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片思いに苦しむ中シュタインズゲートをプレイしたら、世界線が変動してメンタルが救われた話

※シュタゲのネタバレは一応ありません。
また、本記事は以前書いたシュタゲ感想に筆者の背景を書き足し、何故これほど面白かったかを考察する、いわばリメイク記事のようなものです。
熱だけが残った前記事(ネタバレ有)も良ければどぞ。

前日譚

高校生の恋愛はよく「甘酸っぱい」と例えられる。

僕も男子高校生なので、去年の夏に片思いとかいう恋愛感情が出来てしまった。兎にも角にも嬉しかった事は多少あれど、日が経つにつれて自身の勇気と行動力の無さに絶望していく。
冬が始まる頃には片思いの念が捨て切れず何とか足掻く僕と、哀れにも腹が決まらず狼狽える僕、あとついでにテストに挟まれて中々クソッタレな日々に堕落していた。
あの頃支えてくれた友人には感謝しきれないが、申し訳無さが勝ってしまう。

さて、テストも終え冬休みまで秒読みに入った頃だろうか。もういっそワンチャンに賭けて告白(実質玉砕)するのも考えたが、結局行動に起こせず終いになり、微かな片思いの気持ちに苦しめられる日々が続いた。

しかしその男子は、悲しきかな、インターネットの海に逃げることだけは上手かったのだ。




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気が付けば僕はPlayStation Nowという月額制ストリーミングゲームサービスを見ていて、耳に覚えのある面白いゲームの詳細を開いては閉じ、開いては閉じを繰り返していた。

だが、その現実逃避が全ての始まりだった。

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どういうわけか、シュタインズゲートをプレイし始めた。

※シュタインズゲートのあらすじ(公式サイトより引用&改変)
岡部倫太郎──通称オカリン──は、いまだ厨二病から抜け出せない大学生。
自称『狂気のマッドサイエンティスト・鳳凰院凶真』を名乗り、『未来ガジェット研究所』という、メンバーわずか3人だけのサークルでヘンテコな発明をする日々を送っていた。
そんな彼らがある時偶然から過去へと電子メールを送れる発明品、即ち『タイムマシン』を生み出してしまい、後に世界を巻き込む"不条理な悲劇"に飲み込まれていく。

当時はあらすじすらも知らず、かの音MADのココロオカリンと兄貴からの「シュタゲは中盤からやべぇから!」という推し文の2つしか事前情報は無かった。でも取り敢えずちょっとだけ、それで面白くなかったら暇潰しにニコニコ動画でも見ればいいかなと軽い気持ちで進むことに。


この後どうなったかって?


何もかも忘れてハマって夜が明けた。




既に開拓されていた新天地、ノベルゲーム

シュタゲが発売された当時、文字を読むノベルゲームは1990年代後半から始まったブームなどとうに過ぎ、衰退寸前のジャンルだったそうだ。「Fate stay/night」「CLANNAD」「ひぐらしのなく頃に」などの名作は名前だけなら知っていたが、そのような背景があるとは知らなかった。

しかし、だ。
裏を返せば、これまで日本のクリエイター達が積み上げてきたノベルゲームという文脈は長い間磨かれ続けた刀が如く、熟練されたメディアと化していたのだ。

斯くしてアクションゲーという村で生まれ育った僕は、その切れ味に見事なまでに切り刻まれ、連日徹夜をしてまでシュタインズゲートにのめり込むことになる。

シュタゲのストーリーは一見SFだが、蓋を開けてみれば純粋なヒューマンドラマが容赦無く僕の心を蝕んで楽しませてくれる。秋葉原を舞台に起こるコメディが一転して急展開が始まった時は、「もうこれは戻れねぇな…」と沼を悟るほどの奥深さを身を以て味わった。

では、個人的に面白かった要素を没入感/キャラに絞って考察していこう。




「想定科学」の世界観と没入感

元々僕は科学技術やITなどに興味がある理系の学生なので、プレイしてから本作品が科学要素多めと知った時は非常に興奮した。アニメ版は大幅にカットされているが、紅莉栖によるATFセミナーではタイムトラベル11の理論が事細かに説明され、ゲーム内TipsとスマホでWikipediaを同時展開して難解用語を噛み砕きながら、好奇心をこれでもかと刺激された。

