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街風 episode.11 〜出会い、別れ、そして再び〜

 ここか。街の片隅に洒落た外見の落ち着いた建物を見つけた。ちょうどお店に入ろうとすると常連さんのような1人の女性がお店から出てきた。さすがノリがやっているお店だな、お客さんも良さそうな人が来ている。古いアンティークのような扉を開いて店内へ入った。やはり店内の雰囲気も落ち着いている。初めて来たのにずっと昔からここを知っているような感覚になった。とても落ち着く。

 「いらっしゃいませー!」

 キッチンの方から懐かしい声が聞こえた。声の主も登場した。

 「あれ?カズさんじゃないですか!お久しぶりです!」

 「おう、久しぶりだな、ノリ。ダイスケにここを教えてもらったんで来てみたよ。今からでも大丈夫かな?」

 「もちろん!好きな席に座ってください!メニュー持ってくるんで待っててください。」

 「いや、もう決めてある。サンドウィッチセットを一つくれないか。ダイスケが”ノリの作るサンドウィッチは絶品だ”って教えてくれてな。」

 「ありがとうございます。じゃあ、今すぐ作るんで待っててください。」

 窓際のテーブル席に座った俺は上着をイスにかけた。店の外にあった喫煙スタンドを思い出し、上着のポケットからハイライトとライターを取り出した。その拍子にポケットに一緒に入れていた一通の封筒が床へ落ちた。昨日、ユウジさんから渡されたショウコからの手紙。俺は床へ落ちた封筒を拾い上げるとタバコを吸うのやめて、また上着のポケットへ押し込んで元に戻した。

 「お待たせしましたー!」

 ノリがサンドウィッチとコーヒーを持ってテーブルへやってきた。濃いめのブラックコーヒー、ノリは俺の好きなものや癖をよく覚えている。焼いたパンの良い匂いが食欲をそそる。見た目もとても美味しそうだ。

 「どうぞ。ごゆっくり。」

 「ありがとう、とても美味しそうだな。」

 「ええ、カズさんのために頑張りましたから。今日のカズさんは1人でいたい感じがするので、俺は他のことをやっていますね。何かあれば声を掛けてください。コーヒーのおかわりもあるんで言ってくださいね。」

 そう言ってノリはテーブルから離れていった。ノリの後ろ姿を見ながらノリに感心してしまった。今日はノリのサンドウィッチを食べるのも目的だったが何よりもどこかでショウコからの手紙をゆっくりと読みたいと思っていたからだ。ダイスケ、ノリ、ケイタ、の3人の中でもノリはいつも何だかんだで周りを気遣うことができていた。ふと、ケイタとも無性に会いたくなった。まあ、また今度3人と飲むって昨日ダイスケと約束したし、その日を楽しみにしておくか。

 「いただきます。」

 サンドウィッチを食べてみると美味しくて止まらなかった。丁寧に作ってくれたのが分かるような優しさとどこか昔に食べたことがあるような懐かしさが口の中に広がる。ノリのお店が人気になる理由も分かる気がした。サンドウィッチだけでなく淹れたてのブラックコーヒーも美味しい。コーヒーの香りのおかげでサンドウィッチの味がより一層際立つ。あっという間に目の前のサンドウィッチをたいらげると一息ついた。

 「ごちそうさまでした。」

 食べ終えたお皿をテーブルの隅に置こうとすると、ちょうどノリがおかわりのコーヒーを持ってやってきた。

 「おかわりのコーヒーです。ゆっくり寛いでくださいね。」

 ノリはそう言いながら、飲み干して空になったコーヒーカップとサンドウィッチのお皿を下げてキッチンへ戻っていった。こういうところも常連客が増える理由なんだろうな。

 おかわりのコーヒーを一口飲み、上着のポケットから一通の封筒を出した。ユウジさんがショウコから預かっていた封筒の中身を読むことにした。ユウジさんが大切に預かってくれていたみたいで封筒はどこも黄ばんでおらず預かった当時のままのようだ。封を切ると丁寧に三つ折りされた便箋が入っていた。”トモカズさんへ”と書かれたショウコの綺麗な字を見た瞬間に昔のことが鮮明に思い出されてきた。俺はそのまま手紙を読み始めた。

