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10. 質的社会調査の方法を読んだあたりでぼくは今のぼくになったのではないか?

質的社会調査の方法

(書名をクリックすると「版元ドットコム」からさまざまなウェブ書店へのリンクが開けます。楽天ブックスだろうがhonyaclubだろうがe-honだろうがなんでもあるから好きなところで買ってくれ。)

三省堂書店池袋本店のヨンデル選書フェアでお買い上げの方に渡す特製カードに350文字のオススメ文を寄せた。以下、そのまま引用する。

ぼくが岸先生といったらフラジャイル、なんて勝手に勘違いしている方もいらっしゃるんですけれども、岸先生といったら岸政彦先生ですよ。うん。ときどきはそうです。それくらい尊敬している方です。小説も書かれる方ので筆力は抜群、社会学研究の世界では一目置かれている先生です。特にこの本は装丁もきれいだし、かつておもしろツイッターで一世を風靡したユヒカクの本だし、おすすめ感がはんぱないです。細かいことをいいますと、エビデンスとナラティブな対処とを使い分けるのが現代医療の基本だと思うのですが、このナラティブなほうはエビデンスに比べて教育が難しくて、なんなら「科学的ではない」とすら考えられているきらいがあるのですが、そういうとき社会学の話を勉強するとマジで参考になる気がするのです。

とまあヨンデル選書での紹介時にはこれくらいの書き方をしていたのだが、紹介文を用意してから半年ちょっと経つ今、あらためてこの「質的社会調査の方法」という本がぼくの中に占めるウェイトのでかさに驚いている。

ぼくはたぶんこの「当事者研究」というジャンルに強烈に惹き付けられているのだ。

迂遠なことを言うと、そもそも病理医が1例にこだわって臨床画像・病理対比をするというのは、極めてアブダクション的であり、ナラティブそのもので、エビデンス重視の現代医学において業績と認められにくいものなのだけれども、なぜかやたらと人に応援される。そしてぼくは「当事者研究」というのもまた人に応援される類いのものなのではないか、もっと言えば、ぼくは当事者研究にエールを送る応援団の一員として今後やっていくべきなのではないか、という思いを、多くのケア関連の本を読んでいるうちにどんどん強めていっている。

(2019.5.14 10冊目)


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