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着地型観光、周辺観光開発のヒント

コロナ禍で疲弊する観光産業

私の住む岐阜県高山市(通称:飛騨高山)は昔から観光産業が市の経済を支えている観光地である。30年ほど前から市の政策によってインバウンドの誘致を進めており、現在に至る。

市の観光統計によれば、平成30年には年間約450万人の観光客が訪れ、そのうち50%は宿泊客、また、1/4の約50万人がインバウンドである。

観光統計

昨年2月以降、コロナ禍でこのまちの観光業も大きな経済的打撃を被っている。市の中心部、観光エリアはそれまで多くの観光客、インバウンドで溢れかえっていたが、今では30年前に戻ってしまったかのようにひっそりとしている。

旅館、ホテルなどの宿泊業はもとより、土産物などの小売り業、飲食業、そして卸売業など全て経済的な苦境に陥ってしまった。

復活そしてさらなる発展のシナリオとはなにか?

今の状況は正直、1事業者の努力では難しく、こういう緊急時は国や自治体がコロナ対策と経済対策を講じるしか手立ては無い。ここではポストコロナに向けて今から何を考えておくべきかについて私見をまとめてみたい。

そのためにはまず、どんな課題があるのかについて考えてみたい。

ゲストハウスを運営して見えてきたもの

私の本業はITコンサルティング業だが、それ以外に副業として小規模な、それも本当に小さいゲストハウスを運営している。もともと本業を補完する事業をいくつか立ち上げて事業ポートフォリオを組むことで、事業のセイフティーネットを確保しようとしたことがきっかけだ。

一昨年の7月に開業したところ、徐々に予約が増えてゆき副収入として軌道に乗ってきた。宿を開業して旅行予約サイトに掲載するだけで予約が入ってくる。さすが観光地、飛騨高山だと思ったものだ。

しかし、課題もいろいろ見えてきたのである。

・高山市は、実は「世界遺産 白川郷」の宿泊ハブでしかなかった

 実は宿に泊まる多くのお客さまは白川郷が観光の目的地であることが多い。しかし、白川郷には宿泊施設が少なく高山が宿泊のハブになっていることがわかって予約をする。市民はまさかそう思っていないだろう。インバウンドに関してはさらにその傾向が顕著で、白川郷のことを調べているうちに高山のことを知ったという方が圧倒的多数であった。

・市内の観光名所は半日あれば終わるため連泊する理由が無い

いうても小さいまちである。高山市は日本でもっとも広い自治体である。東京都とほぼ同じ広さの地方都市だが、92%が森林で観光は市の中心部に限定されてしまう。そのため半日もあれば十分観光できてしまう。宿として連泊してもらいたいのだが、せいぜい長くて2泊、それ以上はよほど何か理由が無い限り滞在する必要がないのである。

多くの宿泊客は高山に宿泊し、翌日午前は朝市や古いまちなみを観光し、午後には高速バス(もしくは車)で白川郷へ向かう。現地で昼食をとりしばし散策の後、夕方は金沢入りする。これがほぼ定番である。

・インターネット上に情報が少ないため周辺観光まで至らない

意外なことに宿泊客は、当地での細かな情報を調べて来ていない。よくよく聞いてみると、インターネットで調べてもあまり有益な情報が見つからなかったということに気がついた。今や、皆スマートフォンで情報を調べているものの、観光情報ポータルサイトも無いので情報不足なのだ。

市の観光情報サイトがあるじゃないかと思われるが、そもそも存在が知られていない。また、もし存在を知っていたとしてもあまりの情報の少なさに役に立っていないという課題が浮かび上がってくる。

彼らの話をつぶさに聞いてみると、いわゆる「マイクロスポット情報」と言われるようなご当地ならではの情報を欲しがっていることがわかる。

着地型観光、周辺観光の開発が遅れている

昔から、「着地型観光」「周辺観光」の開発、充実と言われてきているが、果たしてどこまで充実しているのだろうか。宿泊客の反応を見る限り情報は少ないどころか、メジャーな情報にもなっていない。日本一広い自治体にも関わらず、観光資源の開発は遅々として進んでいない。これは宿泊客からの聞き取りで明らかである。

市の中心部から離れた場所の魅力を再発見し、それを観光客のみならず地元の方々にも広く伝えてゆきたい。そんな思いでYoutubeチャンネルを開設した。

それが、「飛騨の旅再発見」である。

私自身がドローン・パイロットでもあるため、ドローンの空撮映像も加えた周辺観光の発掘に取り組んでいる。動画は言語の壁を越え感動を呼び起こす。

観光資源でもっとも価値の高いもの、それは自然である。冬となれば雪自体が観光資源になり得る。そういう価値を当たり前だと思っている当地の人たちはなかなか気づかない。

しかし、県外から来る観光客が何を求めているのかを的確に理解し、わかりやすく直接的な表現で伝えることができれば、もっと魅力的な観光地となり、滞在日数も伸びると考えている。

これからの観光戦略は、この「滞在日数を伸ばす、魅力的な周辺観光」の開発がもっとも伸びしろがあると期待している。

着地型観光の充実、周辺観光の開発の可能性は無限大だ。



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