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アッラーの国から


(1700字)
若い頃からこの国にはよく来ているが、どうも仕事の性質上、表舞台に出るのは苦手だ。本社から団体を組織して話し合いをするので、お隣の国からどうしても来てくれと依頼を受けた。オジサンは本社を一応辞めて身分を移して別会社に来ているので、助けに来る必要性は無いが、本社の国際部の友達がアラビア語も英語もどうかというので、仕方なく応援に駆けつけた。しかし、別会社の東京本社の社長も本テーブルに着いているので、どうも座り心地が悪い。

最初に自己紹介をするようになり、日本側からとなった。トップバッターが助っ人で来ている末席のオジサンで、助っ人だから気楽に構えていた。皆がこちらを向いて注目するようになったが、心の準備が出来ていないので、慌てた。
どの身分を名乗ろうかと、高速コンピューターに本社の社長、別会社の社長、後ろの控え席にいる別会社のドバイの支社長などなどの顔をインプットして、比較衡量の結果、無難と判断した元いた本社の身分と本名(ファーストネームだけw)を名乗った。

あとで、飯を喰うときに、皆に“嘘つき〜(笑)“と言われた。でも、どうせいつかは本社に復帰する?ので、大嘘ではない。
アッラーは全てお見通しだから、この国で小さい嘘をついても、地獄には落ちないだろう。

服装の話しをしよう。
アラブ諸国での会議で出会う湾岸のアラブ人は、その気候のせいもあって、民族衣装で過ごしているのが羨ましくなる。足元はサンダルが正装だから、水虫なんてないだろう。お国の外に出る時は流石に普通の背広などで出かけているが、その姿は閻魔大王が仮面を外した時のように、なんだか見た目で威厳がなくなる。
日本は西洋かぶれして、この暑い国に来ても背広とネクタイで会議だ。昔は着物が日本の気候風土にあっていたので正装として続いて来たが、明治維新で失われて以来、ミスマッチな生活スタイルが続いている。日本男児は帯を締めないと丹田が締まらないので、今の男はヘナヘナしていると言われているのは、服装のせいだろう。

ラムチョップは最高の味

話しは食に移る。
会議も終わり、めいめいで昼食を摂ることになった。王宮の隣にあるホテルのダイニングが貸切で、好きなだけ食べていいとのことで、腸内細菌の事は忘れて3回ぐらいおかわりした。
さすがは、羊の国だけあって、おいしさは格別だった。寿司は、、、まぁ、超高級ホテルでもアラビア語喋る日本人シェフはいないので、仕方なくイエローカードを出した。

ペルシャ料理は煮込みも美味しい

アラビア半島で暮らしていても、やっぱり心の味はホレシテ(ペルシャ語)という煮込み料理だ。ご飯に酸っぱいヨーグルトをかけて、クビデとともに食べると最高だが、日本でこのことを言うと、気持ち悪いと言われる。しかし、この料理を食べるだけでも移住したくなる気持ちは、腸内細菌が欲しているからだと、Drガンドリー先生の本には書いてあった。自分の嗜好の意思は、腸内細菌様が決めているという事なのだ。この本を読んだ時は驚きだった。

自宅のホテルのあまさ控えめのホット・チョコレートでひと息

健康に悪いor良いは腸内細菌が決めることらしいが、ホットチョコレートはオジサンの弱点だ。甘くないと健康にいいが、美味しくない。甘いと健康に悪いが、ホットする。罪悪感に苛まれないよう、部屋の掃除の時に下に降りてきてラウンジで読書時間に日本人用の甘さで頼んでいた。ちなみに、日本では見た事ないが、グラスの淵にはチョコレートを溶かしてナッツをくっ付けている。
食べすぎた&甘すぎたと食後に感じた時は、外のプールサイドのソファーに寝っ転がるだけで、外気温40度の天然サウナで自然と痩せる。
そのあとビールを飲まず、羊肉を食べなければだが、そうは簡単ではない。悪友や部下が午後茶しに自分のホテルの割引カードを借りるという名目でお誘いに来るので、誘惑を断ち切る術がないと一層体重が増える。

まぁ、そうは言っても、努力せずに健康になりたいのなら、中東でしばらく暮らすというのも、ひとつの選択肢だろう。でも自制する意志力はやっぱり必要だから、年に1回のラマダンを受け入れて、アッラーに祈るしかないだろう(了)

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