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また、オカリン率いるラボメン(サークルメンバー)は偶然手に入れたタイムマシンを改良すべく、徹夜で電話レンジ(仮)に物を突っ込んだり、Dメールを送りまくってデータを取ったり、でもやりすぎると下に住む店長に怒られるから直談したり色々やる。これがとてもワクワクするのだ。
堅苦しくなく、かといってそこまで緩くもない。丁度いい本気度であーだこーだ言いながら手探りに情報を揃えていくのが、やけにリアリティがあって面白い。

タイムマシンが存在している時点でリアリティを謳うのは如何なものかと思うかもしれないが、実は他「もしかしたらありえるんじゃね…?」と錯覚させる要素が他にも多く盛り込まれている。

例えばシュタゲの核となるタイムマシン
かの有名なサイエンス誌に掲載された紅莉栖の論文を用いてトンデモ改造をすることになり、その時の説明図がこちら。

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ガチだ。
しかも少しずつタイムマシンの可能性を理解していった過程の末に見せつけられる訳だから、プレイヤーは大体理解出来てしまうのだ。設定資料集によると、量子力学や相対性理論など実際の科学を勉強した上でシナリオが書かれているため、リアリティが湧かない訳がない。

もうひとつ例を挙げると、プレイヤーの視点が例外なく岡部倫太郎一人に固定されていることだ。
ミステリー作品やSFでよく見る、角度の異なる視点でストーリーの核心をチラ見せするインターミッションがゲーム内には存在しない。本来ならば"機関"視点のチラ見せが計画されていたが、プレイヤーがより「岡部倫太郎」に没入できるよう廃止されたことが開発スタッフへのインタビューにより説明されている。

また、シュタゲ特有のフォーントリガーシステムもこれに拍車をかけている。
当システムは画面上に主人公の行動の選択肢が一切出ない代わりに、プレイヤー自身が携帯を取り出してメールを送受信したり、電話に出ることが出来る。

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能動的にストーリーに介入出来るため、より一層プレイヤーと岡部を近づけている素晴らしい仕掛けといえる。
岡部がタイムマシンの性能に驚くとき、こちらもまた現実を忘れてタイムマシンを信じ込んでしまうのだ。




曲者なだけじゃない、人間味溢れるキャラ

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主人公を始めとして、全員がブレない軸のような信念を持ってストーリーに登場するので、人間らしさが滲み出てとても好印象なキャラが多い。
中でも個人的に好きなキャラはダル紅莉栖の2人だ。



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ダルは凄腕ハッカーだが変態オタクだ。
メイドやエロゲはもちろんSERNの超大型マシンのLHCにも萌えるレベルとか、正直ついていけないが…
だからこそ、尊敬してしまうほどのストイックなオタクは見ていて憧れる。ストーリーの中枢としての活躍より、日常会話で滲み出る当時のアングラ感を体現した由緒正しきオタクの味がそれとなく惹かれてしまう。そこにシビれるあこがれ…ゲフンゲフン

そのうち一番好きなのは岡部とネットスラングで会話するシーン。
僕も友人と某実況者の名言を借りながら会話することがよくあり、やはりお互いが"分かる"スラングで会話出来るのはオタクならではの極上の体験だろう。劇中では2010年の秋葉原が舞台なので今じゃ聞くことのないスラングが大半だが、正直僕は現在よりその時期のスラングの方が慣れているので「すげぇマジで話してるじゃん!!」と感動してしまった。
ktkrを大声で叫ぶ様は懐かしいし、何より清々しい。そしてhshsやprprは声に出して読むとキモい。やっぱゼロ年代のスラングおもしれえや(老害一歩手前)



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そして紅莉栖は素晴らしいほどツンデレ。頭めっちゃ賢いしポンコツ。かわいい。
ラボに無理やり迎え入れた気難しい少女が、実は隠れねらーで白昼堂々@ちゃん(2ch)でレスバしてるだけでもニヤけるのに、岡部と段々打ち解けていくと、ダルと同様にネットスラングの掛け合いが出来るようになっていくのがもうね、てぇてぇのよね…(語彙力)

もちろんそれだけじゃない。紅莉栖はストーリーを進める上で重要な役割を担っており、自身よりもラボメンを大事にするほど仲間想いで、中盤からの急展開に折れそうになる岡部の支えになってくれるのが最高。恐らくシュタゲをプレイした人の大半が「紅莉栖~~~~」ってなってるはず。
特に秋葉原UPXのシーンは、これまで絶望していた主人公に唯一手を差し伸べる存在として寄り添い、励ましてくれる。

