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保存食のお話しتمور مجففة (خرمای خشک)

(2200字)
起:ドバイのお土産では定番のバティール・ブランドがある。そこのデーツのお土産を娘に渡すのを長いこと忘れている。
先日、娘が飯が食いたいというので、ついでになんか四角いウイルスを殺すものを渡すんだったなぁと思い出し、引き出しを探って、ウイルスに対して効能のある藍の入った石鹸を思い出して昨日持って行った。
そして、家に戻ると、玄関にデーツのお土産の手提げ袋があったのを見つけて、肝心なものを持っていくのを忘れたのを思い出したw

承:デーツは糖度が高いので、雑菌や腐敗菌が蔓延れない(菌が付着しても脱水されて不活化されている)ので、羊羹と同じで消費期限が無い。
ドバイでパリ支店から来た某羊羹店の人に聞いても、自衛隊の戦闘食を作っている某岡山の会社に聞いても、一応、便宜的に10年間は持つと言っているが、本当は消費期限は無いらしい。賞味期限も甘いので、まぁ普通に温度管理がされていれば、期限は無いだろう。

余談w:石鹸とデーツの類似性はというと、外から菌を洗い流すか(石鹸)、中で菌を不活化して消化するか(デーツ)の違いだけで、そう遠くない効能だから、石鹸でもウイルス対策は問題ないだろう。
深入りしないが、不活化というのは、また時間が経てばゾンビのように生返って悪さをするということで、基本は、悪い菌は洗い流さないといけないし、食べ物は早めに胃のなかに入れて、胃酸で菌を分解して自分のタンパク源の栄養にするしかない。

藍染の藍を使った石鹸はウイルスを不活化&洗い流す

転:保存食の話しに戻ると、日常食べるものと比較して、極端な加工をしているものが多い。
甘いか、塩辛いか、酸っぱいか、干からびているか、酸性又はアルカリ性水に漬かっているか、各種の良性菌で発酵していて悪い菌の繁殖を抑制しているか、殺菌されて無菌パックされているかだろう。これらは毎日食べるものでもないから、急場凌ぎにはいい非常食と言える。毎日食べるとしたら、少しづつ薄味に戻して食べるしか無いだろう。
極端な味でなくて、ちょうどいい味になっている保存食は、そう、缶詰だ。
日本は缶詰製造大国だ。
中東・アフリカで売れている缶詰といえば、ツナ缶だ。
シーチキンと言われるほど、チキンの味に似ていて、淡白で料理に加えるにはいいそうだ。
日本産や日本メーカーのタイ産の缶詰がアラビア半島とアフリカに輸出されていて、他国産のものと比べても味や中身の差(全種類食べてみたが、K国産は油分が多く、中身が充実していない)は歴然で、日本産がダントツで売れていた。
そして、戦争中のイエメンにもジェッダ(サウジアラビアの紅海沿岸の街で、ここからメッカに詣でる)から輸出されていた。

余談w:自分の舌が思い出したのだが、その昔、テヘランに住んでいる時、ドバイから日本の缶詰が輸入されていて、下町の市場で購入していたが、賞味期限が1年前に切れたものが高値で売られていた。1年過ぎても普通の味だったが、流石に切れて2年以上経つと、内部のビスフェノールを含んだ被膜(これも健康に悪いw)がなくなり、缶の下地のスズの味がして、これは食べられたものでは無かった。

結:ここで誰でも、身近にある好みの保存食を沢山思いつくだろう。
師走に入り、昔ならば秋の恵みの収穫物を色々と自宅で加工して、餅つき、梅干し、味噌、各種漬物や魚の干物など、春までの歳を越す保存食が出来上がっている季節だ。
こういう各家庭で行われていた食の行事が今ではほぼなくなり、代わって企業が保存が効くよう添加物をたっぷり使い、短い期間で擬似発酵をして、また、温風などで即席の干物を作り上げいている。もちろん、これらのことを全否定する訳ではない。そのおかげで衛生状態は向上し、人は別の方面に時間を使い、家庭や社会が発展してきたことは認める。しかし、食べるという行為以外に、人手を掛けずに食や保存食を手軽に入手できることで失ったものも多いと感じている。代々の家の味を作る機会や地域社会の行事で仲間を作り、その仲間と一緒に食べる機会が失われている。
多くの都会で暮らす人が自然や地域社会から切り離されてしまい、精神的な病いが蔓延してきている。何が原因かは特定は出来ないが、大きな要因は食を支える自然と、そのシステムを支える地域の仲間と切り離された現代の孤独人の不安に満ちた生活だろうと思う。コロナ病を機縁として、地方回帰がもっと盛んになり、小さい単位で地域コミュニティを再構築し、食と生命を人生最後の時まで支え合う、幸せに暮らせる社会の再生が、今後の日本の“全ての安全保障“に通じるだろう。

砂漠の中のデーツ林
食用採取用のデーツ林はそんなに高木に仕立てていない

余談w:砂漠にも壮大な砂丘を越えていくと、オアシスがあり、その水辺では椰子の木が鬱蒼と繁り、保存食になるデーツの実をつけている。

見上げると手に届くぐらいの高さにスズナリのデーツ
生のデーツも売っており、これを乾燥させて黒色のデーツとなる
試食していると、アラブ人に「そんなもん食べるの止めとけ」と注意されたw

さて、今年、中東に帰りそびれた自分は、どこでコミュニティを築こうかと、移住先を探しつつ、余談ばかり書いているうちに、日本で歳の瀬を迎える羽目になった。情勢不安な東アジアだが、日本で皆様の保存食が役に立たないことを祈る今日この頃だ。どうぞ良い歳をお迎え下さい。(了)
参考文献:Original Wisdom by Robert Wolff

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