データは誰のものか

昔、とある大学との産学連携プロジェクトで学生たちと、「地域ビッグデータの利活用」についてハッカソンをしたことがあった。このハッカソンのISSUEは、「地域のデータを地域の人たちのために使う」というもので、この背景には、GAFAのような海外のテック・ジャイアントたちが世界中のデータを収集し、自分たちのサービスに適用することで巨万の富を得ている。しかし、その元となるデータはサービスを利用する利用者から発生したものであって、本来は利用者に有益な付加価値として還元されるべきものであるはずが、果たしてそうなのかという疑問と、一方的にGAFAたちのビジネスに利用されるだけなのではないかという懸念があったからである。

LINEが教えてくれたこと

つい先頃、SOFTBANKの傘下にLINEが参入し、LINEのデータベースが韓国にあるという事実がマスコミで報じられた。私たちの業界(IT業界)では、LINEの歴史を辿ると、NHNJapanという韓国系企業の資本が関与していることは、ある意味常識で私も個人的にLINEはほとんど使用していないのも、それが理由だ。

最近、国や地方自治体、市民活動団体などがこぞってLINEを導入しており、今になって慌てて利用の制限をし始めたのだが、「そんなことも知らんかったんかい?」と思ってしまうのは、何も私だけでは無いだろう。

LINEの謝罪記者会見のニュースを観ながら複雑な思いであった。つまり、

「私たちのデータ(履歴)を勝手に韓国のサーバーで管理するなど、まかりならん」

という論調が基本だったのだ。しかし、LINEにとっては良い迷惑である。その「私たち」が利用する前から、韓国のサーバーで運用していたのであり、利用規約にもそれらしき記載がある。

サービス利用開始時のオプト・インは既に終わっているのであって、利用者が「了承したうえで利用する」ということに対して既にコミットされているのだ。それを、後になって「聞いてない!」では理屈に合わない。

法律だって、知らなかったでは済まされない。だから、自分で調べてあらかじめリスクを最小限に留める対処をするのはむしろ、常識ではないだろうか。

個人情報保護法の観点

個人情報保護法の観点から、この問題を眺めてみると、同法は国内法であり、韓国のサーバーで管理されている(日本の)利用者のデータはもはや治外法権下におかれている。法の効力が及ばない限り、いまさら「データを消去しろ」とか「どんな情報をどこまでどんな形で管理しているのか見せろ」と言っても、もはや後の祭りである。

そもそも個人情報の取り扱いについての意識が低いため、漏洩リスクや漏洩した場合の賠償責任、賠償額(の相場)などについてもあまり理解されていないことが多い。

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地方であるほどずさんな情報管理

私の住むまちの民間企業でプライバシーマークの取得をしている会社はほぼ見当たらなかった。ましてや国際標準である、ISMS(ISO14001)の認証取得企業はゼロである。

仕事柄、地元企業へ営業訪問に行く機会が少なくないが、事務所訪問時、情報セキュリティに対する意識が低いのを感じることが多い。セキュリティレベルに応じたゾーン分けが出来ていなかったり、入退室記録がされていなかったり、というケースは日常茶飯事だ。

そんな現状なので、LINEを不用意に利用するなど、充分ありえる話と思っても不思議ではない。

そもそも、なぜ情報管理が必要かという前提すら、考えていない企業が多いのではないだろうか。

データは誰のものか

話は戻るが、結局これらの議論の根底には、「データは誰のものか」という論点が必要だ。LINE問題についても、利用者側は自分たちの情報を勝手に国外へ持ってゆくなという話であり、LINEはLINEサービスを利用する対価として利用者の情報は(ある一定の条件下で)サービス事業者にも利用する権利、管理する権利の自由があるという主張のぶつかり合いのように見える

中国のように中央集権国家では、データは国のものという前提で全てが管理されている。中央主義共和制国家では、そもそもこの議論自体がナンセンスである。

しかし、我々は資本主義国家の国民である限り、この問題の議論を深めてゆかねばならない。また、インターネット社会は世界中張り巡らされたネットワーク上で異なる国家、異なる国民同士が相互にコミュニケーションする社会である。異なる国家間でのコミュニケーション情報は、一体誰のものかについて答えはまだ出ていない。

そもそも、LINEの利用料が無料だからという理由で使用している段階で無理がある。そんなボランタリーなサービスなどあろうはずがなく、無料なら個人情報を入手して他のビジネスに利用するなど、当たり前の話なのだから。

少なくともデータの所有者が誰かという答えは、民主主義国家では重要な問題だ。それをこれからもっと議論を深めてゆかねばならないだろう。

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