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その7 マイアミお色気特捜隊~夜のタイフーン大作戦~

まちがえた!!!!!!


その7 担当編集F氏への想い。

発売から1ヶ月が経過した日に公開するエッセイの出だしがコレかい…。

私とFさんの出会いは6年前。
その時に出たホラーアンソロジーの収録作品として
タクシー運転手のヨシダさん
を選んでくださったのが最初でした。
そして、危うく最初で最後になるところでした。

作品自体は気に入って頂けたものの、やはり実績のない無名作家の無名作品を単体で出版することは出来ず。
本が出た、ちょっと載った。
というだけで終わってしまった。
その後も年賀状を頂いたり、プロットの提出をさせて頂いたりしていたものの…そういった交流も希薄になり。
あっという間に6年が経っていた。
2019年に転職したものの、流行病で仕事がなくなり職を転々とした末に、とあるプラントエンジニアの派遣会社に潜り込んだ。
そこで数年、腰を落ち着けて楽しく、おだやかに暮らしていた。

その間に書き続けた小説を、ネット小説大賞に出そうと思い立った。
で、タクシー運転手のヨシダさんもSC部門というのが出来ていたので、そちらで出した。そのときに、物凄く久しぶりにFさんにひとことコトワリ(とカタチとマコト)の連絡を入れた。勿論モノノ怪の薬売りさんの声で。
あっ待って夾竹桃を焚かないで真面目にやりますので…。

そうしたら、宝島社が小説賞で手を上げて下さった。
あれからずっと、Fさんが宝島社の編集部内で推し続けてくれていたのだった。

しかし、受賞し出版に同意する頃、またも私は転職してしまい制作期間にあたる真冬の時期が超絶繁忙期。
クソの上にクソが三乗するぐらい三千大(さんぜんだい)クソ忙しいさなかに、原稿の直しやら書き下ろしやらも行うことになった。
日中はメールのチェックどころかスマホを触る暇もない。慣れない仕事なのもあってひたすら一日、一日が過ぎてゆく。
そんな日々にあって、一日の仕事が終わってFさんからの返事を見て原稿の作業をするのが楽しみでもあり光だった。支えだった。
ヨシダさんが無かったら、とっくに心が折れていたかも知れない。

朝暗いうちから走り出して、夜7時とか8時に終わって帰る。
そっから1時間か2時間わーっと作業して。
日曜だけは休みだから、土曜日だけは夜ふかしして書くのが楽しみだった。

Fさんは丁寧に、メールに不必要な余談やギャグまでちゃんと拾って返事を書いてくれた。
ちゃんとノッてくれて、ときにバカウケし、ときに諌め、血の気の多い私をなだめてくれることもあった。
特にFさんが肝煎りだった「廃校であった怖い話」と「御近所物語の真・完全版」は殊の外ノリノリで読んでくださり、コレを早いうちに提出できたことで
「ああ、ここまでやっても大丈夫なんだ!」
と私も開眼出来たし、自分の持ち味を把握できた気もする。

ある時、私がポツリと
「やっぱ異世界転生してメシ食ってんのがウケるのかなあー…」
と、こぼすと
「それだったら選んでないです!」
とコンマ5秒で答えてくれた。
これが効いた。
会社なんだし読みたい人が多いジャンルで売れる本を作らなきゃならないし、そういうところで利益が出ているから私みたいな名無しの新人が浮かぶ瀬もありゃチャンスももらえる。天に唾を吐いても仕方がないし、余計なこと言うもんじゃない。でも、やっぱり悔しいし、自分だって!と思ってる。
どうしてアッチが良くて自分じゃないのか。
子供の頃からそんなことばかり考えている。
多分もっと前向きで明るくて元気な子供だったのが、ドンドンねじくれ曲がっていった。
結果、嫉妬と後悔と後の祭りで塗り固めたような性格に、元の片鱗が少し芽を出す程度のニンゲンになった。
それを、作品に詰め込んで書き上げることで、私は私を少しだけ昇華してやれたかもしれないし、そのためにはFさんという存在が不可欠…いや、最後の鍵だったとさえ言える。

そんなFさんが突然、音信不通になった。
前述の体調不良だった。
この人が居なくなってしまったら、私は誰にもヨシダさんを託せない。Fさんが見つけてくれたから、引き上げてくれたから、私はこうして今もエッセイに思い出話を書いている。
毎日、空のメールフォルダを何度も覗き、要らないメルマガやスパムメールに腹を立て、返事を待ち続けた。
戻ってくるのか、それとも……。
何度もメールしたし、ネット小説大賞の事務局さんにも相談に乗って頂いた。

このまま私だけひとり、はしゃぐだけはしゃいで、しれっとポシャって終わるのか。
売れてる人の原稿が飛ぶとか、利益を見込んだ企画が倒れるならまだしも。
まあ私ひとり沈んで終わるなら構いやしないんだろうな。
と、気持ちも心もずんずん沈んでいった。

でも、そうやって放って置かれている間も、その不安や不満や苛立ち、あらゆる売れてないことへの反骨をエネルギーにして書き続けた。
だからなのか、それプラスあのクズの父親のモデルになったクソ嫌な奴が身近にいるのにブン殴れないストレスも加味されてか、まあ日本橋徘徊少年の気合の入ったこと。

イマニミテオレ…!