 =====

トモカズさんへ

 お久しぶりです。
 この手紙を読んでいるということはユウジさんのバーへ行ったということですね。ユウジさんはお元気でしたか?私がユウジさんに会ったのはこの手紙を預けた時でしたから、今のユウジさんはさらに渋みが増していたのではないかと思います。
 私とトモカズさんが別れてからどの位の月日が経ったことでしょうか。あなたの妹のカナエちゃんはお元気ですか?いつも私に会うたびに笑顔いっぱいでたくさん色々な話をしてくれたのが本当に楽しかったです。妹のいない私にはカナエちゃんが妹みたいな存在でした。きっとあなたと結婚したら本当の妹になれるって思うと嬉しくなっていました。あと、カナエちゃんの彼氏のダイスケ君やノリ君とケイちゃんにも会いたいです。ケイちゃんって呼ばれるたびにちょっと不貞腐れるけど恥ずかしそうに照れている姿が大好きで、どうしてもケイちゃんって呼びたくなっちゃいます。
 …そんな話はいいですよね。本題に入ります。私ともう一度やり直してくれませんか。あの日、私たちはお互いに納得して別れたはずでした。私も十分に納得して答えを出したつもりでした。しかし、あの日から私はずっと自分を責め続けています。あの日に出した答えが間違っていたと分かったからです。あの日、私はトモカズさんの優しい嘘を察したからこそ私も別れることに同意をしました。でも、やっぱり私はトモカズさんと一緒にいたいのです。もしも、私が至らない点があるのであれば言ってください。どうしてもあなたともう一度やり直したいのです。あなたはあの時に浮気も私に後ろめたいこともしていませんでしたよね?トモカズさんが今も独りの身でいるようであれば、私ともう一度お会いできませんか?

 ショウコ 090-XXX-XXXX

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 手紙を読み終えた俺は心を落ち着かせるためにコーヒーを飲んだ。俺とショウコが別れてからもう何年経つんだ?そもそもマスターにいつ預けたんだろうか。この手紙をマスターに預けてから時間はさらに経過している。ショウコも今は新しい人ができているはずだろう。ショウコへの想いが溢れかえっている自分に気づいて、過去にしがみついている自分を断ち切るために必死にショウコを忘れるための言い訳を考えている。

 ショウコと俺は高校時代の同級生だった。高校卒業後、別々の大学に進学して就職して社会人になってからもずっと長く付き合っていた。俺にとってショウコは今までの人生で会った女性の中で誰よりも素敵な女性だった。仕事に忙殺されていた日々を過ごしだした俺はついついショウコに辛くあたってしまうことがあった。そのたびに、ショウコは何も言わずに優しく俺の愚痴にも付き合ってくれた。いつでも俺のことを考えてくれていた。だからこそ、俺はそんなショウコと自分が見合わないと思ってあの日別れを告げた。

 俺だってショウコ以上に好きになった人なんていない。この歳になっても未だに恋人すらもできないのは、きっとそういうことなんだろう。気づいた時には俺は手紙の最後に書かれた電話番号に電話を掛けていた。

 「...Trrrrr...もしもし?」

 電話に出た声を聞くと俺の身体中が懐かしさに包まれた。

 「もしもし。トモカズです。カズです。」

 緊張で震えながら精一杯の声を振り絞って話しかけた。

 「...カズ君!?あのカズ君なのね!」

 電話越しの相手も少し声が震えているのが分かる。手紙ではきちんとトモカズさんと書いていたのに、やっぱり2人でいる時はこの呼び方になるんだな。

 「ショウコ。会いたい。会ってくれないか?」

 「もちろんよ。いつがいいかしら。仕事終わりで良ければ今夜でもいいわよ。」

 「じゃあ、今夜会いたい。どこかで食事してからユウジさんのところにでも行こう。」

 「ええ、分かったわ。19:00にいつもの場所へ待ち合わせしましょう。ごめんなさい、もう仕事戻らないといけないから切るわね。」

 「ああ、仕事中ごめんな。また後で。」

 そう言うと電話が切れた。あと数時間後にショウコに会うことができる。そう思うと心がソワソワしてくる。コーヒーカップを持つ自分の手が小刻みに震えているのが分かる。コーヒーを飲んでもまだ心が落ち着かない。

