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北井戸あや子さんの詩集「チェインソウ」

年末に購入した北井戸あや子さんの詩集をポツポツ読んでおりました。
万年床という作品が、のっけからこの薄暗い部屋で世間との乖離と自分のダメさ、堕落したところを天井に浮かべて、Lou ReedのPerfect Dayを聞きながら沈んでくような作品として出されているところがとてもいい。
マトモに働けず、モラルに反しても生きている。規範も倫理も知っているけど、どうにもならん暮らし。に、私には見えた。

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目次に羅列したタイトルの群れでさえ、それだけで一つの作品に思える。
とてもいい言葉と言葉を繋ぐリズムが記されていて、読んでいて飽きない。
なんとなくの作風や、書いてる北井戸さんの生き方とか考え方、ものの捉え方、裏返し方みたいのは、肉色の地べたの下で蠢く血管の脈動として共通している気もするけれど。
基本的には一つ一つ、ろくでもない社会でろくでもない生き方をしている人の見た半径数メートルの、もしくは自分の心に潜って見た時の情景が連なっている。

クオンタイズ、ヒエロファニーもいい。

ただ一度に沢山は読めなくて、ちょっと進んでは読み返し、また間が空いて、読み返して進んで…といった具合で。どんな本にも言葉にも飽きたところで、最後まで開いて読めるのはこういう作品なのかもしれない。

散るクラブのなかの
最後の船が去った
というフレーズ。あそこで何かが終わっているんだなーと思って、包丁を抱いている僕の
「間に合わなかった」
感じが好き。間に合わなかった、と自分で自分を諦めたのか、書き手が客観的に「間に合わなかった」と書いたのか、はたまた私が全然ケントー違いのことを書いているのかわからないけど……。くらぼったいフォークソングみたいで、いい言葉だなって思って。

こういうのを読んで、こうこうこうだと思う!というのは、なんというか大変に凌辱的というか、思うことはあっても言うことはあまり無いなと思うのだけれど。
言わずにはいられなかったのは、今ここまで書いたことかなあ。あとは我慢しておいて、いつか北井戸さんとお話してみたい。

立川談志さんがラジオでやってた、すっ飛んだことばかり繋げて、会話なんだかなんなんだかわからない、というやつ。アレに近い遊びが、北井戸さんとなら出来る気がする。

何が見えてて、どう思ってて、どんなふうに生きてて、何が好きで、受け止めてもらえたり許してもらえたりすることで、何が許せなくて要らないものなのか。
人となりを知らないまま、作品だけを受け取れるのは恵まれたことだと思う。自分にとって味方であるとか、知っている人で何か他に心があるとかじゃないものを、真っすぐ浴びる。それも、これほど退屈しない作品を。
いい本です。小さな本だけど、中に渦巻いているのは、テリー・ギリアムの映画「ゼロの未来」で描かれた虚無の暗黒のような心象風景だった。

ばうんす、2017もいい。

とても面白いです。モノゴトや言葉を素直に、目で追って楽しめる人、想像力が豊かな人には大変に楽しめる一冊です。
気になる方は、こちらからどうぞ
https://analogic.booth.pm/items/3532738

北井戸さん、また何か発表されるときは是非お知らせしてください。
お待ちしております。

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