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[6月第2週] DAOレポート Vol.22 | SECによるバイナンスとコインベース訴訟 今後の焦点は2つ、DeFiへの影響は?

イントロ

先週、2023年の暗号資産業界のハイライトとなるであろう出来事が起きた。米証券取引委員会(SEC)によるバイナンスとコインベースへの訴訟だ。すでに数日間に渡って、ある意味で業界で一丸となって、この問題に対処すべく多くの議論がなされている。今回のブログでは、今後どうなるのか?に焦点を当てて解説したい。また、最後のDeFiやDAOに対する影響についても触れる。

今後の焦点は二つ : 裁判と選挙

① コインベースvs SECの法廷争い

まず、米国では規制当局は、法を作るのではなく解釈と執行を行うだけの機関であるということを改めて認識する必要があるだろう。米国では法の執行には裁判所を通る必要がある。そして、訴えられた側は裁判所で争うことができる。訴えられた側に必要なのは、強力な事実と議論をする力、潤沢な資金と優秀な弁護士だ。

この点、SECは米国の暗号資産業界における最強の相手を訴えたことになる。dYdX創業者のアントニオ・ジュリアーノが言うように、「コインベース以上にリソースと能力があり法令遵守に動機づけられたプレイヤー」は米国にはいない。

コインベースは公の場でSECと法廷で争うことを明確にしている。過去数日間の経緯が示したように、この件に関して暗号資産業界全体が結束している。多くの人たちが指摘したように、暗号資産業界側に強力な事実と論拠も存在する。SECからの訴訟を受けて逆に業界が一致団結するきっかけになったとポジティブに捉えられるだろう。

この点、バイナンスとコインベースは分けて考える必要があるだろう。昔から規制を守りながらイノベーションを進めるスタンスだったコインベースとは対照的に、バイナンスは控えめに言っても法令遵守の姿勢を取ってきたとは言い難い。また、記憶が正しければCZがスーツを着て規制当局に会いに行き始めたのは前回の強気相場前であり、訴状の中にはバイナンス社内のチャット記録として同社の最高コンプライアンス責任者が「我々は免許なしの証券取引所をアメリカでクソ運営しているんだぜ(we are running a fking unlicensed securities exchange in the USA bro)」と述べたことが明らかになっている。

また、バイナンス本体は米国事業をやっていないと言うスタンスを取流ことで、ビジネス面でダメージを抑えられるかもしれない。コインベースがオフショアでの取引所運営を模索し始めたのはつい最近に過ぎない。コインベースには国外という逃げ道がないのだ。このため、コインベースには、米国規制当局の理不尽な訴訟に対抗するための実績と証拠、そして必ず戦うという動機がある。

米国の裁判所の手続きは非常に長い時間がかかる。皆さんは2020年末にリップル社がSECから訴えられて未だに裁判所で争っていることをご存知だろうか?アントニオも言うように、裁判所での争いは「今後数年間」かかると考えられる。暗号資産業界における「数年間」はとてつもなく長い時間であることは自明の通りだ。今すぐに大きな変化は起きないだろうと考えられるということだ。

② 2024年の大統領選挙

もう一つは18ヶ月後に行われる米国の大統領選挙だ。米国市民以外は直接は関係ないと思うかもしれないが、今後の暗号資産業界の命運を握る選挙になる可能性があるのでクリプト民は注目する必要があるだろう。

米国は政治で動く国だ。2023年に入ってからのSECのアンチクリプトへの豹変ぶりも、確固たる証拠があるわけではないが、政治的な思惑があると言われてもしょうがないだろう。例えば、Messari創業者のライアン・セルキス氏は、前回民主党(バイデン大統領)に投票したことを後悔したと話す。

「私は今後も議題ごとに投票先を変えることには変わりないが、もし民主党の急進派が仮想通貨を禁止し、私と私の家族をオフショアへ追いやるのであれば、私の議題は、今後18ヶ月間、彼らの力を最大限削ぎ彼らを倒すことになるだろう」

SECのゲリー・ゲンスラー委員長は、民主党の急進左派のエリザベス・ウォーレン議員と関係性が近いことで知られている。ウォーレン議員は「アンチクリプト軍団」の形成を政治キャンペーンとして掲げている。

一方、民主党の急進左派は、CBDCやデジタルドルによる米国人の経済取引の一元管理と監視というクリプトの精神に反するプロジェクトを推進しているという不安の声がある。はっきり言って、仮想通貨は彼らにとっては邪魔なのだろう。ゲンスラー委員長の「米国にはこれ以上多くのデジタル通貨はいらない」という発言は、民主主義的なプロセスで選ばれたわけではない立場でありながら、いきすぎた発言だ。はっきり言って「あなたが決める話ではない」という感じだ。

2024年、米国の選挙は「政府による管理」か「個人の自由」が何らかの形で争点になるだろう。仮想通貨が大きく関係するテーマになりそうだ。今後、米大統領選挙の行く末についても、ブログで解説していきたいと考える。

