調査もコンセプト設定が大切。
みなさま、こんにちは!
毎日暑い日々が続きますね。
今日は前回の続き、回収のお話から、設計のお話へと進めていきたいとおもいます!
前回のお話はこちら。
ブースト回収とは?
調査対象の中から特定の対象サンプルを一定数回収することを意味します。例えば以下のような例です。
バイク利用者500サンプルのうち、ブランドK に乗っている人のみ50を回収
定期的に外食している人300サンプルのうち週に10,000円以上遣う人のみ50を回収
スマホ利用者1000サンプルのうちiphone 12の利用者50人を回収
ブースト回収は自社製品や競合他社の製品など、特定対象についてのユーザー評価や利用実態を把握したいような場合に設定します。
例えばとある高級車メーカーに乗っている人の特徴をより客観的に把握するといった目的のほか、他メーカーを所有している人と比較して、所得、職位、家族構成、平均利用日数・距離、車を購入する基準や目的などに違いはあるのか、を検証するなど、他との比較によりユーザー特性をより明らかにしたいような場合に行います。
ブースト回収は、ブースト回収の対象をスクリーニング設問の選択肢に入れることが基本です。そのうえで、全体回収を確保した視点でブースト回収の目標に到達した場合にはその時点で終了となります。しかし全体回収の時点で目標回収に到達しないような場合には、改めてブースト回収対象のIR(出現率)を前提にして、調査終了後に改めてブースト回収対象のみをターゲットして回収を行います。
・スクリーニング設問にブースト回収対象を選択肢に入れる
・実査を通じて目標数まで回収
→ブースト回収対象が目標到達の場合には終了
→ブースト回収対象が目標未達の場合には、当該対象のみをターゲットに して追加回収 ※この時点でIRが確認されるため回収単価も見直し
このようにモニター調査では、より詳細にターゲットした対象の情報を収集して、深い分析と考察が可能で、お客様の課題を立体的にとらえることが可能です。
調査の信頼性
ネットモニター調査は登録されているモニターを対象にした調査であるため、どのようなテーマの調査であっても母集団からサンプルを抽出して行うものではないので、統計的な優位性や妥当性について検証することはできません。
また、登録時の属性は全て任意での回答であるため、その正確性や妥当性は全て保証できるものではありません。スクリーニング設問によるターゲティングの場合も同様で、回答者の任意の回答になります。そのような意味でネットモニター調査は統計調査や全数調査のような信頼性は完全には確保できません、
他方で、ネットモニター調査は登録時の属性やスクリーニング設問によって、調査の対象としたいターゲットを特定して、国内外の対象に対して調査を行うことが可能です。その意味でネットモニター調査は母集団が特定できない、ターゲット特定が困難な場合においても、実施し得る調査の方法と言えます。さらにネットモニター調査は回答に対する報酬はあるものの、任意の協力を前提にしており、現在では広く浸透しおり、多くの場合は信頼ある回答で構成されていると言えます。従って、ネットモニター調査は統計的な優位性、妥当性はないものの、確からしさと一定の信頼性があるものと言えます。
それでは、ネットモニター調査においてどのようにして信頼性を高めるかを説明します。
的確なターゲティング
登録時の属性やスクリーニング設問により的確に調査ターゲットを特定することもひとつにあげられるでしょう。
特にスクリーニング設問では回答者の一部は報酬を目当てにして実態とは異なる回答を意図して選択する場合があります。そのため単一選択SAの二択ではく、複数選択肢かつ選択をマルチ回答MAではなく、一つのみの回答SAを用意することが望ましいです。
以下、タクシー運転手を調査対象にした例です。
×の例
あなたはタクシー運転手をした経験はありますか
はい/いいえ
〇の例
1)あなたの職業を教えてください
正社員/派遣/パートタイム/無職/学生/専業主婦・主夫/リタイア・年金
2)どのような業種ですか ←正社員選択者のみ
機械・製造/情報通信/運輸/食品/農業・漁業/不動産/アパレル/販売/物流/公的機関
3)どのような分野ですか ←運輸選択者のみ
鉄道/バス/航空/船舶/タクシー/その他
分析に必要なサンプル数確保
次に分析に必要な一定のサンプル数の確保です。
性別、年齢、地域などによる集計を前提にして回収数を確保して、分析の信頼性を高めます。クロス集計をする場合には一般的には100 以上の回答があると各セル間の差異も可視化しやすいと言われています。
この場合、回答1つの差異は1%になります。10の回答しかない場合にはセル間の1の差異は数字上は10%となります。そのため回収数を増やすことで、より詳細な分析が可能となります。
母集団を可能な限り反映した回収割り付け
そして必要なるのは回収割り付けにおいて可能な範囲で母集団の構成を反映することです。地理、性・年代などが代表例です。
例えばサンプルを全国で2000回収する場合には以下のようになります。仮に特定のセルの回収が進まない場合に、調査期間や方法を見直して、可能な限り設定した割り付けの回収を進めます。
このようにネットモニター調査は統計的な優位性や妥当性について検証することはできくませんが、母集団が特定できない対象に対してのアプローチが可能であり、調査設計の工夫により信頼あるデータの収集・確保が可能であると言えます。
