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2拠点生活のススメ|第259回|ひとりでできたもん

徳島に居ると、一人だからこそ困る・・・ということがときどき起こる。

季節外れの蚊に刺されたのか、それともダニにやられたのか、左の肩甲骨あたりがやたらと痒くて我慢できなくなった。掻きたいのだが、どう手を回しても届かない場所。仕方が無いので柱に背中をこすりつけて「かい〜の」を連発するが、思うように掻けないので、痒みが治まらない。

痒いところに熱いシャワーを集中的に浴びせたり、岩風呂に擦りつけてみたり、いろいろ試すのだが、やればやるほど、余計に痒みがどんどん酷くなるばかり。

もはや柱では、痒さを押さえることができず、前に皮膚科でもらった少しキツ目のかゆみ止め薬を塗ることにした。・・・といっても、自分ではどうあがいても届かない。どうしたものかと、部屋の中を見渡していて、ふとある突起が目に入った。

それは、作り付けの戸棚を開け閉めするための金属の丸い取っ手。この金属の取っ手に薬をたっぷりと塗りつけておいて、そこに背中をこすりつけるという作戦を思いついたのだ。案の定、丸みを帯びた取っ手がまるで指先のようにピンポイントで患部に当たり、見事に薬を塗ることができ一件落着。

俺って天才かも!? 

そのとき、ブーンという羽音と共に頭上を何かが飛んで行くのが見えた。何者かとその行方に目をこらすと、天井に黒い大きな虫が止まっている・・・。

ウソー、ゴキブリやん! あまりの恐怖に思わず妻を呼びそうになる。

しかし、よく考えるとここは徳島、妻など居るわけが無い。昔からゴキブリだけは大の苦手で、情けないけどゴキブリ退治はいつも妻の役目。ゴキブリから目を離さないようにして、とりあえず素早くTシャツを着る。

徳島の家には殺虫剤的なものは無いので、雑誌か何かで叩き落とすしか無い。しかし相手は天井、しかもキッチリと仕留める自信など何処にも無い。

とりあえず、近くにあったティッシュの箱を握りしめ、ドキドキしながら、手の届くところに降りてくるのを待つことに。ところが見透かされているのか、このゴキブリは高いところばかりを移動する。

次の瞬間、いきなり飛び立ったゴキブリが私をかすめて足元へ。

「おわ〜、おぎゃ〜」思わず訳の分からない声が出る。

身をかわすのに必死で見失ってしまった。ビビリながら床をくまなく見てまわる。ゴミ箱をどけたり、椅子をどけたり、いちいち腰が引ける。

ふと目線をあげると、何と目の前の壁にゴキブリが、「おわ〜」・・・とっさにティッシュの箱を思いっきりゴキブリへと投げつける。

凄い音がしてティッシュの箱が落下。しかしそこにゴキブリの姿は無し。

それきり姿を一切見せなくなってしまった。同じ部屋にゴキブリと一緒にいることが耐えられなくなって、寝室へと待避。捜索を諦めてとりあえす寝ることにした。

一夜明けて、寝ぼけ眼で用を済ましてトイレを出ると、視線の片隅に黒い塊が見えた。ひょっとして・・・目をこらすと廊下の端に、腹をみせて息絶えたゴキブリの姿が・・・。

オレの浴びせた一撃は、確かに効いていたんだ。


「一人でできたもん」、、、何ともいえない達成感を感じた朝でした。

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