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[1月第3週] Weekly DAO Report Vol.52 |DEXがCEXに勝つための秘密兵器?パーミッションレス・マーケットについて解説

2024年はDEXの年になるという予想は少なくない。そして、古参のDEXであっても主役の座を守ることが確約されたわけではない。先週、dYdXチェーン(v4)は1日あたりの取引量でUniswapを超えて世界最大のDEXとなった。そんなdYdXは、DEXの中でもパーペチュアルスワップに特化したDEXに分類されるのだが、HyperliquidやVertexから猛追を受けている。DEXの中で競争が激化することで高いクオリティのDEXが生まれやすくなることから、歓迎すべきことだ。ではどうすればDEXは、バイナンスやOKXなどCEXに挑戦することができるだろうか?DEXの取引量は、CEXも入れた全体の取引量の中で10%も入っていないのが現状だ。何がDEXにおける10xの成長を生み出すのだろう?

DEXのCEXからの差別化という点で注目されているのが、パーミッションレス・マーケットという概念だ。誰もが新しく魅力的なマーケットを発見し、それらをdYdXに上場させることが可能になる。dYdXコミュニティのメンバーであるXenophon Labsが書いた「dYdX v4: with Great Decentralization Comes Great Responsibility」を参考に、その可能性について解説する。

Source: Delphidigital「DEXとCEXの取引量の比較)

パーミッションレス・マーケット(Permissionless Market)

現在、新しいマーケット(トークン)を取引所に上場させるプロセスはマニュアルであり時間がかかる。一般的にCEXには上場を審査をする担当チームがあり、社内のデューデリジェンス等の審査(日本では特に規制当局の許可)を経て、トークンを上場させる。一方パーミッションレス・マーケットは、コミュニティに上場審査プロセスを任せようという試みだ。具体的には、オンチェーンのガバナンス提案を通じて、コミュニティに上場と関連パラメータの管理を任せることを意味する。関連パラメーターには以下が含まれる。

  • ティックサイズ:取引所が考慮する市場価格の最小変動幅。

  • オラクル:マーケットの価格作りの基礎となる現物価格の情報源であり、例えばBinance、OKX、またはその他の現物取引所などがこれに該当する。

  • 流動性:マーケとが属する流動性階層で、スモールキャップ、ミッドキャップ、またはラージキャップのいずれかである。これらの流動性階層は任意に指定され、マーケットで保有されるポジションのマージン要件などを決定する。

パーミッションレスマーケットでは、今後どんなトークンがトレーダーの要望に応えるものかを考えるビジネスセンスが重要だろう。例えば、流行りのミームコインをタイミング良く初期の頃に上場できれば、多くのユーザーが取引所に来ることが見込める。

一方で、トークンの上場リスクについて考えることも同じくらい大事だ。上記のティックサイズの幅は、メーカーとテイカーの双方の収益性に影響を及ぼす。オラクルは正確な価格を報告するために不可欠であり、最悪の場合、悪意のあるオラクルを導入したユーザーが自分に有利な価格に操作することがある。

最後に、流動性はマージンの要件を決定するために重要だ。マージン要件を高く設定しすぎるとトレーダーにとって窮屈になりトレーダーは他の取引所に写ってしまうだろう。逆に、マージン要件が低すぎると、水面下のポジションを閉じるための十分な流動性がない場合に、利益を得られないか、清算のチャンスを逃す可能性がある。

コア・マーケットとパーミッションレス・マーケット

悪意があったり詐欺的なトークン上場のリスクをケアするため、Xenophon Labsは、2種類のマーケットを区別してUI的に分かりやすく選別することを提案している。コア・マーケットとパーミッションレス・マーケットの区別だ。コア・マーケットは、ガバナンスによって事前に承認されたマーケットで、以前のパーミッションレス・マーケットがアップグレードしたマーケット。パーミッションレス・マーケットは、トレーダーが詐欺や攻撃の可能性に特別な注意を払わなければならないマーケットだ。Osmosis ZoneのUnverifiedプールに似ているかもしれない。そして、Xenophon Labsは異なるタブなどを使ってフロントエンドで両者のマーケットの違いをはっきりと表示し、トレーダーに周知することを提案している。

本稿ではパーミッションレス・マーケットの概要と可能性、リスクについて解説した。後編では、パーミッションレス・マーケットの具体的なリスクについてもう少し解説し、Xenophon Labsがどのようなソリューションを持っているのか紹介する。

トレジャリーデータ

DeepDAOによると、1月22日時点でDAOトレジャリーの総額は306億ドルと前週比で7.55 %減少した。内訳は、流動性のある資産(Liquid)が262億ドル、権利が確定していない資産(Vesting)が44億ドルだった。
ガバナンストークン保有者は990万人で、アクティブDAOユーザーは300万人だった。

著者:大木 悠 (Hisashi Oki)Head of Asia, dYdX Foundation
早大卒業後、欧州の大学院で政治哲学と経済哲学を学ぶ。その後、テレビ東京のニューヨーク支局に報道ディレクターとして勤務し、2016年の大統領選ではラストベルト・中間層の没落・NAFTAなどをテーマに特集企画を世に送り込んだ。2018年に日本に帰国し、コインテレグラフジャパンの編集長を務めた。2020年12月にクラーケンジャパンの広報責任者に就任。2022年6月よりdYdX FoundationのJapan Lead。2024年1月より現職。

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