 「カズさん、タバコ吸いたい時は店の外に灰皿置いてあるんで遠慮しないでくださいね。」

 ノリがカウンターテーブルを拭き掃除しようとしていた。俺はノリの言葉に甘えて上着のポケットからハイライトとライターを取り出した。

 「ノリも一緒に行かないか?衣服に匂いついてしまうから無理にとは言わないけれど。」

 「久しぶりにカズさんと吸いたいんでご一緒させてください。タバコ1本もらっていいですか?」

 「おう、もちろん。」

 ノリは掃除をする手を止めて、俺と一緒に店の外へ出た。ノリと俺は口にタバコを咥えるとライターで火をつけて一服した。未だにさっきの手紙と電話の余韻に浸っている自分が分かる。

 「今日はどうされたんですか?」

 煙をフッと空に向かって吐き出すとノリが俺に訊ねてきた。

 「ああ、ショウコからの手紙を読んだ。そして、書かれていた電話番号に電話して今夜このまま2人で会うことになった。」

 「あのショウコさんですか!めっちゃ久しぶりですね。いつもお姉ちゃんみたいに優しくて俺も大好きでした。あの頃はカナエちゃんもいて楽しかったなあ。あ、すみません...。変なこと言っちゃいましたね...。」

 ノリは申し訳なさそうにした。

 「いいんだよ。俺もショウコやカナエがいて、お前らとバカみたいに盛り上がっていたあの頃が懐かしいんだ。今ではショウコもカナエもいないなんてなあ。」

 俺は自分で言った言葉に急に寂しくなった。寂しさを紛らわすために大きく息を吸ってタバコの煙を空に浮かぶ白い雲に向かって吐いた。

 「ショウコさんとは今夜会えるんですよね?カズさん次第で失われたものが戻るかもしれませんね。落ち着いたら話を聞かせてくださいね。またみんなで会いたいですね。」

 ノリが何を言いたいかは分かっている。俺も同じことを思っている。けれど、それを口に出すのが怖くて俺は何も言えずにいた。そして、ノリもそれを悟ってくれてショウコとのことは何も聞いてこなかった。そこからは昔の話をして2人で盛り上がった。

 店内に戻るとイスに座ることなくそのまま上着を羽織った。そのままノリにお会計をお願いした。ノリはお金はいらないと言ってきたが俺も頑なに譲らずに会計を済ませた。

 ノリに別れを告げて店を出るとだいぶ陽が傾いていた。いつもの場所か、ショウコと俺がデートする時の待ち合わせ場所はいつも同じだった。待ち合わせ場所へ向かう足を一歩ずつ踏み出すたびに少しずつ気持ちが昔に戻っているのが分かる。昔と変わらない街並みだと思っていたが、よく見ながら歩いていると大分違うことに気がついた。外見はぱっと見変わらない人でも自分の人生を歩んだ分だけ内面は変わり続けていく人間と同じようにずっと変わらない街並みだと思っていても少しずつ常に変化を続けている。そんなことを思いながら昔馴染みの道を歩いていった。

