見出し画像

『機動戦士ガンダム 水星の魔女』は「ガンダムは僕らのもの」にしたのか

こんにちは、データ分析修行中の編集者の清作左です。

『機動戦士ガンダム 水星の魔女』第1クールの最終回が1月8日に放送され、その内容に大きな反響を集めましたね。

私も「ガンダムは宇宙世紀じゃないと。しかも学園ものか」なんて思いながらも視聴を始めたらドはまり。最終回に絶句して第2クールが気になりすぎて、まんまと"ダブスタクソ編集者"になってしまいました。

そんな水星の魔女、放送開始前のニュース記事に気になる一文がありました。

『ガンダム』の50、60周年に向けて、次の世代の少年少女に向けて作りたいという方向性で進めていました。10代の人たちからお話を聞くタイミングがあって、その時『ガンダムは、僕らのものじゃない。僕らに向けたものではない』という言葉があったんです。その言葉が刺さったんです。

機動戦士ガンダム 水星の魔女:女性主人公 学園を舞台にした理由 “新しいガンダム”の挑戦

10代の人にとってガンダムはなじみがない存在。もしかしたら20代にも縁遠くなっているのかもしれない。

そこで第2クール開始前にDS.INSIGHTを使って「水星の魔女」は若者に刺さったのか。

「ガンダムは、僕らのものになったのか」をデータから探ってみようと思います。

直近作品との違いは?

もし若者に刺さった内容なら他の作品と検索傾向が異なるかもしれません。今回はデータを調べられる2019年以降に公開、放送された作品4タイトルで比較してみることにしました。
それぞれの検索ボリュームが一番大きかった月間の数値を見てます。

  • 19年4月29日~8月12日放送『機動戦士ガンダム THE ORIGIN 前夜 赤い彗星』(19年7月の1カ月間)

  • 21年6月11日公開の映画『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』(21年6月の1カ月間)

  • 22年6月3日公開の映画『機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島』(22年6月の1カ月間)

  • 22年10月2日~23年1月8日放送『機動戦士ガンダム 水星の魔女』(22年10月の1カ月間)

さて、10代、20代の僕ら(若者)のものになっているのか。結果は。


水星の魔女だけが30代以下の割合が過半数を超えていました。

40代、50代が中心となっているTHE ORIGINやククルス・ドアンの島のテーマは「初代」ガンダムがテーマ。どちらも20代以下の検索割合は2割にも満たず、「ガンダムは、僕らのものじゃない。僕らに向けたものではない」を表しているともいえそうです。

逆に「宇宙世紀と違う」「学園もの」という点から「初代」ガンダムのファン層は見ていないということが考えられそうですね。

検索ユーザー層の違いがはっきりとデータで出る形になりました。
他の作品よりも若い人が興味を持って検索していることから、制作陣の狙い通りの展開となっているといえるでしょう。

また、今作の最大の特長は「ガンダムシリーズ初の主人公が女性」。
この影響なのか、検索ユーザーの男女比が他の作品とは一線を画していました。

他と比べると圧倒的に女性の割合が多くなっていることがわかりますね。
ガンダム作品のファン層の裾野を広げることに成功したともいえそうです

他作品への影響は?

他の作品とは異なるファン層を作った水星の魔女。他のガンダム作品の視聴にも影響を与えているのか。

4月からの第2クール放送回までの間、以下の3作品がTVエディションとして放送されます。

  • 「機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ」(1月15日~2月5日)

  • 「機動戦士ガンダム サンダーボルト」(2月12日~26日)

  • 「機動戦士ガンダム NT(ナラティブ)」(3月5日~26日)

「閃光のハサウェイ」の映画公開時期とTVエディション放送時期の検索データの変化から水星の魔女の影響を探っていきたいと思います。

水星の魔女で獲得した若年層が引き続き視聴を続けて、ガンダムシリーズの「閃光のハサウェイ」への関心を持って検索したとしたら、映画公開時期よりTVエディション版放送時期のほうが10代~30代の割合が大きくなるはず。

果たして…。


仮定と全然異なる結果が出てしまいました!

ユーザー割合でみると増えると見込んでいた20代が大きく減った一方で、逆に50代が大きく伸ばすという結果に。

なぜか。

映画公開前の2021年5月からTVエディション版放送時期の2023年1月までの年代別割合と推定検索人数の推移をグラフ化してみました。

映画が公開された時期、サブスク配信が開始された時期、地上波放送の時期に検索ボリュームが跳ね上がり、山ができていることがわかります。

年代別割合と合わせてみてみると、映画やネット配信では見なかった50代の人が地上波で放送されたことにより、興味を持った層が多かった可能性があるかもしれませんね。

今度は逆に割合が減ったところに注目してみましょう。

赤枠で囲った映画公開時期によく検索していた層TOP3が減っていたことがわかります。
50代のユーザーと比べて、すでに内容などを知っているから検索しなかったということは考えられそうですね。

検索ユーザーの男女比率の変化も見てみました。

水星の魔女で他作品より女性の検索ユーザーを獲得し、そのまま興味関心を抱いてもらえたなら、女性の比率が伸びるはずです。

こちらは仮定どおり、水星の魔女に続いて女性の興味関心を持ってもらっていることがわかりますね。

まとめ

  • 「機動戦士ガンダム 水星の魔女」は他のガンダムシリーズの作品とは異なるユーザー層を形成していた。

  • 10代、20代の若年層は他のシリーズ作品に興味をもって、視聴してみるまでは至っていない可能性が高い。

  • これまでのガンダム作品は男性に人気の高かったが、水星の魔女をきっかけにガンダム作品に興味を持つ女性が増えた傾向がある。

水星の魔女はこれまでの作品にはない検索ユーザーの層を形成していたことがデータからわかりました。

特に女性を主人公に起用したことで、女性から注目を集めていることが如実に現れていましたね。

若年層が他作品への興味関心が薄い点を加味すると「ガンダムはぼくらのものになった」というには難しいものの、女性のファン層を獲得したため「ガンダムはわたしたちのもの」になったのかもしれません。

4月から始まる第2クールの内容だけでなく、どのようなファン層を作っていくかも注目していきたいですね。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?