幸せに向かってあがけ!
あんたには好きな話ってやつ、あるかい?
オッサンになった今でも、学生時代に読んだ小説の中で読み返したくなるものがいくつかある。
今日はそんな小説を振り返ってみよう。
栗本薫さんって小説家がいる。そう、グイン・サーガで有名なあの方だ。栗本薫さんは推理小説やファンタジー小説で有名なんだが、実は若いときにSF小説も結構書いている。
今回紹介するのは、そんなSF小説の中でも俺の一番のお気に入り。「レダ」だ。
レダは人が幸せであることが義務である世界で幸せを感じていない少年の話。
この「義務」としての「幸せ」っていう概念は今の世の中にすごくあっている気がしないか?
俺たちは常に幸せであることを追い求めている。
価値観が多様化する中で幸せの形は人によるなんつ~いい加減な言葉で彩られている。
つまり今の世の中では決まった幸せなんてわかりやすい目標は定められていない。
金持ちが幸せか?否。
毎日定時で帰れることが幸せか?否。
毎月旅行に行けるのが幸せか?否!
何をやっても幸せになんかなれない。自分が幸せを定義出来ない限りは!
レダの描き出す世界は幸せになるための方法が学問として成立している。会話一つとっても学問として体系化されている。
その学問に従わない人が一定確率でいることすらも体系化されている。
そんな逃げ場のない幸せへの道。
その道が本当に自分にとっての幸せなのか?主人公は多くの人々との出会いを通じてその疑問を自分の中に具現化していく。
オッサンとなった今、レダを読み返すことで当時感じていた感覚とは別のものを感じている。
当時は体系立てられた幸せに乗れない「特別」な主人公ではない「普通」の自分であれば、この幸せが体系立てられている世界で幸せになれるのではないかって夢見ながらこの小説を読んでいた。
だが、今は「普通」であることが許されない世界。
人は無数の個性に細分化されて「普通」という状態になりきれない。そう。今という時代は誰もが「何者か」であることが義務付けられている時代なんだ。
そんな時代に身を置くオッサンの俺。その俺がレダを読み返して感じたのは幸せへあがき続ける美しさだった。
なあ、あんたも幸せに向かってキッチリあがいている。そうだろう?
幸せは自分で掴むもんだ。
あがけ!もがけ!生き続けろ!
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