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曲がった写真

部屋にずっと飾ってある写真。あまりにもずっとあるものだからもう風景と化していた。久しぶりに間近で見た時、写真が少し斜めになって額の中に収まっていることに気がついた。でも写真の中の風景はまっすぐだ。写真のいわばフチだけが、斜めになっている。どうしても気になるので、写真立てをひっくり返す。裏はまっさらで留め具が見当たらない。

額の部分を外そうにも外れない。額を叩いて中の写真だけ角度を直そうとしてみるもびくともしない。途方に暮れてぼーっと写真を眺める。

疲れたのか、どうにも写真が立体的に見える。浮かび上がっているのではなく、奥行きがある。3Dメガネでもかけたみたいだ、と横から覗こうとしたら、今まで見えていなかった景色が目に入った。どの角度から見てもそう。正面から見ていた ”写真” の、周辺の世界が見える。もちろん、何も動くことはないけれど。

「瞬間を切り取る」とは言うが、こういうことだったのか、と納得して、やっぱり斜めのままの写真を元の場所に戻した。

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