貫して上昇しており1950年で4.9%、1985年に10%、2022年には29.1%となっている。そして、第2次ベビーブーム期(1971~1974年)に生まれた世代が65歳以上となる2040年には35.3%になると予想され、さらに厚生労働省の推計では、2040年に69万人の担い手不足が見込まれるとしている。

あらゆる業種で人手不足が叫ばれる昨今、介護の分野も例外では無い。
働き方改革も掲げられる中で解決を図るためには、現状を見つめ直すことが必要だ。
書類でいえば何度も同じことを転記するような「無駄」や、そもそも時間内に終わることが「無理」な業務負担を減らしていく工夫や効率化が重要だ。
そのために技術を活用するのは当然だが、介護分野では活用が遅れているという。

全国介護事業者協議会による2022年末の調査では、訪問介護事業所における直接介護業務で見守りカメラやセンサーや装着型の移乗支援機器、リハビリテーション支援機器やコミュニケーションロボット等のICT機器を「すでに活用している」「活用したい」と答えたのは490事業所のうち5.7%、「どちらかといえば活用したい」は21.4%、「どちらかといえば活用したくない」「活用したくない」は20%だった。
一方、事務処理等の間接介護業務では、ICT機器等のテクノロジーを「すでに活用している」「活用したい」と45.5%が回答している。

直接型介護でのICT導入は利用者だけでなく訪問介護員の負担軽減に繋がるが、なかなか進まない。
導入にあたって、ハードルの一つがコストだ。
同協議会での調査でも、ICT機器やロボット介護機器を活用する際の課題として「導入や運用に要する費用(イニシャルコスト)の負担が大きい」と67.8%(複数回答)が答えている。
さらに「年配の職員等への使い方の指導が難しい」67.8%(同)、「機器やソフト、アプリの使い方を指導できる職員がいない」38.2%(同)とあり、機器に慣れるまでの時間がかかる点もハードルとして大きいとみられる。

政府は23年度予算で137億円を国や都道府県が拠出する基金に積み、介護ロボットやICT導入の補助額を引き上げた。さらに厚労省は事業者の導入に際しての相談窓口として「介護生産性向上総合相談センター」を都道府県毎に整備するとして、ハードの導入とソフトの運用を両面から支えたい形がみえてくる。

ただ、このような支援は往々にして書類が煩雑になったり、そもそもの支援に関する情報になかなかたどり着けないといったこともよくあると聞く。
介護制度をこれからも継続していくためには、その点も改善が必要なのではないだろうか。(T.W)

#日経COMEMO #NIKKEI

参考:『訪問介護事業の継続に向けた担い手の育成・確保等に関する調査研究事業』報告書【普及啓発用版】