が、あの時の私の口癖だった。
どいつもこいつも、イマニミテヤガレ。
そう思って書いていた。時々ホントに独言していた。

IMEが不具合でびくともしなくなり、パソコンまでフリーズしたときは私も固まった。
この期に及んでPCまで!!!!
まあ年季も入って来てるしなあ。
星野藍さんの写真集「旧共産圏遺産」に出てくるようなもんじゃないにしても。

あのときは長年のお友達であるこんぶさんに助けてもらい、Googleの日本語パッドを入れて対処したのだが…これまた長年の蓄積、学習がパアになったので変換で苦労している。
今でも。

けど、今度またIMEに戻すのもなあー。
暇なうちに戻して調教し直すかなあー。
などと、先々週ぐらいからうだうだ思っている。

そのIMEがぶっ壊れた日、前日夜から格闘してダメで、漸くGoogleの日本語パッド入れた朝。
F氏からメールで、その日の夜までに原稿を戻してください、と言われた日が。
私のメキシコ時代の先輩でプロレスラーの、松山勘十郎さんの試合の日。
大阪で遊んで試合見て帰るつもりが、試合だけ見て即帰宅。
近鉄特急ひのとり乗車中も、ずーっとスマホで原稿書いてた。
真剣にタブレットとキーボード買おうかと思った。
ああこうやってニンゲンってストレートネックになるんだな、と実感したよ。
ひのとり乗って車窓も眺めないのなんか初めてだし、大阪で試合だけ見てトンボ返りも初めてだった。でもそんな有り様を見た同じく先輩でレスラーのスカイデjrさんが
「なんや佐野くん、やってるって感じするやん!」
と励ましてくれた。

そんなときでも面白がってしまえたのは、先輩方の励ましもさることながら復調した担当編集F氏が戻ってきてくれていたからだった。
F氏はお仕事なのでなるべくビジネス的な敬語を使ってくださるけれど(電話で打ち合わせしているときなど例外もあるけど)、決して他人行儀とかヒトゴトみたいにはしなかったと私は感じたし、そのへんの温度調節も私には有り難かった。
あんまり冷たくされるとさみしいから…。

私がそんな風に中身の作業を進めている間に、編集部では書影や帯のデザインが進んでいた。ずっと応援していた作品が書籍化、単行本発売となると私も喜んでいたが、今度はコッチの番だ。さあ、誰が帯コメントを書いてくれるんだろう!?

えっ、帯コメントとかは、無いんですか?
ドレスコーズの志磨遼平さんが書いてくれた人もいるのに!?
ぼ、ぼぼボキも帯コメントが欲ちいぢょ~~!!
ジタバタ!!

が、泣いても喚いても幼児退行してもダメなものはダメ。
その代わりに印象的なキャッチコピーを添えることに。
それが、告知でも必ず入れている一文であり、この本の掉尾を飾るフレーズ。

「この本が、いつの日かヨシダさんの元に届きますように」

です。オモテの「連絡を待っています」というのは私の書いた前書きからの引用。
では、このフレーズは。

一言一句、担当編集F氏が考えてくれたフレーズをそのまま使わせていただきました。
F氏の考えとして編集者は表に出ず、現にこうしたエッセイを書くにあたってもお許しをもらおうとコトワリ(とカタチとマ…なんでもありません)を入れたときにも、やはりあまりクローズアップしないように頼まれました。
まあ、ネタにするのであれば満更でもなさそうでしたが…。

なのであまり言わないできた事なのですが。
このフレーズも、はじめに(例えばこんな感じで…)と送ってきてくださったものでした。
つまりこれをたたき台にして、なにか考えてくれてもいいし、書き換えてもいい。
で私としても、こういった帯に書かれたキャッチコピーと同じフレーズが物語の最後にバンと載ったらいいな、と思って、実はアレコレと自分なりの結びのフレーズを考えてみました。

が、どれもシックリ来ませんでした。
この元のフレーズがあまりにシックリ来ていたことに、ずっと気づいていたのです。
コレ以上のものはない。

それでゲラの最終稿で、これをこのまま載せて提出しました。

私を信じ、御自分を信じ、一緒に本を作ってくれた担当編集Fさんへの、私からの出来る限りのご恩返しのつもりでした。


これで一緒に本を作ってくれたことが、ずっと残せると思って。

あなたが拾ってくれなければ、アレもコレもそもそも起こり得なかったことばかりで。
忙しく幸せな冬でした。

ありがとうFさん。

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