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「この作品はフィクションです」はあるのに「この作品はノンフィクションです」はない

 最近はあまり真面目に見ない文字列だから、書いてあるのかどうかも怪しいと思っているのだけれど、おそらく書いているのだろう。
「この作品はフィクションです」的なやつ。

 僕は幼い頃、文字がある程度読めるようになってきた頃に、初めてそれが読めるようになって、誰かに「フィクションって何?」と質問した。
 そうすると「作り話だよ」と返ってきて、そこで私は「なるほど、つまり作り話じゃないパターンもあるということか」となったので、続けて「作り話じゃなかったらなんていうの?」と聞いて「ノンフィクション」と言うらしいことを知った。

 さて、それからというもの、僕はドラマや漫画などを見るたびに「この作品はノンフィクションです」と書かれているものを探したのだが、これが思ったよりも見つからなくて困った。
 なぜこの世にはフィクションばかりが転がっているんだ!と思った。

 時は過ぎてそれなりに大人になり、いちおうあの文字列がただのクレーム対策だということを知った。
 下らない理由で書き込まれているものなんだとがっかりした。

 世の中には子供にとってはどうでもいいことが多すぎる。瞬間を生きる彼らには「もしこれを書かなかったら後で色々と言ってくる頭のおかしい奴らがいるから、先にフィクションですって言い訳しておこう」だなんて考えない。
 広告もそうだ。あんなつまらないものをなぜ流すのかと思っていた。
 広告そのものがダメなのではない。作品としてつまらないのがダメなのだ。

「この作品はフィクションです」もそうだ。
 どうせ書くのであればもっと面白く描いてくれ。
「この作品は妄想、もしくは妄言を形にしたものになります。どうかお付き合い下さい」とかでもいいかもしれない。

 僕は笑いの才能が無い。

 とりあえず八つ当たりで文句を言っておこう。
 子供の頃に僕が「この作品はノンフィクションです」の文字列を探し続けた時間を返せこのやろう。

生きているだけでいいや。