また、これまで僕はツンデレ自体に興味がそそられることはほぼ無かったが、献身的な存在なのに照れ隠しをするという矛盾のもとに生まれるからこそ、ツンデレが際立つことが身に沁みて理解した。もちろん日常会話で出るテンプレな照れ隠しも中々に刺激的で、ツンデレの凄さを再確認した。

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さらに、天才科学者としての側面も忘れてはならない。量子力学やフラクタル構造、カオス理論にバタフライ効果…劇中では多くの科学用語が現れるが、紅莉栖が口に出すだけで「なるほどなぁ」と唸らせる説得力があるのだ。もちろん、オカリンやダルもその方向に明るいので、お互いが用語を理解して会話が成立していくのも説得力が増す一因だろう。

でも恋愛になるとすーぐツンデレ発症してポンコツになっちゃう。そんなギャップを作る落差が「天才科学者」というレッテルに皮肉にも含まれている所も挙げざるを得ない。

余談だが僕は貧乳派だ。もっと言うとギリある位が至高だ。素晴らしいぞ助手。
欲を言えばショート派だが、ロングの方が白衣に似合うのでこれはこれで。



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最後に、主人公たる岡部にも触れておく。
あらすじにある通り、いや文字以上に厨二病をこじらせており、最初は中々受け付けないタイプのキャラだった。しかし、ストーリーが進むにつれて段々と岡部に没入していき、劇中で語られる喜怒哀楽がダイレクトに僕へと伝わってくる様は初めての経験だった。

また、「未来ガジェット研究所」というサークルの創設者としての岡部も同様に魅力的である。
ラボメンに何かあれば身を張って助けにいき、ボロボロになりながらもリーダーとしての自覚を持って率いていく姿はやはり格好いい。

ここで重要なのが、岡部は最初から"強い"人物ではない。むしろ弱く、ただの大学生だ。しかしながら、"不条理な悲劇"に翻弄されても立ち上がり、仲間と共に活路を切り開いていく様はまさに不死鳥のようである。
狂気のマッドサイエンティスト、鳳凰院凶真は斯くして戦い抜いたと悟った時には、また違った視点でシュタインズゲートを楽しめるようになるだろう。




後日談

という訳で、片思いで苦しむ日々から初めて解放され、狂ったような1週間が続いた。涙を流すのは勿論、夜中に咽び泣いて座椅子が湿ってしまったほどに心を動かされた。
アクションゲーで艱難辛苦の果てに掴み取る勝利も最高な気持ちになれるが、このノベルゲームで得た感情はまた変わった極上の味だった。

ただ唯一惜しいことは、当時の流行った時のリアルタイムの盛り上がりに出会えないことだ。10年前のスレを覗くと、いかにも楽しそうなレスが多くて羨ましくなってしまう。こればっかりはどうしようも無いので、今ある作品は今のうちに遊んでみたいと思うようになった。

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ちなみにプレイした後、勢いのままパパっと告白して玉砕した。案の定フラれた訳だが、3日後にはシュタゲ関連作品を漁り始めるというオタクムーブをかまして見事メンタルが復活した。
とはいえ、失敗する覚悟で告白してもいざ本当にフラれたらそれなりにダメージは来たので、(いないとは思うが)マネする人はご注意頂きたい。



ところで、アニメは見た事はあるがゲームまで手が伸びていない人は多いのではないだろうか。
無論、アニメも非常に上手くまとめられており、さらにオリジナルの要素もあって素晴らしい作品となっている。だからこそ、原点ならではの味も楽しんでほしい、自身の手でストーリーを読み進めていくゲームの方もプレイしてほしいと願う。

また、名前だけは知っている方は速攻でプレイした方がいい。いつネタバレされるか分からないこのご時世で、未だにシュタゲのストーリーを知らないのは逆に幸せなので、AppStoreとGoogle Play又はSteamに行ってプレイしてみてほしい。マジで泣くから。


最後に、ノベルゲームの面白さを世界に伝えようと励む、「ANIPLEX.EXE」のプロデューサーを務める島田紘希氏の言葉を借りて本記事を締めたいと思う。是非とも読んでほしい。

"ノベルゲーム固有の面白さって、そういった没入感や物語体験をした後に、エンディングを見た後にやって来る「読後感」なんじゃないかと、個人的には思っています。"

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