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運命って、これなの?


お話

 
  「あら、やだ。運命かしら。ウフフ」



 ジリリリリリリリリリリ...

 ガチャンッ!

 「う...むぅ、あと5分・・・」
 窓の外はまだ暗い。今日もどうせ寒いのだろう。
 どうにも布団から出ることのできない僕は、体を丸める。もう少ししたら起きよう。


 「やっべ。遅刻だ」
 いつもより外が明るい。どうやらかなりの寝坊らしい。今から急いでもどうせ遅刻だ。のんびりと行くとするか。

 普段より遅いからなのか、外に出ても、痛いほどの冷気は感じない。それでも寒い。僕は自分の手のあかぎれを揉んだ。

  ーハッピーバレンタインー

 いつものコンビニに派手な看板がぶら下がっている。品のないデザインだ。
 そうか。今日はバレンタインか。まあ僕にはあんまり関係のない話だ。それよりも… これこれ!
 チョコチップメロンパンとレモンティー。 最強の組わ合わせ。値段の割に満足度が高いのだ。バイトをしていない高校生の僕にとってはありがたい存在だ。栄養?気にしなくていいのが若さの特権だ。

 「あら、いらっしゃい。今日は遅いのね」
 「はい、ちょっと寝坊しちゃいました」
 店員のおばちゃんが気さくに話しかけてくれる。今どきのコンビニには珍しく血の通ったコミュニケーションをとってくれる。そういえば、この前も、誰かに話しかけていたな。



 「遅刻だ」
 「スミマセン」
 わかっている。そんな当たり前のことを言ってくる担任にうんざりしながら自席につく。マフラーを取り授業の準備をしていると、

 バチバチ。

 はー。この時期は乾燥がひどくて静電気にいらいらする。地味にストレスだ。

 4時間目が終わり、たいして腹は減ってはいないがメロンパンをほおばる。
 「でさ、もうマジで運命の人って感じ。体に電流が走るの。ビビッと来たとかじゃないの。バチンって衝撃。絶対これだって感じ」
 「へぇー。で、頑張って自分から告白したんでしょう?良かったね、うまくいって」
 クラスの女子が話している。まぁよくも飽きずに毎日、同じようなことを話せるな。
 「はー。ウチ、幸せすぎて背中から羽根生えそう」

 なんだそれ。心のなかで毒づいた。
 一瞬、悪魔系の羽根をイメージしてしまったことは自分の心の中にしまっておく。

 午後も適当に授業を受ける。しかし、何やらいつもと雰囲気違う。何だか そわそわしている。そうか、バレンタインか。ご苦労なこった。


 寝坊すると得した気分だ。一日が早い。さっさと帰り支度を済ませ、学校を後にする。
 木枯らしが吹いて、僕はぐっと身をすぼめた。
 なんか温かいもんでも食べるか。
 
 「いらっしゃい!また来たのね」
 「ウッス」
 適当に見繕って会計に進む。
 「若い子はよく食べるわね。はい、合計で 628円です」
 僕は財布から小銭を取り出し、おばちゃんに渡す。
 小銭が手からこぼれけたところを、おばちゃんが慌てて手を伸ばす。

その瞬間ー
 


バチンっ!!


体に衝撃が走る。


「あら、やだ。運命かしら。ウフフ」
おばちゃんは僕を見てニッコリ。


「ちょっ、、待っ、、え、、?」
体がに電流が走るって、静電気・・・?


あとがき

 実体験をもとに作成。
 冬の鉄のドアノブは凶器。普段は気を付けている。指先で触る前に、手のひら全体でドアの面を触ると、帯電した電気が逃げてくれる。なので、いつも開ける前に扉をバンっとたたいている。だが、しかし、油断しているときにこそ、奴は襲ってくる。
 なので、いたずらグッズの電流が流れるボールペンは、本体に「電流が流れます」の表示義務を設けるべき。


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