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ドローンツアー企画してみた

コロナ禍でツアーは成立するか?

昨年の2月以降、このまちの観光は完全に冷え込んでしまった。まちから観光客は消え、これまでの賑やかな町並みが懐かしい。そうこうしているうちに、政府が「GoToトラベルキャンペーン」の実施を決定した。この時期の実施には賛否あったが、観光地の事業者の立場でいえば経済的に「待ったなし」の状況であった。

3月には旅館、ホテルは大量のキャンセルに翻弄され、4月の春の高山祭りは中止、日本人観光客が多く訪れるゴールデンウィークと、かき入れ時のビジネスチャンスは全て無くなった。

いつもならツアーバスでごったがえす市街地の駐車場はガラガラ。そんな風景を見ていると、観光ツアーも相次いで中止されているのはあきらかだった。

我が弱小零細ゲストハウスもキャンセルが続き、もはや宿としての機能を失っていた。コロナ禍であっても、それなりの対策をしっかり行えば、何らかの方策はあるように思えたが、何より観光客の意識が萎縮してしまっていることが大きな要因だと考えられるので、コロナ禍であっても参加したいツアーとはどういうものかとおぼろげながら考えていた。これまでの観光目的ではない、強烈に人の心を動かせるような別の何かが必要だったのだ。

ポストコロナのツアーのあるべき姿とは?

もう1つ考えなければならないと思ったのは、この先の観光のあり方について。幾つかポイントを挙げると、

・滞在日数を伸ばすための方策

通常1泊、長くて2泊の短い滞在日数の要因は、市街地の狭い観光エリアのみに留まっていて、周辺観光の開発が遅れているからだと考えていた。飛騨高山には北アルプスに代表される広大な自然があり、文化・歴史もある。これらをもっと多くの方に知ってもらうためには、ツアーによって自然の景観を楽しみながら、美しい自然を体験してもらう必要がある。

・何度も足を運びたくなるニーズの醸成

「また次のシーズンに来てみたいよね」とか「また、来年も来たい」と思ってもらえるようなツアーを考えて、リピーターを増やしてゆけるような設計にしておけば、持続可能性が高まり販売計画が立てやすくなる。言い換えれば、「飛騨高山のファン」を増やすことを念頭におくべきだろうと考えた。

これを「関係人口の構築」と言う。

・閑散期をカバーでき、平準化の助けになること

日本人観光客は週末、連休祝日に集中するため、これまではインバウンドが平日、閑散期をカバーすることで平準化できていた。この先数年は国内旅行にのみ頼った(昔の)観光ビジネスを考えねばならない。インバウンドが居なくなった今、これに代わる何かを考えておかねばならない。

ドローンツアーとは?

文字通り、ドローン愛好家を対象として当地のお勧めポイントへ案内し、思いっきりドローンを飛ばしてもらおうというツアーだ。昨年あたりから全国的にこのようなツアーが実験的に各地で行われている。目的は様々で地域おこしもあれば、メーカーの販促的要素の強いものまである。

ドローンは近年、愛好家が増えつつあり、空撮を楽しんだり、ドローンレースを開催したりホビーとしての注目を集めている。一方で農薬散布、測量、点検、遭難救助、物流など、人口減少を背景に労働力の省力化や人間が立ち入りにくい場所での作業支援など産業としても期待されている。

国ではこれらの産業育成の観点から国土交通省が中心となり、法令の整備を進めており、ドローンに関する航空法の改正が頻繁に行われている。これにより、飛行禁止区域が厳密に定められていて、首都圏では屋外の飛行にかなりの制約がある。田舎と違って飛行可能な場所が極めて少ないという課題がある。

ドローンツアーの企画コンセプト

「合法的に飛行可能な場所の確保と自然の美しさを体験できる機会の創出」

これが、私が考えたツアーコンセプトだった。

・身近にドローンを飛行させる場所がない

・法令遵守のもと合法的に飛行できる条件を整えるのが大変

・どこに行ったら良いのかわからない

都会から知らぬ土地まで出かけていき、誰にも後ろ指さされることなく合法的にドローンを飛行できる機会というのは、実は意外にハードルが高い。

旅行会社が表に立って、これらを全てクリアしてあげれば、参加者は安心して心置きなくドローンを飛行させることができる。これこそが商品価値であろうと考え、地元の旅行会社に企画を持ち込んでみた。

苦労の甲斐あって周りの協力者の助けもあり、無事ツアーは催行となった。コロナ禍でも参加者を募ることができてホッとしている。そもそも屋外で人の少ない場所が飛行ポイントなので3密にもならない。

宿泊日の初日は夕食の後に小規模な懇親会を行い、参加者通しでの交流や撮影した映像を互いに披露するなど、大いに盛り上がることとなった。

空撮ポイントの映像例

おわりに

ツアーは概ね成功裏に終わり、今年も引き続き開催を予定している。今年はさらにエリアを広げて、ツアーのバリエーションを増やしてゆくつもりだ。そのための準備を今から検討している。飛騨地区の飛行可能ポイントは200カ所程度ピックアップしている。これらを1つ1つ丹念に巡り、景色や飛行の安全性を確認しながら候補地を絞り込んでゆく地道な作業となる。

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まだまだ実験的な要素が強いツアーだが、これまでの観光ツアーとは全く違ったコンセプトで参加者の参加動機も違う。

このまちの外側から見たときに、中の人では気がつかないニーズは沢山ある。ツアーを通じて周辺観光の価値を体験してもらい、ドローンの空撮を通じてSNSで拡散してもらえば、より多くの方々に認知してもらうことができるだろう。

なにもドローンありきではない。ポストコロナに向けた新しい観光のあり方を関係者に理解してもらいたい。

ツアーが終了し、参加者の方々から「来年も企画してください。また参加しますから。」と声をかけていただいたことが本当に有り難かった。そして一部の方々とはFacebookを通じて交流が続いている。

事業視点で見れば収益性、効率性を追求しがちなのは理解できる。しかし、本来は人中心の視点があってのことだ。これはこれからの観光を考えるうえで無くては成らないものだと思ったし、今回のツアーがそれを証明してくれたような気がする。

ドローンツアーは以下のサイトで告知するので、今年のツアー予定が決まったら順次掲載してゆく予定だ。

また、飛騨地区の素晴らしい自然の風景を撮影してYoutubeに公開しているので、コチラも良かったらご覧いただきたい。

Youtubeチャンネル「飛騨の旅再発見」





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