見出し画像

テスカトリポカ 佐藤究

頁の間から血の匂いが立ち昇って来るような、残酷で暴力的な世界観。
苦手なジャンルだけど、直木賞と山本周五郎賞W受賞作品と聞いて読んでみた。

アステカの荒ぶる神テスカトリポカ。
古代より人々は生贄の心臓と左腕を神に捧げる。

時は流れて現代、家族と仲間を皆殺しにされたメキシコの麻薬密売組織のボスがインドネシアに逃れ、そこで医学界を追われた日本の心臓外科医と出会った事から、物語は動き始める。

黄金の三角地帯で製造される最高級のヘロイン通称No4、それが麻薬売買における黄金ならば、臓器売買においては心臓こそがダイアモンドで.....

テスカトリポカ信仰と臓器ビジネスが歪んで結びつき、堕ちていく人間達。
神ゆえか、それともそこにもう神は居ないのか。
読みながら考え続けた。

果てしない暴力の連鎖なのに、浮かびあって来るのは人の弱さで.....
でもラストには希望と人の強さが残る。

人は神の望みに抗えない。
だけど、神が本当に望むものは何なのか、それを決めるのも又、人なのだと信じたい。

#テスカトリポカ
#佐藤究
#読書感想文

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?