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ブラジルの金持ちパーティー(エッセイ)

ブラジルに住んでいた時に通っていた中学校は、いわゆる金持ち中学だった。

住んでいる所は全員高級住宅街で、最新のiPhone持ちはマスト。誕生日パーティーともなれば、会場を貸し切って数十人を招待してドンチャン騒ぎ。ノンアルコールカクテルを提供するバーを見て、ああこの人達には一生勝てないんだな、と思った記憶がある。

さてある時呼ばれたハロウィンパーティーは、個人宅での開催だった。おお、やっぱり一人くらいは普通の家庭の子もいるよな、と安心感を抱いたのも束の間。無茶苦茶デカイ家だった。4人家族と彼は言っていたが、おいおい4人じゃ持て余すだろ、と思った。

ハロウィンパーティーという事もあり、家中は怪しい雰囲気にカスタマイズされていた。ドアに血糊が付いていたり、天井付近に蜘蛛の巣が張っていたりしていた。そうとう準備は大変だっただろうし、かかったコストも馬鹿にはならないだろう。このパーティーが開催されている間にも、ファベーラというスラム地帯では本物の血が流れているのだ。なんだか、複雑な気持ちになってしまった。

バックでは、友人の兄がDJをやっていて、大盛り上がりだった。僕はそれを、ノンアルコールカクテルを飲みながら眺めていた。金持ちの子供って、こんなにたくさんいるんだなとおもいながら。月の小遣いが20へアイス(1000円くらい)なのは、自分だけだろうなと思った。なんだか、テレビの中に迷い込んだみたいで、現実感のない光景だった。

ジャポン、ジャポン。水の音が聞こえる。そして、大きな歓声。プールだ。プールに飛び込む音だ。家にプールがある事も凄いが、何よりハロウィンの季節にプールに飛び込む事が凄い。パーティーは夕方に始まっていて、そろそろ夜だ。テンション上がりすぎだろ、と思った。

「おい〇〇!お前も来いよ!」プールの中から顔を出した友人が言った。アホか。11月にプールなんか入ったら死んでしまうわ。僕はやんわりと断って、パーティーを後にした。帰る時も、どんちゃん騒ぎの声がずっと聞こえてきた。

帰り道では、ファベーラが見えた。ファベーラの特徴としては、レンガやトタンで作られた四角い家が、数え切れないほど並んでいるのだ。横だけではなく、上に向かっても限界ギリギリまで建てている。それを見ながら、なんとも言えない気持ちになったが、それが何なのかは分からなかった。口の中が、ノンアルコールカクテルでベタベタしていた。

家に帰り、ふと気がついた。ブラジルは南半球である。つまり、11月は夏だ。そりゃ、プールくらい入るわ。アホはこちら側でした。ごめんなさい。翌日、彼に謝罪したのは言うまでもない。

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