 ショウコと約束した場所に着くと昔から変わらずに立ち続ける一本の木がそこにはあった。晴れの日も雨の日もどんな日に待ち合わせしていてもこの木は常にここに在り続けていた。木を囲むように設置されたベンチは昔と比べると随分と朽ちている。風が吹くたびに葉っぱが擦れあって奏でる優しい音が好きだった。風が吹いた。あの頃と同じ音を奏でた。この音だけはずっと変わらずにここにあったんだな。目に見えないけれども昔から変わらないものを感じた。その音につられて俺はいつも座っていた場所に腰掛けた。ここに座って交差点を渡ってくるショウコを今かと待ちわびていた自分を思い出しては今もショウコを待っている自分に思わず1人で笑ってしまった。携帯も無かった頃の待ち時間ほどワクワクするものは無かったなと今では思う。周りを見渡すと待ち合わせしている人たちはみんなスマホの画面を撫でては眺めているばかりだ。俺も今では待ち合わせの時間までスマホを眺めて時間を潰すことが殆どだ。待ち合わせ時間までの暇つぶしにはスマホゲームやSNSのチェックをする時間には丁度いいかもしれない。けれど、今ショウコを待っているこの時間にスマホを見ないでいるだけで、これからの楽しい時間に向けて自分の気持ちが楽しくなってきているのが分かる。たまにはこんな過ごし方もいいなと思いながら、交差点にショウコの姿が現れるのを待ちつつ昔は無かった駅前に立っているビルを眺めていた。

 「カズ君!」

 電話で聞いた声がいきなり聞こえてきた。俺は驚いて背筋がピンとなった。声がした斜め後ろを振り返るとそこにはショウコが立っていた。

 「ショウコ...」

 俺は思わず声を漏らした。そうだ、ショウコはたまに俺を驚かすために待ち合わせ場所の交差点を渡らずにもっと手前の違う交差点を渡ってきて俺の背後から声を掛けてくることがあった。久しぶりの再会だというのに早々に一本取られた。普段は優しくて物静かなのにこういういたずらっ子な一面もあるところに俺は惹かれていた。

 「驚いたでしょ?久しぶりね。」

 ショウコは俺をつま先から頭のてっぺんまで見ながら言ってきた。

 「驚いたよ。よく後ろ姿でも俺だって分かったね。」

 俺もショウコを見ながら返した。ショウコは昔と変わらずに綺麗なままだった。きちんと自分の人生を丁寧に生きてきたような年相応の品格も備わっていた。さらさらとした黒髪のセミロングに凛とした顔立ちは昔と殆ど変わっていない。

 「カズ君は全然変わってなかったもん。このベンチに座って待っている時は必ず手を組んで両肘を太ももに乗せて前屈みになっているんだもの。最初はカズ君が分からなかったらどうしようと思ったけれど、少し遠くに昔と変わらない姿勢で待っているカズ君を見つけたら昨日のことのようにここで待ち合わせしていたあの頃を思い出したよ。」

 そう言ってショウコは笑った。

 「そうか。俺もここでショウコを待っている時に昔を少しずつ思い出していたよ。この木だけは相変わらずここに在り続けていたんだな。」

 俺はそびえ立つ木を見上げながらつぶやいた。

 「そうね...。実はね、この木はもう老木でこれから予定されている駅前の再開発の時には切り倒されちゃうらしいのよ。だから、もしかしたらカズ君が見れるのは今日が最後かもね。」

 ショウコも木を見上げながら少し寂しそうに言った。今も雄々しくそびえ立っていると思っていても昔よりは老いているんだな。形あるものに永遠は無いんだと思い知らされた。あの音も聞くことができなくなると思うとより一層寂しさが込み上げてきた。俺は思わずスマホを取り出して目の前の木を撮った。

 「さ、じゃあ行きましょう。」

 ショウコはそう言って予約をしたレストランの方向を向いた。俺はスマホをポケットに入れてショウコの隣へ並んだ。歩き始めた2人の歩調は昔と変わらずに息がぴったりと合った、早すぎず遅すぎず2人の丁度いいペースがお互いの丁度いいペース。付き合い始めた頃は緊張しすぎて横にいるショウコを見ることもできなかったが、時間が経つたびに自然とショウコと並んで歩くのも緊張することが無くなった。今日は付き合い始めとは別の緊張を感じながらショウコの横を歩いている。最近のお互いの仕事のことや休日の過ごし方など他愛ない会話をしながら歩いていると他の女性といる時よりも自分が自然体でいることに気がついた。

