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最近の所感

『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』を読んだ。

こんなにもハマる小説はなかなか無い。僕が人生で読んだ全ての小説の中でベストだと思うほど好きな作品だった。村上春樹について最近は短編ばかり読んでいたけれど、長編もやはり良い。文章のリズムが素晴らしいと改めて実感した。

今作は重厚なリアリズム小説であると同時に、複雑なミステリーでもある。とはいえこれを最後まで読んでもミステリーだと気づく人は殆どいないだろう。幾つかの謎が巧妙に隠されている。読後に複数の考察文を読んでみてやっと、緻密な物語全体の構造が見えてきた。読中には考えが及ばなかった謎に関してパズルのピースが綺麗にハマっていく感覚もあり、心が震えた。

文庫版で421ページと、結構長い小説だが、手放しで強くお薦めしたい作品。本当に素晴らしかったので。

最近は自由な時間が沢山あるから、小説を読んだり映画を観たりしてゆったり過ごし、気温が上がってきたので散歩をしている。そして会える友達とはなるべく会うようにしている。

そういえば、大学の同期がもうすぐ父親になるらしい。彼女が妊娠しており7月に出産する予定なのだそう。彼女とは何年も同棲していて結婚間近とは聞いていたけど、まさか先に子を授かるとは思わず少なからず驚いた。本人も驚いたらしい。だがそれは彼女の方が望んでいたところでもあったようで、それならば幸せなことだと思う。籍を入れるタイミングを見計っていると言っていたので婚約も近いうちにするのだろう。

最近は近しい人から結婚についての話をよく聞く気がする。自分も結婚というものを考えざるをえない年齢になってきたのかもしれない、しかしそういう事について僕は分からない。考えたことがない。何れにせよそれぞれに幸せの形があるだろうから、各々が幸せになるような選択をしていければ良いなと思う。結婚についてあまりに知らなさすぎる僕は、そんなことしか言えない。

大きな地震があったようだ。その時、僕は酔って記憶を飛ばし寝ていたから、揺れた記憶は全くないが、早朝に起きて後追いでニュースを見て知った。母親から三件の不在着信の通知が来ていた。心配してくれていたようで、こういう時に親の温かさを感じて孤独が少し和らぐ。

三月になり、両親の誕生日が立て続けにあったので、父と母に普段の感謝を長文で伝えた。そういうのは恥ずかしがらずに、伝えるべき時にしっかりと伝えることが大切だと思う。言葉は万能ではないけど、言葉にしなければ何も伝わらない。これは幾つかの思い出したくもない経験をして学んだ。

地震の話に戻す。この国で生きる上で災害を無視することはできない。大きな地震が起きたり豪雨や台風の度に、そんなことを思う。日本で生きていくということはそういった災害の脅威を潜在的に意識しながら生活をするということで、それはおそらく個々人の生き方や考え方にも影響を与えうるものだろう。

それが理由というわけではないが、日本を出て違う国で暮らしたいと何年か前の僕は強く思っていた。今でもその気持ちは少なからずある。だが実際には行動に移せず先延ばしにし、結局日本での就職を決めてしまったし、となればもうずっと、この国から抜け出すことなく生きていく気さえする。決してそのことを悪いと言いたいわけではないが。

日本という国は好きだ。この国に生まれて良かったと思ってる。あと日本語が大好きだから、母語が日本語であることも自分にとって大きい。でも何故だろうか、生まれた国だからといってその国でずっと暮らし続けることに対して、これでいいのかという危機感のような焦燥感のようなものがある。

遠くから見れば大抵のものは綺麗に見えるように、ただ異国での生活に憧れているだけなのかもしれない。あるいはもしかすると、「想像可能な人生を送りたくはない」というある種の傲慢さが自分にはあるのかも。おそらくこれについても、良い悪いの二元的な話ではないことは確かだ。


読んでくださり、ありがとうございました。 今後より充実したものを目指していきます。