見出し画像

[7月第4週] DAOレポート Vol.29 | AAVE DAO サービスプロバイダー契約解除をめぐり投票へ

イントロ

「ザ・ガバナンスドラマ」と言えるような出来事が起きている。

仮想通貨レンディングサービスが有名なAave(アーべ)のDAOで、7月26日、Llamaというサービスプロバイダーへの報酬支払いを停止する提案が出された

提案を出したのは、Aave Chan Initiative (ACI)。Llamaはトレジャリーの管理やプロトコルのアップグレード、分析などでAaveでアクティブなサービスプロバイダーだった。Llamaとの契約終了まで2ヵ月残っているが、直ちにLlamaとの契約をキャンセルしたいという提案だ。

ACIのMark Zeller氏は、Llamaへの支払いで24万ドルが残っていると指摘し、「たった2カ月だから待てば良い」という話ではなく「DAOが100万ドルの4分の1に相当する額をLlamaへの支払いではなく、もっと有益なことに使えないか?」を問う話だと主張。ACIとTokenLogicがLlamaの業務内容を引き継ぐことを提案した。

Mark Zeller氏は「Aave最大のデリゲート」であり、DAOでの影響力が大きい。TokenLogicは、同じくDAOのサービスプロバイダーで、Llamaの一部のメンバーが移籍をしたことでも知られている(当初同氏はこれを理由にLlamaへの契約打ち切りを模索していた)。

同氏はLlamaがとりわけトレジャリー管理の失敗でUSDCによる給与支払いで一部に遅れが生じたことやさらに別のサービスプロバイダーを使っていたことを批判し、「Llamaのパフォーマンスは期待はずれに終わった」と述べた。

これに対してLlamaは、「事実と異なることがある」と反論する一方、また残り2ヵ月で行う予定の業務(CuratorとStrategicAssetManager)の引き継ぎが難しいことを説明。残り2ヵ月の報酬削減には応じると述べた。

Llamaとの契約を打ち切るかどうかをめぐる投票開始は7月31日。選択肢は、YAE (即刻打ち切り)NAY(打ち切りなし)ABSTAIN(棄権)Reduce Stream(報酬削減)の4つだ。投票終了日は8月3日だ。

DAOとサービスプロバイダー

AaveのDAOはMakerやUniswapと並んでガバナンス活動が活発なことでも知られている。そうしたDAOでは個人だけでなく会社がDAOメンバーとして参加することが増えてきている。会社としてDAOで使える専門性を磨き実績を出すことでDAOとの契約を勝ち取ることができる。

Llamaの場合は1年間で150万ドルの基本手数料 + パフォーマンスに応じて最大50万ドルが支払われる契約。最大200万ドル=約2億8000万円の大型契約だった。DeepDAOによると、全てのDAOのトレジャリー総額は228億ドル。とりわけDeFi系のDAOが多い中DAOでのタスクは専門性が必要で、優秀なサービスプロバイダーが多額のトレジャリーをめぐりしのぎをけずる構造がある。

問題はサービスプロバイダーの評価だろう。本当に純粋なパフォーマンス評価以外に政治的な思惑が絡む可能性があるからだ。一つのサービスプロバイダーをめぐりコミュニティが2つに割れる。一緒に働いた経験があり良い印象を持っていないコミュニティメンバーは鬱憤を晴らそうとするかもしれない。そこに創業チームが絡んでくると問題はより一層複雑になる。

物事がうまくいかない時、些細なことが気になりがちだ。正論であったとしても、プライオリティが高くなければ、議論に時間を費やすのがもったいない。Aaveの長期的なビジョンから見てLlama問題がどんな位置を占めるのか、見極めが必要だ。

注目のDAOトピック

📝 Optimism、スーパーチェーン実現に向けて大きな一歩
EthereumのスケーリングインフラストラクチャであるOP Stackは、チェーンの統一集合体であるスーパーチェーンを実現するための次のステップとして、Law of Chains v0を提案。これは、複数のチェーンに対するOptimism Governanceの原則を定義し、各ステークホルダーに対する保護と期待を明示し、ブロックスペース全体の均質性、中立性、オープンアクセスを促進する。このフレームワークを今後のガバナンスシーズンで正式に導入することを目指す。

✍ LlamaのAaveにおける最後の仕事になるのか・・・?
Llamaが「The Curator」というコントラクトを使って最大取引可能価値(MEV)と価格影響の保護を考慮に入れた資産交換の管理を目指した仕組みの提供を提案。主な用途は資産の保有ではなく交換であり、最初はEthereum上で行われ、後に他のネットワークへも拡大する予定。テンプチェックの投票は圧倒的な多数で承認された。

💬 Maker デリゲートの役割についてさらなる議論
MakerDAOがエンドゲームのフェーズに移行するに従って、デリゲートの役割と責任がどのように進化するべきかについて議論している。アンケートから得た洞察が共有され、デリゲートの役割のための9つの広範な目標を特定。コンピテンシー(能力)、コミュニティのスチュワードシップ(管理)、投票、会議への出席、戦略の実施などが含まれている。

💬 Uniswap UniswapXとDAOの関係について解説
Uniswap Labsは、新たなプロトコルUniswapXについて、DAOのタイムロックコントラクトによって所有され(DAOはまた手数料スイッチを管理)、既存のAMMと並行して運用され、AMMが解決できない問題に対処すると解説した。

💬 dYdX 再びGrant(助成金)の期間を延長
 Reverieが現在のdYdXのグラントプログラム(DGP1.5)の6ヵ月延長を提案した。今後はインフラ、MEV、バリデーターなどのテーマを中心にグラントを付与する計画。Community InitiativesとStrategi Initiativesの二つのカテゴリーに分類し、より分散化してグラントプログラムを運営していく方針。

話題のTweet

これぞまさにパラレルワールド。

トレジャリーデータ

DeepDAOによると、7月31日時点でDAOトレジャリーの総額は228億ドルと前週比で2.1%減少した。内訳は、流動性のある資産(Liquid)が199億ドル、権利が確定していない資産(Vesting)が29億ドルだった。
ガバナンストークン保有者は740万人で、アクティブDAOユーザーは280万人だった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?