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アラサーに立ちはだかる壁。クォーターライフ・クライシスにデータから迫る


こんにちは、データアナリストの原嶋春輝です。
 
先日「クォーターライフ・クライシス」という言葉を耳にしました。
クォーターライフ・クライシスとは、人生の4分の1(クォーター)が過ぎる20代後半から30代にかけて訪れる、漠然とした不安や焦りを抱える時期のことを指す言葉のようです。

社会人生活に慣れてきた一方、理想の人生と現実にギャップを感じたり、周囲と比べてしまうことによって、自分は何者なのか、何をしたいのか、どう生きていくのかといったことについて深く考え込む時期であり、「人生の低迷期」とも言われています。

実際に海外の調査では、25〜33歳の7割以上がクォーターライフ・クライシスを経験していることが報告されています。


参考記事
悩めるアラサーが「世界中で激増」する明快な理由
クオーターライフ・クライシスとは――意味、陥らないために考えるべきことは - 『日本の人事部』
New LinkedIn research shows 75 percent of 25-33 year olds have experienced quarter-life crises - LinkedIn 2017

今回はこの新たな概念である「クォーターライフ・クライシス」について、検索データを使って実態に迫りたいと思います。


急速に高まるクォーターライフ・クライシスへの関心

「クォーターライフ・クライシス」と同様に年齢に関係した心理状態の危機を表す言葉として「ミッドライフ・クライシス」が挙げられます。

ミッドライフ・クライシスは、40~50代に自分の人生やアイデンティティについて葛藤や悩みを抱くとされる時期とされており、比較的広く知られている言葉です。

まずはこれら2つのワードの検索ボリュームスコア(検索者数の推計値を指数化したもの)の推移を見てみます。

「ミッドライフ・クライシス」に比べ、「クォーターライフ・クライシス」の検索は2021年に大幅に伸びていることが分かります。

この時期にはPodcastやTwitterで取り上げられており、それが人々の共感を呼ぶことで急速に認知が広まった可能性が考えられます。

では次に、20代後半から30代は実際に不安や焦りを抱きやすい時期であるのか検証してみます。

アラサーは「不安」や「焦り」を抱きやすい?


ここでは「漠然とした不安」「人生 焦り」「人生 低迷期」「20代 停滞感」などのQLCに関するワードを含んだ検索(※1) をした人数の割合を、年齢層ごとに確認してみます。

※1 「QLCに関するワードを含んだ検索」は以下の2つの条件を満たす検索と定義
• 条件1:「不安」「焦燥感」「焦り」「停滞」「低迷」のいずれかを含む
• 条件2:「漠然」「人生」「〇〇歳」「××代」のいずれかを含む

これを見ると、25~30歳あたりと40~45歳あたりに山があり、
それぞれクォーターライフ・クライシスミッドライフ・クライシスに該当することが推察されます。

特に25~30歳は不安や焦燥感を抱く人の割合が大きく、まさにアラサーに立ちはだかる壁となっていることが分かりました。

続いて実際にQLCに直面する25~30歳についてさらに深掘ってみましょう。

検索から見えたクォーターライフ・クライシスの悩みとヒント

かの哲学者デカルトは分析の規則として、「困難は分割せよ」という趣旨の言葉を残しています。これは一見複雑で難しい問題でも、細かく切り分ければ解決に近づくということです。

QLCに陥る要因も単純ではなく、複雑であることが考えられます。そこで今回はQLCへの理解を深める第一歩として、不安や焦燥感を抱くアラサーの考えごとを検索データから分類してみます。

ここでは、先程のQLC関連ワード検索者のうち25~30歳をQLCユーザーと定義し、普段どんな検索をしているのか、カテゴリごとに特徴的なワード(※2)を抽出しました。

※2 ここでの特徴的な検索ワードとは、25~30歳全体のユーザーに対して、QLCユーザーに特徴的な検索ワードを指す

悩みが表れたカテゴリー

QLCユーザーの悩みが表れたカテゴリとして、上記のようなものがありました。

これらを見ると、どんな仕事をしたいか・転職すべきか悩んでおり、
資格の取得も検討している様子が見て取れます。
また結婚を考える時期でもあり、「結婚できるか不安」といった検索も特徴的です。

さらに金融・投資カテゴリから、
同世代の貯金額を気にしている様子も表れています。
昨今の物価高や老後2000万円問題も不安の種になっているのかもしれません。

一方で「漠然とした不安」「人生 不安しかない」など、具体的に何に不安を感じているのか整理できていない人もいることが分かります。
加えてこのような悩みや不安がストレス・プレッシャーとなり、「うつ病」「不安障害」などのこころの病にも影響している可能性が考えられます。

ここで取り上げたものだけでも、悩みのない人生を過ごすことがいかに難しいかを実感させられます。
しかしこのような分類の視点を持つことは、漠然とした不安と付き合うための一つの指標になるのではないでしょうか。
 
少しネガティブな話題となりましたが、最後に前向きになるためのヒントが表れたカテゴリについて紹介します。

前向きになるヒントが表れたカテゴリー

QLCに直面する人々は、上記のような書籍や映画に刺激を受けることや、「一人旅」「一人カラオケ」のように自分だけの時間を過ごすことを検討しているようです。

また「隣の芝生は青い」「自分の人生を生きる」などの検索も特徴的であり、"人と比べない"という考えにたどり着きやすいことが窺えます。

特にSNSが普及した現代では、学生時代まで横並びだった同世代がそれぞれの形で人生を進める様子を目にする機会が増えていると思われます。

周りと自分を比べてしまい、停滞感や焦燥感に苛まれるという経験がある人もいるのではないでしょうか。

そんな時は書籍や映画作品に触れてみたり、人と比べないようにする思考を巡らせたりすることは、QLCを乗り越えるための良い機会になるのかもしれません。

おわりに

今回は最近注目を集めている「クォーターライフ・クライシス」についてデータから見てきました。

文字通り、アラサーは漠然とした不安や焦りを抱きやすい時期であり、様々な悩みの種があることが分かりました。
筆者もちょうど20代後半を迎えたのですが、このように悩みやすい時期だということを知り、少し心が楽になった気がします。

クォーターライフ・クライシスとの付き合い方は人それぞれだと思いますが、この記事が少しでも皆さんの参考になれば幸いです。


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