調査票の設計の基本
調査票の設計はコンセプトと土台設計の段階で整理できます。
コンセプト
1.「目的」を確認します。調査を通じて何を把握したいのかを明確にします。これは調査票の骨子、構成を検討する際の基点になります。そのうえで、結果をどのように活用にするのかも確認する必要があります。活用までを視野に入れないと調査結果やデータは放置される結果に陥ります。
2.「調査対象」の特定です。誰を対象にするのか、対象はどの程度存在するのか、ターゲットは現実的に調査可能なのかを整理します。
3.その上で調査結果に対する想定される「仮説」を整理します。男性の方が多い、女性の方が多い、多くの人は●●に満足している、▲▲を問題にしている人は■■も問題と認識している等、調査の目的、対象に照らして想定される調査結果を可能な限り可視化して関係者で共有します。
上記1~3は調査票設計の基礎となる重要事項です。
土台設計
スクリーニング設問と本問
調査票の設計は対象者を特定するスクリーニング設問と調査目的を把握するための本問で構成されます。
スクリーニング設問は、性別、年齢などの基本的な情報の他、本調査のターゲットとなる層を特定するための質問により構成します。
他方で本問はターゲットした層に対して調査を通じて確認したい事項を調査するものです。
調査票の設計は少数もしくは担当者が一貫した方針で作成することか基本ですが、最終化に向けては関係者複数で検討と修正を行うとよりよいでしょう。
設問数と回答時間
ネットモニター調査はパソコンの他、タブレットやスマートフォンなど、様々な場面での回答が可能です。回答者は自宅外での空いている時間に回答することも想定されます。そのため質問数については回答者を考慮して必要数を前提に可能な限り限定的にすることか望ましいです。
一般に1分間に回答できるのは2.5問程度と言われています。
そうすると10分で25問となります。
回答時間20分、設問数50が一つの上限と言われています。
回答形式
回答形式は
単一回答SA
複数選択回答MA
自由記述FA
が基本となります。
その他には、複数の聴取項目に対して同じ選択肢が設けられているマトリクス型もあります。調査結果は数量的に集計・分析することから基本的には選択肢化することが望ましいです。自由記述FAは選択肢には当てはまらないユニークな回答を核にする他、要望・感想などを確認する際に限定します。
自由記述FAの設定を検討する前に選択肢化できないかをまず検討します、
簡潔な質問表記
質問は簡潔で分かりやすい表記を心掛けます。
文字数は50文字前後に設定します。
また専門用語や分かりにくい表記は避けたほうがベターです。
回答の順番
回答の順番には幾つかのセオリーがあります。基本的には、簡単な質問から複雑な質問へ、全体から個別へ、過去から現在、そして未来、というように回答し易さに配慮した構成にします。
その他には、選択肢やロゴ等のヒントなしで、記入欄のみを設置し何も情報を与えていない状態で回答者の声を聴く「純粋想起」を先にして、続いて手掛かりやヒントを提示して選択してもらうような「助成想起」という構成もあります。
質問は一つに
一つの質問には複数の要素を入れないようにします。
例えば
× 「大学に行く目的や期待する成果を教えてください」
○ 「大学に行く目的は何ですか」と「大学に行く成果を教えてください」
と、整理します。
主語の明記
「夕食を作っていますか」という質問では誰が作っているのかを聞いているのかが不明確です。
そのため、「あなたは」「母親は」などの主語を明記する必要があります。
略語の修正、専門用語の説明補記
例えばスマホはスマートフォン、コンビニはコンビニエンスストアなど正式名称にて記載します。
また、SDGs、IPO、BtoB、DEIなどの略語であり、かつ一部の人においてのみ理解されている表記は正式名称に加えて説明も必要です。
解釈の余地がある聞き方の排除
「現在」「最近」「今年の夏」などの表記は、人により捉え方が異るため、時期や期間などを統一する必要があります。
例えば「先週」「一か月間」「今年の8月」に修正します。
選択肢は漏れなくダブりなくMECEにする
回答が選択肢にない場合、漏れ、やどちらを選択すれば良いか、ダブりを排除した選択肢がないように選択肢を検討します。想定される選択肢を洗い出してそれでも、他に可能性があるような場合においてのみ、選択として「その他」を設定します。
誘導しない
仮説を検証する調査において、それを誘導するような質問は避ける必要があります。
例えば、「グローバル化が進展しています。あなたは今後英語教育がより重要になると考えていますか」のように、英語教育は重要と誘因するような質問は回答が歪む可能性があります、
表記統一
例えば、「一つ選んでください」「一つ選択してください」「〇を付けてください」という表記などは統一しなければなりません。
個人情報への配慮、センシティビティな設問の回避
例えば「昨年の年収を実数で記載してください」「あなたが勤務する企業名を記載してください」のような個人情報に関する質問は回答結果を統計的に処理するとしても個人情報であるため聞き方を工夫する必要かります。その他に性別の選択、宗教、人種などに関する設問も必要最小限なものとして、聞き方にも十分な配慮が求められます。
以上が調査設計の基本となります!
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