⑤今の私をつくった男の言葉

この関係を人に知られてはいけない有名人の彼

10年ほど前まで私はラジオDJだった。ちゃんとラジオDJとして活動していたのは3年くらいだったから、かなり短いけれど、それでもいわゆるメディア業界に身を置いていた時期があった。ラジオ業界は、テレビとは全然違うけれど、それでもやっぱり業界は業界だったな、、と今振り返ってもそう思う。

有名人なので、ここでは彼のことは○○さんと呼ぶことにする。彼とは、私がラジオDJ修行をしている時に出会った。あまり詳しく書くと、身バレしてしまうので、ここではオブラートに包みますが、それから時を経て、私がちゃんとラジオDJになったタイミングで再会した。

再会した時、

「お前、よくここまで上がってきたな」
「でも俺は、お前がここまで来ることを知ってた」

そう言ってくれた。
よくここまで上がってきたな、、という言葉の真意は
ラジオDJを目指している人の多くは、

本物の（いわゆる県域の）ラジオ局でDJになる前にやめてしまう人がほとんどだから。本当に狭き門なのである。数少ない私の誇れる経歴なので、一応これくらい言わせてください。笑

再会して、しばらく経ってから夜、急に○○さんから電話が鳴った。
「この後、ちょっと時間ある？メシでも食べようか」
季節は少し肌寒い秋の終わり頃だった。高鳴る気持ちで指定された場所まで行くと、彼は目深に帽子を被って、サングラスをしていた。
当たり前だけど、有名人なのだ。歩き出すと彼が私の手を握った。
どうしよう。なんかドキドキしてきた。

「ここでいっか」そう言って、とある居酒屋に入り、腰をおろした瞬間
「ここはあかん。出るぞ」と○○さんが言う。そそくさと荷物を持ち上げて外に出た。向いの席に、局の制作会社の人がいたみたい。

”これが有名人だよな”って改めて思った。そして彼は「ここが一番落ち着くなー」と言い、私をカラオケBOXに連れていった。もちろん歌わない。ただ話しをするデート。2時間くらいいろんな話をした。私のこと、彼のこと、この仕事のこと。マイクに被せてある消毒済みのビニールを剥がさないでこのカラオケの個室を出るのって人生初めての体験だなぁって思ってた矢先、