銀行のシステム障害で思うこと
2月28日に発生した、みずほ銀行のシステム障害は多くの預金者に影響を与えた。またかと思う人も少なくないだろう。電鉄のシステムや大手旅行会社、航空会社など大規模なシステムは複雑でもあり、限られたエンジニアだけで全体を掌握するのは難しい。私自身、昔はソフトウェア開発エンジニアとして大手企業のシステム開発に携わった経験から言えば、今回のシステム障害も「起こるべくして起こった」という印象だ。
システムエンジニアの高齢化の弊害
システムというのは人間が常に面倒を見てやらなければ、稼働し続けることは難しい。また、大手のシステムは昔からITゼネコンが開発し、保守を続けていることがほぼ常識だ。システムも時代と共に老朽化が進む。新しいシステムに刷新するにはそれなりの開発コストと期間を要する。
銀行は他の業界と比較してIT化の歴史は長く、昔ながらのシステムがいまだに稼働している例も少なくない。言ってみれば「巨大なオブジェ」みたいな存在になりつつある。その中でも深刻な課題は、当時、システムを開発したエンジニアの高齢化問題がある。昔のシステムの仕組みを理解し、当時の開発言語で開発ができるエンジニアは時代とともに減っている。
私が開発エンジニアとしてプロジェクトに関わっていた頃から、現在まで稼働し続けているシステムがいまだに存在する。そうなると今の若いエンジニアに当時のシステムの中味が引き継げているのかと言われれば怪しいものだ。
このように「古いシステム」は時代とともに置き去りにされているのが現状だと思われる。
新しいサービスを投入しにくいシステム
今回のみずほ銀行の例を挙げるまでもなく、メガバンクは合併の歴史を辿ってきた。合併するごとにそれぞれの銀行のシステムを相互に接続する必要がある。異なる会社が開発したシステムをつなげることは非常に高度な知識と経験が必要で、みずほ銀行もこれまで何度もシステム障害を起こしてきた背景には合併の歴史があると思われる。
また、地方銀行はITゼネコンが提供するシステムを基礎としていて、似通ったシステムをそれぞれ運用しているケースが多い。なので各銀行固有のサービスをシステムで実現しようとする場合には個別機能の開発になり、高いコスト負担を要求されることになる。そうなるとコストの問題からサービスの差別化がしにくくなってしまうのだ。
一方、ネット銀行は新しいシステムから構築しているので、最新の技術を取り入れやすいし、新しいサービスを提供するために必要なシステム開発も割と容易だ。
というわけで、銀行のシステムの多くは既にガラパゴス化しており、システムの優位性で差別化を行うことは非常に困難なのである。
これから始まる銀行の合併合戦
我が国政府は、これから中小企業改革と地方銀行の統廃合を積極的に進めてゆく様相である。そうなると地方銀行はこれから合併するほか生き残る道がなくなる。
またまた合併によるシステム統合の話があちこちで浮上してくるだろう。結局、システム統合で儲かるのはITゼネコンという話は間違いなさそうだ。そしてまたシステム障害が発生する。
こうしてみると、まことに気の毒な話だがこれが現実だろう。
脱ITゼネコンを宣言したデジタル庁は?
今年の9月に発足する「デジタル庁」は菅内閣のキモ入りとも言われている。平井デジタル改革担当大臣は、国のシステムはITゼネコンに依存するつもりはないと答弁している。
それはそれで良いことだと思うが、果たしてそうなるかどうか。既に中央省庁の各システムはITゼネコンの手がけたものが多いはずだ。その構造的課題をどのように解決してゆくのか注目しておきたい。
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