 目的地であるレストランに着くと店内は少し混んでいた。ここは2人の記念日やお祝い事があるたびに使っていたレストランで昔はもっとお客さんも少なくてこじんまりとしていた印象だった。しかし、今日は若いカップルや女子会と思われる集団で賑わっていた。

 「ここも随分と変わったわね。」

 ショウコは店内をキョロキョロと見回しながらそう言った。ウェイターがやって来ると2人を見て声を掛けた。

「お久しぶりですね。」

 年齢は40代くらい、名前はアキラさん。2人の記念日の時に店を予約すると毎回このアキラさんが対応してくれた。行きつけのバーのマスターのユウジさんとどこか雰囲気が似ていて俺もショウコも大好きだった。久しぶりのアキラさんは昔と同じように髪も綺麗にセットしていて髭も綺麗に整えていた。昔と違うところは白髪がところどころに混じっているくらいだ。

 「アキラさんお久しぶりです。席、空いてますか?」

 「ええ。ちょうどいつもの席が空いてますよ。どうぞ。」

 アキラさんはそう言って俺たちをいつもの席へ案内してくれた。10年以上も前の事なのに足が覚えている。案内された席に着くと俺とショウコは上着を掛けて椅子に座った。

 「いつも通りでいいかしら?」

 ショウコは俺に訊ねてきた。10年以上ぶりに来たのに”いつも通り”というフレーズが自然と出てきた事に俺はクスッと笑ってしまった。

 「そうだね。そうしよう。」

 2人の”いつも通り”とはここのお店の一番人気の”今日のディナーコース”だ。アキラさんにお願いすると何も言わずに軽めの赤ワインをグラスで持ってきてくれた。

 「それじゃあ、乾杯。」

 俺とショウコはグラスを傾けた。何に対しての乾杯なのだろうか、そう自分に問いかけながらゆっくりと味わった。次から次へと運ばれてくるコースの料理を2人で食べながら、お互いの今の仕事の話をしていた。俺が相変わらず海外を転々としている時、ショウコは新卒で入社した会社でずっと頑張って今では次期部長候補とまで噂されているらしい。コース料理の最後のデザートも食べ終わって、3杯目のグラスワインを2人でゆっくりと楽しんだ。

 「手紙、読んだよ。」

 俺は話を切り出した。ショウコからの手紙を胸ポケットから取り出してテーブルの上へ置いた。ユウジさんから受け取った時は綺麗だった手紙も何回も読み返したせいで少しくたびれてしまった。それでも俺はいつもジャケットの胸ポケットにこの手紙をしまっていた。

 「目の前に出されると恥ずかしいわね。」

 少し照れくさそうにショウコは笑った。

 「どうして今もショウコは1人で...」

 「それはお互い様。私が1人の理由は手紙に書いたはずよ。カズ君はどうして今も1人なの?今日も私と会ってくれたし変に期待しちゃうわ。」

 「俺は...」

 そう言って今までを回顧しながらショウコに話し始めた。

 ...2人の出会いは20年近くも前の出来事だった。カズ坊たちも通った丘の上にある高校に通っていた俺とショウコは高校2年生になって初めて一緒のクラスになった。当時、俺はサッカー部のキャプテンをしていてショウコは吹奏楽部でクラリネットのパート長をやっていた。その頃の吹奏楽部は県大会でも勝ちはじめていた。俺の入っていたサッカー部も全国大会まであと一歩のところまで実力がついてみんな練習に熱が入っていた。俺もショウコも夜遅くまで部活をやっていて、同じクラスになってからは帰る方向も一緒だったので部活帰りに鉢合うと2人で下校することが多くなった。クタクタになっての帰り道でもショウコと話す時間は疲れを忘れるくらい楽しかった。その頃からショウコはいつも俺の話を優しく聞いてくれた。そんな俺がショウコを好きになるのに時間はかからなかった。

 ある日、俺はショウコを連れて海へやってきた。ここは地元の人でも知っている人が少ない穴場スポットで、何か嫌な事があるといつも1人で来ていた。俺もこの場所を知ったのは偶然で、黒猫に誘われて辿り着いたのが最初だった。

