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はじめの一歩で俺たちが取り返すことが出来るかもしれないもの

あんたにもスキなマンガってやつがあるかい?

元来、俺の場合はマンガがスキなので色々と読み漁って入るんだけれども、その中でも数少ない「紙の本」を買い続けているマンガがあるんだよ。

そのマンガは「はじめの一歩」。

作者である森川ジョージさんの意向なのだろうと想像しているけれども、はじめの一歩という作品は電子書籍にならないんだよね。
それは電子書籍版のマガジンにも載せないという徹底っぷりなんだ。

今回はそのはじめの一歩についてつらつら書いてみる回だ。

まあ、オッサンの好みの話に付き合ってくれよな。

いじめられっ子がボクシングで奮起するストーリー

はじめの一歩は1989年から少年マガジンで連載されているマンガだ。
今も連載は続いている。

足掛け31年に渡る超大作ってやつだね。

内容としてはボクシングマンガで、いじめられっ子がプロボクサーと出会って「強いってなんですか?」と問いかけることから始まる純粋スポーツマンガだ。

ここに一つはじめの一歩というマンガのスゴさが有るんだよね。

この「強いってなんですか?」という問に作品として明確な答えはまだ描かれていない。
でも確実にその問に対する答えを言葉の外で描き続けているんだ。

主人公である幕之内一歩はもうびっくりするくらいの強敵と戦い続けていた。
ボクシングジムに入門する時にいきなりスパーリングの相手をしたのは生涯のライバルであり常に先を進んでいく宮田だし、東日本新人王トーナメントではオズマ、速水、間柴などの異なるタイプの強者と戦い続けていた。

その後も千堂、ヴォルグ、伊達と尋常とは思えないほどの試合を続けていく。

そのつどつどで「強いってなんですか?」の問と向き合っていく。
これはもう禅問答の世界だ。

そもそもこの問に対する答えは言語化出来るものじゃないんだと思うんだよ。
なんつっても世界一強い世界チャンピオンですらその問に対して言葉で説明することによって、その非常に大きな意味を限定化してしまうってのはわかる気がするじゃんか。

例えば「強いとは自己を律すること」って言葉にしたらそれはそれで正しいけれども、それだけじゃないって同時に思うもんな。

だからはじめの一歩では強さとは対局にいるいじめっ子という存在が強さに対して憧れて、求めて、追いかけるってストーリーになっているんだろうね。

引退してから再起する物語

そんなはじめの一歩だけれども、現段階の連載では主人公の幕之内一歩は現役を引退してしまっている。

スポーツマンガでは異例の展開だと思うんだよな。

幕之内一歩は数々の強敵と戦うことでパンチドランカー症状が出てきてしまう。
紙に線を書こうとしてもまっすぐかけなかったり、地面においたロープの上を真っすぐ歩けなかったりという症状だ。
幸い一時的な症状で済んではいるものの、大切な母親のために文字通り人生をかけて挑んできたボクシングとの決別を決意する。

そんな展開だ。

普通なら、その時点で連載終了か?とか思うと思うんだ。

でも作品は引退後もキッチリと続いている。
何しろ広げに広げまくった風呂敷を全然畳んでいない状況だからね。

そうなると、幕之内一歩の再起っていうのは既定路線にならざるを得ない。
多分、本当のボクシングに取り組んでいる現役選手への配慮もあると思うんだけれども、幕之内一歩に「あなたはパンチドランカーだ」と診断したヒトはいないって表現になっているしね。

※決めつけたヒトはいるけど

一度辞めたものをヒトはどうやって再開するのか

引退を経て復帰したキャラクターがはじめの一歩の中に一人だけいる。

幕之内一歩と戦った伊達英二だ。

彼のセリフにこんなものがある。

日常を生きる者にとってリングっつうのは狂気の沙汰だ。
地獄の鍋みたいなモノだ。
あの中にもう一度身を投じるのに必要なものは熱!
業火に焼かれてもはね返せる己の熱さだ。
出典:はじめの一歩127巻

熱を伴った感情。
物語を終わらすためには幕之内一歩はもう一度熱を取り戻さなければならないってことなんだろう。

そこでふと考える。
俺たちも失ってしまった熱ってやつがあるんじゃないか?

若い時に夢見ていたもの。
スキだったこと。
夢中になったこと。

日々の生活の中でいつの間にか失われてしまった熱。

なあ、あんたはどう思う?

はじめの一歩が再起の物語になるとして、その物語から俺たちは熱を取り戻すことができると思うかい?

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