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[12月第1週] DAOレポート Vol.47 | 「まるで国同士による企業本社の誘致合戦」コスモスのDeFiスーパーアプリ目指すMars、OsmosisとNeutronから移行提案を受ける

コスモス系のプロジェクトであるOsmosisとNeutronが、Mars Protocolの「本社」の誘致合戦で火花を散らしている。それぞれが独自のブロックチェーンを持つ中、Marsは効率化のために自らのブロックチェーンを閉鎖し、ガバナンス機能とトークン発行機能を新しいチェーンに移行しようとしている。

11月4日、Marsは、フォーラムにおいてNeutronに移行する計画を発表。執筆時点では正式なオンチェーンプロポーザルは出ていない。Neutronは、コスモスにおいてアプリの展開に特化したチェーン。Marsは、レバレッジやレンディングなどDeFiのスーパーアプリを目指している。

参照:Mars Protocolのフォーラム 「Marsが提供できるDeFiプロダクト」

Marsが他のチェーンに移行する理由は、リソースの問題によるところが大きいようだ。これまでは複数のチェーンでの展開を進めてきたが、「本社機能」を一つのチェーンに集中させることで効率化を図ろうとしている。

NeutronとOsmosisの誘致合戦

NeutronOsmosisがMarsに行った提案はほぼ同じだ。以下はNeutronの提案だ。

  • 総額300万ドルのグラント(助成金)を開発費として四半期ごとの分割払いで支払う。

  • 代わりに6000万MARSトークンを受け取る。

  • Marsが新しい機能を最初に実装する場所はNeutronにして3ヶ月間他のどこにも実装できない。

Osmosisは3番目の独占的な権利に関する条件を提示していない。双方とも、MarsのDeFiとしてのポテンシャルを高くみている。多くの取引量やユーザーを取り込めることと期待しているようだ。

NeutronとOsmosis、それぞれに異なると特徴がある。Osmosisはコスモス界のDeFiのハブ的な存在であり、ユーザーベース、取引量、流動性ともに大きい。一方、NeutronのセキュリティはCosmos Hubのバリデーターを経由して担保されており、セキュリティ面でより強固と考えられる。

Delphi DigitalのJoe Mario Macedo氏は、今回の誘致合戦について「国同士が競って将来有望な企業の本社に来てもらおうとしている」と解説した。同氏は、Osmosisへの意向に賛成派であり、現在MarsのTVLの95%がOsmosisから来ている点などを指摘した。また、Neutronに移行することで、OsmosisがMarsと競合となるようなプロダクトを独自で開発していくことも警戒している。

OsmosisとNeutronのコミュニティでそれぞれで提案が承認されることが前提だが、Marsのガバナンスの意向はどっちになるのか注目だ。Macedo氏は、かなり接戦になるとみている。

著者:大木 悠 (Hisashi Oki)/dYdX Foundation
早大卒業後、欧州の大学院で政治哲学と経済哲学を学ぶ。その後、テレビ東京のニューヨーク支局に報道ディレクターとして勤務し、2016年の大統領選ではラストベルト・中間層の没落・NAFTAなどをテーマに特集企画を世に送り込んだ。2018年に日本に帰国し、コインテレグラフジャパンの編集長を務めた。2020年12月にクラーケンジャパンの広報責任者に就任。2022年6月より現職。

トレジャリーデータ

DeepDAOによると、12月11日時点でDAOトレジャリーの総額は259億ドルと前週比で13.6%増加した。内訳は、流動性のある資産(Liquid)が220億ドル、権利が確定していない資産(Vesting)が43億ドルだった。
ガバナンストークン保有者は940万人で、アクティブDAOユーザーは290万人だった。

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