 勇気を振り絞って誘ったがなかなか会話を切り出せずにいた俺はショウコの隣に座って海を眺めているだけだった。ヨシっと心の中で気合を入れてショウコに思い切って告白をした。全身から汗がじわりと出ているのが分かった。ショウコは静かに首を縦に振ってくれた瞬間、目の前に広がる海がキラキラと輝いた気がしてこの世界が一瞬にして素晴らしいものだと思った。その後も2人でずっと海を眺めながら他愛もない話をして楽しんだ。夕陽も海に沈みかけた頃、俺とショウコは2人で手をつないで来た道を戻っていった。路地裏の狭い道は人1人が通るのがやっとの幅だったが俺はショウコの手を離さないまま歩き続けた。路地裏を抜けて通りに出るとオレンジ色に染まっていた世界は少しずつ夜を深めていた。

 ショウコの手は小さく温かく、優しく握れば握り返してくれるのが愛おしかった。その頃はまだ愛おしいという表現を知らなかった俺は何か言葉にならない心地良い気分に包まれていた。 

 それからも部活帰りで一緒になった時だけ彼氏と彼女の関係を2人で大切にした。お互いに誰かに言いふらすようなタイプでもなかったし、部活の仲間や友達からも余計な詮索はされなかったので、俺もショウコも家族に少し話しただけだった。土日も殆ど部活の練習が入っていたので、ちゃんとしたデートは長期休みの時くらいにしかできなかった。

 高校3年生になって俺もショウコも部活を引退して落ち着く間も無く受験生活が始まった。ショウコは昔からの夢である出版社に就職率が高い大学や学部を探していた。俺は特にやりたい事も夢も無かったので、周りの友達も志望していた経営学部に行ってみようとぼんやりと考えていた。

 受験生としての日々は部活動をやっていた時よりも忙しかった。俺は部活動に明け暮れていたせいで勉強はすっかりおざなりになっており、どこの大学を志望しても合格判定は常にEだった。そんな俺を見かねたショウコは毎週末に俺に勉強を教えてくれる時間を設けてくれた。

 「いつも勉強を教えてくれてありがとう。ショウコには迷惑掛けっぱなしだよ。何か俺にできる事があれば言ってね。何でもやるから。」

 「いいの。気にしないで。勉強って誰かに教えている時が一番身につくらしいの。でも、お願い事は大切に覚えておくね。いつか使う時が来たら、絶対にお願い聞いてね。」

 そういえば、そんな会話をした記憶があったな。ショウコは自分からわがまま言ったりする子じゃないから、あの時のショウコがやけにお願い事に拘っていたのは今でも覚えている。あの後に、ショウコからその“お願い事”をされたかは正直全然思い出せない。きっとショウコの控えめな性格からすると、何か美味しいスイーツでもねだったくらいだろう。

 ショウコに勉強を教わった甲斐もあってか夏頃から成績は一気にグングンと上がってきて、とうと第一志望の大学も合格圏内まで捉えてきた。その後も受験勉強を続けていって受験日を迎えた。

 俺の受けていた大学の結果発表が出始めて滑り止めの大学は何とか合格していた。第一志望の大学の合格発表の日、俺はショウコと一緒に見に行った。結果は、合格。人生で五本の指に入るほどに嬉しい出来事だった。ショウコも涙目で良かったねとずっと繰り返し言ってくれた。担任の先生に報告すると大いに喜んでくれた。ショウコも第一志望の難関大学に見事に合格して、掲示板に貼り出されていた。2人で合格祝いに駅前のカフェで大きなパフェを注文して祝いあった。大学では離れ離れになってしまうが、それでも今までと変わらずに付き合っていこうと誓った。

