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バリ島で象に乗って、僕は何を思えばいいんだろう(エッセイ)

上記画像は、分かりにくいですが象に乗っている筆者です。

バリ島に行った事がある。

最初は正直、バリ島に何があるんだ?という感じで気乗りはしていなかったが、行ってみるとこれが中々面白い。そこそこいいホテルに泊まったのだが、断崖絶壁の上にあり、そのせいかは分からないが「猿が入ってくるので、窓は開けないように」と言われた時は驚いた。これは日本では経験できない。

バリ島では、一端の観光客として定番の場所に行った。海に入ったり、マングローブが生えている島に行ったり、猿しかいない保護センターに行ったり、寺院を見たり、お土産屋で柄の部分が男性器になっている栓抜きを買ったりした。なぜこんなものが売られているかは、皆目検討もつかない。

その中で、筆者の心に最も残ったのは、エレファントライドだ。その名の通り、象に乗る事の出来るアクティビティだ。

象に乗るためには、早起きしなくてはならない。象に乗れる場所は、ホテルから1時間ほどの距離がある。迎えの車が来てくれるのだが、集合は朝7時。つまりは6時半起きだ。普段から怠惰な生活をしている身としては、中々に辛い。しかし、象に乗るためには、乗り越えなければならない試練なのだ。

なんとか試練を突破して、車内でしばらく寝ていると、象がいる場所に着く。これが動物園なのか、保護施設なのかは未だに分からない。砂埃のせいで、目がチカチカする場所だった。

タガログ語のよく分からない説明の後、ようやく象に乗る事が出来た。象の皮膚にそっと触れる。ガチガチだった。筋肉だろう。えげつないマッチョである。毛もフサフサと生えていて、近くで見ないと分からん事もあるもんだなあと思った。

乗り心地はかなり悪く、こんなのに乗って他国との戦争に勝ったハンニバルは相当すごいな、と思った。象は、一応ゆっくりと歩いてくれるのだが、ぐわんぐわんと揺れる。普通に気持ちが悪くなってしまった。

そんな事を考えていると、何故かぴたりと象が止まった。どうやらご機嫌斜めらしい。前に乗っている調教師のおじさんが怒鳴っている。どうするのかと思って見ていた。すると。

ゴン!

おじさんの手元は見えなかったが、何か硬いもので力強く、象の頭部を叩いたのだ。象も、別に痛がりもせず、またのそのそと歩き出した。しかし、見ているこちらとしては、え?という感情で一杯だった。

その後も、幾度かのゴン!を得て、ゴールに辿り着いた。ゴール地点では、非番の象や子どもの象を見る事が出来た。しかし、頭の中はゴン!で埋め尽くされていた。あれを見て、どういう感情になるのが正しいのか、全く分からなかった。可哀想なのか、慣れていて大丈夫だから憐れむのはむしろ可哀想なのか。所詮、筆者も象に乗り、負担をかけた側である。

そのままその場所で、昼飯を食べた。遠くの方から、ゴン!は微かに聞こえてきた。何故だかイエモンのJAMが聴きたくなった。僕は何を思えばいいんだろう?

楽しかった思い出より、エレファントライドで感じたものの方が、ずっと記憶に残っている。コロナの影響で、象達もしばらくゴン!から解放されたと思うが、今どう思っているのだろう。聞いてみたい気もする。

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