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財前ぜんざい@オリジナル小説
2016年1月22日 22:34
「俺、家まで届けてくるから、ちょっと待っててくれ」 車の後部座席に私はいた。若い男の膝を借りて横になり、ぼうっとしていた。時折激しさを増す動悸に耐えながら、早く家に着くことを願った。運転していた明るい髪の男の言葉を聞いて、やっと車が自分のアパートの前に止まったことを知った。「分かった。ほら、後少しだ。起きれるか?」 若い男は私の身体を起こす手助けをした。気分が悪くなった時のために持って
2016年1月15日 21:06
「どうしよう、どうしよう」 どうしようもないというのに、焦りが止まらない。「おい、水持ってきたぞ!」 若い男がガラスのコップに水を入れて持ってきた。急いでいるせいでコップの中の水が波打ち、零れても平気で駆けてくる。「サンキュー」と言って年上の男がコップを受け取り、私に「身体起こせる?」と尋ねてきた。 私は上半身を起こし、コップを受け取った。「ゆっくり、むせないように飲めよ?」
2016年1月8日 23:08
「大丈夫? しっかりして!」 目の前が何も見えない。男二人に肩を抱えられつつ歩こうとするが、動悸が早くなっていく一方で、身体に力が入らない。「もう少しで横になれるから、頑張って」 年上の男が心配そうに声をかけてくる。夕日が差し込んでいた非常階段とは対称的な、暗いマンションの廊下をよろよろと歩いた。どこかも分からない部屋を目指して耐える。 気持ちが悪い。苦しい。動悸が止まらない。身体
2015年12月30日 23:14
空は夕焼けに染まっていた。雲の広がり方も、吹き渡る風の冷たさも、あの日によく似ていた。雲間から漏れた夕日の光が、頬を照らす。冷たい風が首元を通り抜けていく。 私はひどく昂っていた。何もかも壊したい衝動が身体の中を駆け巡り、理性を捨てた私は笑っていた。 悲しい。虚しい。寂しい。そんな感情を、私は今まで必死に溜め込んでいた。あぁ、なんて滑稽だったのだろう。どうにもならない感情を抱いていた自分