 大学に入ってのキャンパスライフはとても楽しかった。大学になってもサッカーをやりたかった俺はサークルではなく体育会系のサッカー部へ入部した。授業と授業の間に時間があればトレーニングルームで自主練をして、全員の授業が終わる頃から部活がスタートする。土日も部活があって高校の頃よりも忙しいのではないかと思ったこともあった。通っていた大学は一部リーグに残り続けるような強豪で練習もハードだった。ショウコは大学では吹奏楽のサークルに入って、サークルの無い日には小さい頃からの夢だった雑誌の出版社へインターンをした。その当時は日本でもインターンが少しずつ根付いた頃でショウコの熱意もあってインターン採用に合格したそうだ。こうしてまた2人はお互いの時間を自分の好きな事や夢のためにつぎ込んでいたが、それでも2人の関係は変わらなかった。俺の試合がある日にはショウコは友達と必ず来てくれたし、俺も音楽センスはまるで無かったけれどショウコのサークルが出演する定期演奏会には必ず足を運んだ。忙しいスケジュールの合間を縫ってデートも重ねていった。口にはしなかったけれどお互いにこのまま将来は結婚するだろうと思っていた。

 内定先も無事に決まって、大学4年生の冬にショウコへ改めて告白をした。

 「ショウコ、社会人になって収入も安定したら俺と結婚してほしい。」

 レストランで食事を終えたタイミングでそう伝えた。ショウコは笑顔で”はい”と言ってくれた。就職氷河期と言われていた時代が終わりを迎えつつあった頃だったが、俺は部活のOBが働いている大手ゼネコンに入社することが決まっていたし、ショウコも小さい頃からの夢だった出版社への内定が決まっていた。このまま行けば人生全てがバラ色だと思っていた。その後に妹のカナエやダイスケたちも合流して6人で朝まで飲んだのは今では良い思い出だ。

 4月になって社会人になった。慣れないスーツ姿で日々ひたすら先輩社員と一緒に現場を走り回る日々が続いた。体力だけが取り柄だったので俺はしんどいながらも続けていたが、夢を語り合った同期たちは一人また一人と静かに辞めていった。特に目標も無く入社をした俺だったけれど、多くの人が関わりながら形に残るものを作るこの仕事にやりがいを感じていた。それでも仕事内容はヘビーな事も多くて、その頃はデートでショウコに会う度にショウコに仕事の愚痴を聞いてもらっていた。ショウコも憧れの出版社に入ったものの噂通りの仕事の大変さに押し潰されそうになっていたのに、俺の前ではそんな姿を見せることは殆どしなかった。そんなに大変だと知ったのも共通の友人と飲みに行った時に、その人からショウコの愚痴を聞いたくらいだった。

 仕事の要領も徐々に分かってきた頃、すでに入社して3年目だった。会社の方針で海外展開に力を入れると社長の年度挨拶で聞いて、その事業のメンバーに自分が選ばれるとは全く思っていなかった。だから、上司に呼び出されてその旨を告げられた時には青天の霹靂だった。実際に最初の赴任地に飛び立つのは半年後からだったが、俺には色々と準備する時間が足りなかった。そして、その頃から俺とショウコは上手くいかない日々が続いていた。

 平日はお互いに忙しくてメールの返信も疎かになりがちになっていた。デートの約束をしても、俺が現場から緊急の呼び出しがかかったりショウコも打ち合わせがいきなり入ったりして、ドタキャンする回数も増えていった。俺はショウコと結婚して幸せにするために仕事を頑張っているはずだったのに、いつの間にか仕事のせいでショウコをないがしろにしていた。そんな自分に気づいた時には既に手遅れになっていた。ショウコの前で取り繕うとすればするほど2人の関係はぎこちなく歪なものになっていった。そうして月日だけが無情にも過ぎていき、初めての海外赴任先への異動まで残り3ヶ月になった。

 ある日、ショウコと2人でデートをしていた時に自分でも思わず一つの質問をした。

 「俺と一緒にいて楽しい?」

 そんな事を聞いたのは付き合ってから初めてだったと思う。ショウコは驚きながらも俺と一緒にいるだけで幸せだと答えてくれた。でも、その時には俺の心の中ではショウコとの今後の関係について答えは出ていた。このまま2人の関係が続いても俺はショウコを幸せにできないと分かっていた。

 そして、その1ヶ月後くらいにショウコといつものようにデートをして、最後にいつもの待ち合わせ場所のベンチで2人で座って話をしていた。俺はショウコの方を向いて話を切り出した。

