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インハウス支援を始めたのは、事業支援をしたかったから(後編)

こんにちは。高瀬です。株式会社ハートラスという会社で取締役CSMOとして経営、戦略策定、事業全体を管掌しています。

やっていることは、デジタル上のマーケティング活動を支援すること。主に、外部に依存することなく企業が自ら知識やノウハウ、実行力を身に着け、生活者に向き合っていただくことを目的とした「インハウス支援」を行っています。
ただ、ここまで来るまで長い道のりがありました。。。(前回のエントリーはこちら

今回は、今のインハウス支援の考え方に至るまでの流れを書いてみます。

ベンチマークすべき企業はいなかった

前回のエントリーでも書きましたが、全ては2013年のニューヨーク出張から始まりました。ベストインクラス、インハウス、という言葉を知り、雷に打たれたくらいの衝撃を受けたわけです。

ということで、帰国後、早速既存の戦略策定に組み込むべく行動に移すわけですが、色々と調べていくうちに、一つの分かってきたことがありました。

それは「インハウス」というコンセプトを掲げながら、企業のマーケティング活動を支援している会社が全く見つからないということ。(実際はいたかもしれませんが、見つけられませんでした。。)
当時、市場リサーチをしていた時のベンチマーク企業の条件は以下でした。

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・ノウハウ、知見を取引先にちゃんと渡す
・特定のツール等に囚われず、フラットに提供している
・ワンストップ対応に拘らず、パートナーを束ねたプロジェクトベースで支援することを主眼に置いている
・デジタル上の広告、プロモーションの「実行」まで支援している
・マージンモデルではなくFeeモデルで取り組んでいる

※全てand条件
※後述しますが、常駐すればインハウス支援になるということは大間違いで、常駐する/しないの手段の観点は、一切リサーチ時の条件には含めていませんでした
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ちなみに、一例としてコンサルティングファームやデジタル専業系エージェンシー出身の方が数名で起業されていたり、フリーランスとして上記と似たような考え方で企業をご支援されているというケースは見受けられましたが、列挙した条件のいずれかが欠けている、という認識でした。

これは、過去に誰かがチャレンジして失敗したのか、まだ誰も取り組んでいないのか、どちらかだろうと。

こういう時は覚悟が大事だ。これはきっと後者に違いない、まずはやってみよう。

基本的に前向きな私はリサーチ結果を「機会」と捉え、実際にアクションすることを意思決定しました。

広告、オペレーションのノウハウだけでは事足りない

早速、企業のマーケティング担当者の方々とお話をしつつ、何社か取り組んでみることになりました。それはもう、嬉しかった。

その中で、とあるコンサルティング会社との連携により、大手上場企業のデジタルマーケティング部門とお付き合いすることとなり、そこから約1年3か月の間、ご支援をさせていただきました。

トレーディングデスク事業で培ったノウハウがかなりありましたので、キャンペーン単位でのプロモーションのプランニング、細かい運用、計測周りやレポーティングを含めたオペレーション、これらを主体として「エージェンシーのディレクション」「デジタルマーケティング部門の方々へのOJT」を担い、嬉しいことに一定のご評価をいただいたと思います。

※当時、連携させていただいたコンサルティング会社様、1年3か月、クライアントに向き合い、インハウス支援を実行したメンバーには感謝しかありません

一方で悩みも出てきました。

向き合ったチームの皆様のデジタルリテラシーは明らかに向上し、外部パートナーのディレクションの質も確実に向上されている。ただ、その後はエージェンシーとの連携はこれまで通りで、外から見る限りですが、何かしらの変化が起きたとは決して言いきれないものだった記憶があります。

果たして、これは「ハートラスが考える事業支援」ができた、と言えるのだろうか。我々が取り組んだことは決して失敗ではないですが、本質的な価値の提供ができたのだろうか。

ここで見えた一つの答えは、「トレーディングデスク事業で培った広告、オペレーションのノウハウだけではインハウス支援はしきれない」でした。今思えば「よくよく考えれば分かること」なのですが、当時、この答えを突き付けられたことはかなり衝撃的だった。

広告、オペレーションの実行と同等、もしくはそれ以上に重要な要素は「組織の在り方」「業務設計」「人材の在り方や採用」が非常に重要な要素を占めている、ということに行き着いたのです。

インハウス=常駐すること、完全内製化、ではない

他にも、幾つか気付きがありました。

上記の事例以外にも、複数のプロジェクトが走っていったわけですが、常駐しているメンバーとの会話をしていくと、良い意味で「タスク処理が進んでしまい、手が空いてしまうタイミングがある」というケースが散見されました。

もちろん、こちらの指示命令系統のもとに必要な会議体には参加し、取引条件に沿った業務をしっかりとこなしてくれいるわけですが、細かく紐解いていくと、決してクライアントのオフィスにいること、常駐することが正解とは言えないのではないか。Feeをいただいている以上、能動的に業務を創出し、意味のある仕事をしているわけですが、果たしてそれで良いのか。そんな考えが浮かびました。

もう一つあります。

当時は「完全に社内に知識、ノウハウ、実行全てを内製化する」こと事を目的としてプロジェクトのゴール、スコープを決めていました。ただ、広告関連で言えば、ご支援いただいているエージェンシーのリソースを全てクライアント社内で巻き取ることが正しいとは言い切れないという感覚が生まれていました。

広告宣伝部やデジタルマーケティング部門でヘッドカウントを増やし、販管費を抱え、全ての機能・リソースを内製化することは、それなりのリスクも抱えます。各社の人事異動のルールもあるでしょう。

それらを網羅的に鑑みた結果、インハウス=完全内製が正解とは言えないという結論に至りました(もちろん、必要なケースもあります)。

常駐に拘ることなく、各企業のコンディションに合わせて内製化する範囲を都度設計しなければならないということ。これは、本当に大事なことである、と痛感させられたことを、今でも覚えています。

今回書いたこと全てが、今現在のハートラスのインハウス支援の内容を形作るもとになっており、リアルな実体験をもって得られた視点でもあります。

次回は、具体的な広告、マーケティング領域のインハウス支援の一つのカタチを書いていければと思います。