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[プロット][小説][バラッド]―序章―あらすじ③

しこうのおと
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前回までのはこれね。

リサの思考


リサは夜の街を小走りで自分の会社に向かっていた。

まだ22時前ということもあり、それなりに人がいる。
リサはふと思う。
この人たちも、もしかしたら自分と同じような感情を抱えているんじゃないかと。

そして、自分は今前に進もうとしている。
そう奮い立たせながら会社への道を急いだ。

会社は電車の隣の駅にあるんだが、たぶん人混みがすごいと思うし、何より少し一人で頭を整理したいとリサは感じる。

いったい、自分は何に悩んでいるのか。
実力を認められないことか?
実力がないのは事実なのだから、能力を伸ばしていくしか無い。

どうやれば能力が伸びるのか。

顧客のニーズを先取りしていち早く、市場に展開して、その結果を分析し、さらなる商品を世に出し続けることだ。

そう、ニーズは社会の至る所にあって、それがまだ価値を直感的に把握できない原石のまま転がっているということだ。

そんなことを考えるうちに、会社の裏口まで来たリサ。

この時間はビルの営業時間外だから裏口からカードキーを使って入るリサ。
雑居ビルであるこのビルの他の会社は本日の影響を終えてすでに暗くなっている。

そして煌々と電灯の明かりが漏れ出ている場所。
それがリサの会社だ。

意を決して会社の中に入るリサ。

案の定、プロジェクトリーダーと先輩だけが残って画面とにらめっこしてはキーボードを叩いていた。

「お、お疲れ様です」

不意に声をかけられ同時に顔を上げる二人。
「あれ?今日はもう上りじゃなかったっけ?」

先輩が声を掛ける。

「あ、はい。その、あの………」
言葉がうまく出てこない。

「リーダーと先輩にお話があるんです。今からちょっとお付き合い願えませんでしょうか?」

いつにない気持ちのこもったような声色に敏感に気づく二人。

「………よし、わかった。ここじゃ話せない話なんだな。
 橘、例の資料は間に合いそうか?」
「あらかた形になったんで、明日の会議の合間でやっつけられますよ」
「なら、行こうか。どこだ?」

このプロジェクトリーダーは風間透という名前なのだけれど、名前の印象通り掴み所がない。
でも確実に言えることがある。
判断が異常に早いんだ。

そして橘と呼ばれた先輩はどちらかと言えば人情派なんだけれども、先輩が判断をミスったことをリサは見たことが無い。

リサはこの二人の完璧超人を連れて会社を出た。

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