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高すぎる目標は組織を壊す

高い目標を掲げることは良いことです。ただし、達成できなければ意味がありません。

高すぎる目標を設定された側の従業員はたまったもんじゃなく、「いったいどうやって達成するの?」と思いがちです。

それを考えるのが従業員の役割じゃないか?という意見もありますが、ギリギリ達成できる目標設定をいかにするかは、経営陣の大事な仕事の一つではないでしょうか。


高い目標の弊害の一つに、従業員のモチベーション低下があります。どう頭を思考させても、「さすがに目標達成できない」と思わせるような意味不明な目標設定をされると萎えますよね。


たとえば、四半期で売上1000万円を達成しなさいという目標が降りてきたとします。その前の四半期の売上は200万円でした。

じゃあ5倍の数字をやらなければ達成できません。


今まで通りのやり方では達成できないので、違うやり方を模索する必要があります。


簡易的な方程式を作り、目標達成できそうなのかシミュレーションする

売上をあげるための方程式のどこをイジるかを考え、戦略を練っていかねばなりません。

例えばBtoB向けの無形商材を販売しているとして、

売上 = 客数 × 客単価 × 購入頻度

という方程式を作ったとします。


今までよりも5倍に売上を増やさないといけないため、どこの部分を変更するか考えます。客単価が5倍になることはないし、購入頻度もいきなり5倍にはならないでしょう。ということで、まずは手っ取り早く増えそうな客数を、5倍にするとします。

5売上 = 5客数 × 客単価 × 購入頻度


じゃあ次に客数を5倍にする要素を掘り下げます。

5客数 = 5面談数 x 受注率

となりました。

受注率は5倍にならないので、面談数を5倍にします。じゃあ面談数を5倍にする戦略について掘り下げると、

5面談数 = 5リード数 x 引き上げ率

となり、リードからの引き上げがいつもより5倍必要です。その時に出てくる戦術が

・広告をいつもより多く打つ?
・リードの獲得単価を引き下げる?
・オーガニックリードの数を増やす?
・無料でリストメールを配信してくれる知り合いの会社を探す?

など様々なやり方が浮かびますが、5倍になる保証はありません。やってみるしかない状態ですが、勝てる見込みが低いので現時点ではギャンブルです。


一度式を代入して整理してみましょう。売上を5倍に増やすには、

5売上 = (5リード数 x 引き上げ率 x 受注率) × 客単価 × 購入頻度

となります。

考えた結果、リード数を5倍にするやり方が見えません。


かろうじて、2倍までなら見えます。そこでやり方を考え直し、他の率を引き上げる方法を模索します。

(2リード数 x 1.5引き上げ率 x 1.5受注率) × 客単価 × 購入頻度
= 4.5売上

となり、これでもまだ目標に対して0.5足りません。


いっそのこと客単価を1.2倍するとします。

(2リード数 x 1.5引き上げ率 x 1.5受注率) × 1.2客単価 × 購入頻度
= 5.4売上

となり、課せられた5倍の売上目標を達成することができそうです。しかしこれは机上の空論。あとはどう実行するかが一番大事です。


変数が多いとギャンブルになりやすい

さて、この問題の本質は変数が多すぎることです。

・リード数は2倍に増えるのか?
・引き上げ率を1.5倍にできるのか?
・受注率も1.5倍になるのか?
・新規顧客を増やすのも大変のに、さらに客単価を1.2倍にできるのか?
・営業工数が増えるってことは、いまでさえパツパツなのにその分の業務時間が増えるんじゃないのか?

と様々な課題が出てきます。


不確実性が高い状態で進めてしまうと、一か八かのギャンブルになってしまいます。確率的に、蓋をあけてみたら未達となる可能性が高いでしょう。


奇跡的に打った施策が全部うまく行けば、達成できますが、サイコロで4以上の目を10回連続出すみたいな感じになってしまいます。実力でも何でもなく運ゲー要素が強いです。


目標設定と給与制度はモチベーションに影響する

OKRなら給与と結びついてないのでまだ高い目標を掲げるのはありですが、MBOの場合は給与と結びつきがちです。


高い目標設定→達成できない未来が見える→給与が下がる見込み→モチベーションが下がる

となってしまいます。

だから、目標設定はやはりギリギリ達成できるかもと思わせれるような絶妙なラインを攻めないといけません。達成できるイメージを誰も持っていない状態で、上司から「はい、やって」とトップダウンで降りてきたら、非常にしんどいです。


目標設定は理想からの逆算と、現実からの積み上げの2軸で設定しなければいけない

至極当たり前の話ですが、目標設定は理想からの逆算だけじゃダメです。現実から積み上げる場合の、数字シミュレーションをしなければいけません。

この場合、経営陣が求める数字が売上を5倍にすることだったとしても、現実路線でシミュレーションしたら、頑張っても2倍と判明しました。


あなたならどうしますか?

理想からの逆算と、現実からの積み上げの両軸でシミュレーションし、そのギャップを明確にしてから目標値を決めていくのがベストだと思います。


ビジネスは期限と目標がセットです。期限内に目標値を達成できれば勝ちですし、未達なら負けです。確率論的に勝てるまで考え抜かなければいけません。

そうじゃないと単なる気合いになるでしょう。


訳のわからない目標設定をやれると信じ込んで、結果、敗走する前にマネジメント層はこれを読もう。



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