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アメリカの食はかなり保守的(エッセイ)


昔、アメリカに4年ほど住んでいた。

その時に感じたのは、アメリカの食は日本に比べてかなり保守的だなあ、という事だ。

特に、材料はかなり保守的だ。日本の場合は、スーパーに並ぶ食べ物も、昔と比べかなり豊かになってきた。20年前、ムール貝なんて手に入れなかっただろうし、ラム肉なんて庶民が気軽に買うものではなかっただろう。しかし、今日では、3軒ほどスーパーを回れば、ムール貝もラム肉もほぼ確実に手に入るだろう。アメリカでは、日本のように新しい材料が庶民の日常に食い込んでくる事がない。肉なら牛豚鶏ターキー、魚介類はエビと貝と白身魚とマグロとサーモン、炭水化物はパンとパスタ、と何十年前からの固定メンバーで、アメリカの食卓は彩られている。

決してそれを批判したい訳ではない。しかし、不思議ではある。街に出れば、あらゆる国のレストランがある。ケバブ、ファラフェル、インドカレー、と新しい料理に触れる機会は多いし、歓迎もされている。和食も人気で、和食レストランは確実に増えていた。しかし、評判の割には、スーパーに日本の食材が並ぶ事は全くない。トーフがダイエット中の人やベジタリアンの人々の支持を受け、食い込んできたくらいだろうか。

他方日本では、他国の料理が人気になれば、その材料もスーパーに並ぶ。チーズダッカルビが流行った時、ご家庭用チーズダッカルビキットが所狭しと並んでいたし、なんと自宅で作るタピオカセットまで売っていた記憶がある。
この、日米の違いはどこから来ているのか?筆者なりに考えてみた。すると、「ダーリンは外国人」という漫画に、面白い事が書いてあった。「日本の主婦は、世界で一番多くの種類を作れる。」

これはどういう事か。実は、アメリカは意外と食を重視しない。朝はシリアルだけという人も多いし、子供の昼飯はいつもピーナツバターとジャムを挟んだサンドイッチだ。贅沢なものを食べる時もあるが、意外と日常的には粗食だ。その代わり、スナックをめちゃくちゃ食うが。

一方、日本は食をもの凄く重視する。朝ごはんはシリアルだけです、と学校で言うと先生に心配されるし、給食の栄養バランスは完璧だ。ちなみに、アメリカにも給食はあるが、基本的にはハンバーガーやピザのようなジャンクフードしか出ない。食を重視するので、いろんなものを食べたいと思うようになり、そのニーズに応えようとした結果、「日本の主婦は、世界で一番多くの種類を作れる。」状態になるのだ。

食の重視度に差があるのは、宗教の影響が考えられる。キリスト教では、宗派にもよるが、贅沢しすぎるのは罪と考える人が多い。日本は無宗教の人が多いので、気にせず色々と食べていくのだ。

アメリカ旅行に行った人は、食い倒れ状態になって帰ってくるだろう。しかし、意外と現地ではシンプルなものを食べているのだ。もっとも、そのシンプルなものは、めちゃくちゃハイカロリーなのだが。ここに書いた事は、あくまで自分の経験したアメリカ(主にケンタッキー州)なので、地域によっては全く違うだろう。うちではこうだった、という意見があればコメントしていただけると嬉しい。ちなみに、ケンタッキー州に住んでいた筆者だが、ケンタッキーフライドチキンは好きではない。というか、鶏肉が好きではない。なんというか、困ったものだ。

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