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歌と楽器の関係性④ 一番好きなシンガー

人間の声こそ、神様からプレゼントされた最も優れた楽器だという。

サックス奏者「最大限人間の声に近づけたいの~!」
圧倒的に演奏曲数やジャンルが多いジャズで、器楽演奏の究極はすなわち人間の声を模倣することになる。

ビリー・ホリデイ「ルルララ~ルルララ~ルルララ~」
反対にジャズ・シンガーは、声をまるで楽器演奏のように駆使することができるように努力する。

南武成 / Jazz It Up! マンガまるごとジャズ100年史

私は楽器になりたい。(いや、ヤバい奴じゃないですよ。)

前回は上記の「器楽演奏の目標は人間の声を模倣すること」について批判と考察を加えてみました。

今回と次回は「シンガーは声を楽器のように駆使出来るように努力する」について考察を加えます。



たま~に「一番好きな(ジャズ)ヴォーカリストは誰ですか?」と聞かれます。

ジャズを聴き出した初期に好き好んで聴いていたのは、ダイアナ・クラール(Diana Krall)と、


プロフィール欄でも紹介させてもらっているジョン・ピザレリ(John Pizzarelli)です。

両者に共通するのはジャズにおける「弾き語リスト」であり、スタイルが良くてカッコいいんですよね。

更に言うなら2人とも影響を受けたというナット・キング・コール(Nat King Cole)も尊敬しています。

弾き語りでスタイルも良く、エンターテイナーとして一流。何より彼は地声が、低くて深くて甘くて良いんですよね~。



でも、一番好きで、自分が考えるヴォーカリストとしての極致はエラ・フィッツジェラルドElla Fitzgerald)なのです。

 エラ・フィッツジェラルドの声の魅力は、張りのある高音とスキャットになったときに、搾り出すように歌う独特のグルーヴ感、そして、何よりステージでの清々しいまでの爽やかさである。どこか隣のお店のオバチャンが歌う、そんな安心感と、歌い始めたときの素晴らしくスピードに乗ったスイング感は御三家随一だ。若くしてビッグバンドの女性リーダーとして責任を持ったエラは、どこか安定感では一番だった。

HMV Onlineのプロフィール文より


冒頭の「声をまるで楽器演奏のように駆使する」を考察する上で、あれこれ語るよりも、

上記動画(少し長いですが)を最後まで聴いて頂きたい。「あぁ、声も楽器なのだな」と実感出来るのではないでしょうか。



実のところ、私はスキャットがあまり好きではありませんし、苦手意識もあります。

だってスキャット(ヴォーカルソロ)の部分だけ切り取って、初めてジャズに触れる人に聞かせたら

「この人、頭おかしくなっちゃったのかな?」って思われませんかね?(笑)

だけれども、エラのスキャットはそれだけで聞けます。緻密に計算された部分と本能的な魂の開放の部分が共存して、

極めて高度な芸術にまで昇華されています。加えて屈託のない、あっけらかんとした歌声も、私の心にスッと沁み入ります。

今も日常的にBGMとしても聴きたくなるのは彼女の歌声ですね。この辺は個人的な好みでしょう。



では、今回のテーマである「声を楽器に」とは「ジャズにおけるスキャット」のみを指すかと言えば、私は考察が不十分であると思います。

次回最終回、「歌 ⇒ 楽器」(後編)です。

(続く)