記憶とヒトと俺とあんた
あんたには亡くなってしまったヒトの思い出ってのがあるかい?
オッサンになったとは言え、この長寿社会になっている世界観で言うと、親族で高齢になって命を落とした家族についての記憶はあるけれど、いわゆる仲間と呼べるようなヒトが命を落とすという体験はそれほど多くないんだ。
ホント、ヒトの命ってのは失われるってのがわかっているはずなのに、その失われた命について思い出すだけで、胸が締め付けられるってのがあるんだよね。
今回はそんな失われてしまった命に対する感情について考えてみる回だ。
ちっと、俺たちの回りにあった命について考えてみようぜ。
俺たちに影響を与えた命
今回、そんなことを考えるきっかけはこのnoteからもらったんだ。
まあまあハマって見ている葬送のフリーレンを取り上げてくれているnoteなんだけれど、この中で取り上げてもらっている幻影鬼って魔物がいるんだよね。
補食対象の記憶を読み取って、その記憶のままのヒトを幻影で見せるって言う魔物。
yukihisaさんのnoteを見てさ。
幻影鬼は幻影を操作できないって考察を書いてくれているんだ。
いわく、対象者の記憶のままに幻影を作り上げると。
これを読んで思ったんだよ。
幻影鬼は俺に誰の幻影を見せるんだろうって。
家族の幻影
いの一番に思ったのが家族の幻影だ。
俺はさ。そんなに色んなヒトと関わりを持てていないってのがあるかもだけれど、家族に対する思いってのは結構でかいと思うんだよ。
亡くなった祖父母が目の前に幻影として現れるなんてことを想像するだけで涙が出てきちまう。
「元気にしているか?」とか言われたら、それだけで戦闘不能になるやつだ。
ああ、あの世界では俺は生き延びることは出来そうにないな。
これを書いているだけで涙が止まらないもんよ。
「そうだね。じいちゃんならそう言うよね」
そんな達観した言葉なんて紡ぎ出すことはデキッコナイス。
その場で泣き崩れて魔物に食われて終わるわけだ。
仲間の幻影
次に思い起こされたのは、かつて一緒に仕事をした仲間のことだ。
今でも不意に思い出すんだ。
亡くなってしまったそのヒトのことを。
病に犯されて、色んなヒトに惜しまれながら命を散らしてしまったその仲間。
後から聞いたんだけれど、自分の命が終わるということを医者から聞いた後に、「仕事をしたい」って上司に言ったらしいんだ。
俺さ。
ホント、あのヒトの言葉を思い出すだけでさ。
「オマイ何やってんの?」って言われた気になるんだよ。
「まだ、生きてるだろ?」って言われた気になるんだよ。
そのヒトが俺の前に幻影として現れたら何て言うんだろう?
「がんばってますか?」かな。
やっぱり、その言葉を言われたら魔物に命を持ってかれるやつだな。
友人の幻影
あとはそうだなぁ。
ガキンチョの頃に遊んでた近所のやつが、交通事故で亡くなったんだよ。
そんなに頻繁に遊んでた訳じゃなかったんだけれど、結構な年月を経た今でも記憶にこびりついている。
あいつなら何て言うんだろう?
「なあ、最近は何が面白い?」
そんなことを聞いてくる気がする。
そんなん答えようがないじゃん。
お前が生きてたらこんな楽しいことがあったんだぜなんてさ。
お前が生きていたらこんなことがあったんだぜなんてさ。
これも幻影で出てきたら魔物の餌食になること間違いなしだな。
俺の幻影
そう考えてみるとさ。
俺は誰かの幻影に成りうるんだろうか?
出たとして、俺の幻影は何て言うんだろうか?
例えば友人の前に。
例えば家族の前に。
例えば仲間の前に。
俺の幻影が立った時に、俺は一体何を言うと「思われている」んだろう?
試しに息子に聞いてみた。
「遅い!」だそうだ。
そうか、俺はだいぶ生き急いでいるらしい。
なあ、あんたはどうだい?
あんたの幻影はあんたの大切なヒトになんて言うんだろうな?
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