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166.美しい医学書の時代

パッと出してすぐわかる 胆・膵 超音波アトラス


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三省堂書店池袋本店のヨンデル選書フェア(本記事は2019-2020のヨンデル選書 2nd seasonが対象)で、お買い上げの方に渡す特製カードに350文字のオススメ文を寄せた。以下、そのまま引用する。

西田さんは北海道大学病院の教授であり臨床検査技師です。旧帝国大学の大学病院の教授になった臨床検査技師って過去にどれだけいるのかな、すごい人です。なのですごい本を出すだろうなとは思っていたのですが、豊富な超音波検査の画像に対して手書きでスケッチ(シェーマ)をひとつひとつきちんと付け加えているのがすごく現場感あっていい本なんですよ。「この写真にはこういうものがうつっていますよね、わかりますよね」と押しつけているんじゃなくて、スケッチに描き込むことで初学者であっても実際にそこに何があるのかをきちんと丁寧に学ぶことができる。いやーいい本だなあ。誰が病理監修したんだろう。誰が……誰が……あっ、俺だった(予定調和)。まあ原稿を途中で少し拝見してコメントしただけですので著者一覧には入ってませんけどね!

ちなみに書評カードにはこう書いたけど、あとでわかったことだが西田先生は北海道大学病院の教授ではなかった。いや、教授なのか? なんだかよくわからないポジションについている。偉いことにかわりはない。ちなみにこの本は、同時期にもうひとつ、シリーズの別の本が出ている。

パッと出してすぐわかる 肝・脾 超音波アトラス

違いがわかるだろうか。最初に説明したほうは「胆膵(胆道、膵臓)」。あとのほうは肝臓と脾臓だ。書評コメントも変えた。以下の通り。

胆膵と肝・脾、2冊にわかれた教科書ですが、方向性は一緒なのでこの350字カードも同じ文面でいいかなーとは思ったんですけれど、たいていの人はこれ2冊セットで買うでしょう?だったらカードも2種類あったほうがおもしろいかもしれませんね。せっかくですもんね。たとえばこの本のカラーリング、内部のデザイン、西田さんがかなり考えています。かわいいとまじめの中間に落とし込むためにすごく悩まれていました(Facebookで見た)。教科書は格調高くしないとだめだ、なんてのはもう今の時代には当てはまらないと思いますし、若い初学者たちが少しでも気持ちよく勉強するためにはデザイナーと細部を詰める努力は絶対に必要です。おしゃれな医学書が世にあふれることで、書を通じて医学を修める人の数が少しでも増えればいいと思います。フォントもいいでしょ?

医学書のデザインって重要だよね、という話、最近はもう当たり前すぎる感もあるのだが、まだまだこだわっていい部分だと感じることもある。医学書は、単価は高いが部数が少なく、印税10%では著者に年間に数万円くらいしか入ってこない世界であり、出版社側のもうけもほとんどないんじゃないかと思うけれども、そんな中できっちりデザイナーやイラストレーターを入れてくださることには感謝しかないし、そういうきれいな作りの本が増えていくことは読者としてもうれしい。


(2022.9.23 166冊目、とちゅうでカウントがずれてたのをここで補正)

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