DeFiへの影響

証券認定をされたアルトコインを中心に仮想通貨マーケットは大きく下落しているが、DeFiスペースでは大きな影響が見られていない。

DeFiのTVL(預かり資産総額)の推移を見ても、現在は432億ドルで1週間前の470億ドルから減少はしているものの、歴史的には大きな下落幅とは言えない状況だ。

また、Token Terminalによると、DeFiにおけるDEXセクターとデリバティブセクターの取引量は過去24時間でそれぞれ160%と210%のプラスを記録。dYdXとUniswapのドミナンスが64.4%と56.3%だった。

裁判にかかる時間もそうだが、DeFiやDEX、DAOの普及には時間がかかる。長期的な視野を持つ必要が大事だろう。アントニオも言うようにDeFiは、人々の人々による人々のためによる金融サービスだ。クリプトの本質的な価値を忘れずに、価値観を共有する仲間と一致団結し、一歩一歩進んでいきたい。

注目のDAOプロポーザル

  • 📝 Uniswap ARBトークンの使い方でコミュニティに提案を出すよう要求(RFP)| Request for Proposals - ARB Distribution 

    • 先月、Uniswap FoundationはArbitrumから受け取った4.4M ARBの助成金分配の最適な活用方法についてのRFP(提案要求)を提出した。

    • 投稿では、2週間の提案期間が設けられ、チームや個人がアロケーションからの長期的な価値を生み出すアイデアや方法を提出できるようになった。

    • 提出された提案は、Gauntlet、Alastor、Flashstake、LI.FI、DefiEdge、Uniswap Foundation自体などのチームによって行われた。

    • これらの提案は、コミュニティのフィードバックに基づいて改善され、その後、投票のための一時的なチェックフェーズに進む予定。

      ✅ 投票開始: 未定
      ⏰ 投票終了: 未定
      ⚡ 投票: 未定
      💬 議論:https://gov.uniswap.org/t/request-for-proposals-arb-distribution/21287/1
      ✍ 提案者: eek637

  • 📝 Aave 独自ステーブルコインGHOに関する最終提案 | ARFC: GHO Mainnet Launch

    • Aaveコミュニティで独自のステーブルコインの導入が提案されている。

    • GHOはファシリテータという概念を導入し、これにより特定のバケットサイズまでGHOトークンを生成(または破壊)することを可能にする。

    • 初期のファシリテータとして、Aave V3 Ethereum FacilitatorとFlashMinter Facilitatorを使用する。

    • Aave DAOが本提案が通れば、GHOはEthereumで稼働する。

    • GHOの導入はAaveプロトコル上でのステーブルコインの借入れをより魅力的なものにし、Aave DAOの収益を増加させる。

    • DAOは必要に応じてGHOの利率を変更する能力も持つようになる。

    • GHOの導入後には、マルチチェーン戦略がコミュニティに提案される予定。

      ✅ 投票開始: 未定
      ⏰ 投票終了: 未定
      ⚡ 投票: 未定
      💬 議論:https://governance.aave.com/t/arfc-gho-mainnet-launch/13574/1
      ✍ 提案者: AaveCompanies

  • 📝 ApeCoin DAO フォーラム貢献者に1万APEエアドロを提案 | Airdrop/Claim For Year 1 Forum Contributors (10k $APE each)

    • ApeCoinフォーラムの常連ユーザー、0xSwordが、ApeCoinの開発と成功に大きく貢献した約200人のアクティブなフォーラム参加者への10,000 ApeCoinの配布を提案している。

    • エアドロップの資格は、フォーラムでレベル2のユーザーランクを獲得するなど、特定の基準によって決定される。

    • 提案の目的は、DAOコミュニティの献身的な貢献者を認識し報酬を提供し、所属意識と継続的なエンゲージメントへの動機付けを促すこと。

    • エアドロップの全体的なコストは、スマートコントラクトの作成とクレームメカニズムの立ち上げを含めて、およそ210万ApeCoinと推定される。

    • 議論は活発で充実しており、この提案は最終的にSnapshot投票に進む可能性がある。

      ✅ 投票開始: 未定
      ⏰ 投票終了: 未定
      ⚡ 投票: 未定
      💬 議論:https://forum.apecoin.com/t/airdrop-claim-for-year-1-forum-contributors-10k-ape-each/13356/1 
      ✍ 提案者: AaveCompanies

  • 📝 HOP シビル攻撃ハンターに対する報酬としてエアドロップを提案 | HOP Airdrop Sybil Hunter Distribution

話題のTweet

Then we win. 
ガンジーの名言ですね。
「最初に彼等は無視し、次に笑い、そして戦いを挑んでくるだろう。そうして我々は勝つのだ。」

トレジャリーデータ

DeepDAOによると、6月12日時点でDAOトレジャリーの総額は183億ドルと前週比で42億ドル下落した。内訳は、流動性のある資産(Liquid)が159億ドル、権利が確定していない資産(Vesting)が25億ドルだった。 ガバナンストークン保有者は680万人で、アクティブDAOユーザーは240万人だった。


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