 「ショウコ、俺と別れてくれ。」

 ショウコは突然の別れ話にショックを受けていた。正直、別れる理由なんてどうでもよかった。ただ、幸せにできないと言ったら優しいショウコのことだからきっと余計に我慢をしてしまうと思った。それほどに心優しい素敵な人だから。だから、俺はショウコに幻滅されて綺麗さっぱり別れた方がいいと思い、職場の後輩と浮気をしていてその子と付き合いたいと嘘をついた。ショウコはそれを聞くと黙って両目に涙を浮かべた。仕事が忙しいからといって俺との時間をないがしろにしたせいだと涙をこらえながら言い、ひたすら俺に謝ってきた。ショウコは悪くない、俺が他の人に目移りしてしまったのが全ての原因だから、と必死に言ったけれどその言葉はきっと何も届いていなかっただろう。

 「いいわ。別れましょう。幸せにね。今までありがとう。」

 そう言うとショウコは立ち上がってさよならを告げて帰っていった。その後ろ姿を見送る間はずっと自分が出した答えはこれで正解だったのかと自問自答した。そして、俺も立ち上がりユウジさんのバーへ1人で行った。

 「おう、久しぶりだな。」

 ユウジさんは俺が席に着くなりボウモアのロックを出してくれた。胸ポケットのハイライトを取り出すとライターで火をつけて一服した。

 「ユウジさん、ショウコと別れたよ。」

 そう言い始めると俺は両目から大粒の涙をポロポロと流していた。今までのショウコとの思い出が一つ一つ走馬灯のように琥珀色のグラスの表面に映し出されていく。初めて一緒に帰った日や勇気を振り絞って告白をした日、眠くなりながらもショウコの演奏している姿をずっと見ていた定期演奏会、部活の試合でゴールを決めた時にショウコの方向へ駆けていった事、2人で書き綴った物語の1ページを頭の中でゆっくりとめくった。きっと自分はこれからもショウコ以上に素敵な人に出会うことはないのかもしれないと思った。最初から最後まで俺の身勝手にショウコを付き合わせてしまっただけだと思うと、俺はショウコに何もしてやることができなかったと悔やんだ。でも、一回別れを切り出したのにすぐにやり直したいと言うなんて言語道断だし今更どういう顔をして会えばいいのかもう分からなかった。少し落ち着いてユウジさんに今までの全部を話すと、何も言わずにただただ黙って優しく頷いてくれた。

 家に帰ると妹のカナエが1人でリビングにいた。先週、新しい飼い主の元へ行ってしまったタマがいた場所を見つめてぼーっとしていた。ほんの短い時間だったけれど、たしかにいなくなってしまうと寂しいものがある。上着を脱いで冷蔵庫から麦茶を取り出してコップに注いだ。リビングのテーブルに座ってコップの麦茶を飲んでいるとカナエが話しかけてきた。

 「やっぱりタマを飼いたかったなあ。」

 「もう新しい飼い主のところに行っちゃったもんなあ。本当に可愛かったね、でも今更やっぱりうちで飼いますなんて言えないよな。幸せにやっていることを願うばかりだよ。」

 自分で言った言葉に刺さった。まるでショウコと別れた自分に言い聞かせていたみたいだった。これからはショウコが誰かと幸せな人生を歩む未来を願うことしかできない。幸せにする選択肢を自ら放棄した自分がひどく情けなく惨めだった。カナエにもショウコと別れたことを話すとひどく怒られた。あんなに素敵な人と別れるなんて信じられないなどと好き放題言われっぱなしだった。カナエの言葉に返す気力も残っておらず黙ってうんうんと頷くことしかできなかった。

 それからも月日は過ぎていき、いよいよ日本を発つ日となった。見送りには両親とカナエが来てくれてゲートまでついてきてくれた。あれからショウコとは電話もメールも一切しておらず、アドレス帳から消す事ができなかったショウコの名前と今までやり取りしていたメールを携帯に残して日本を旅立った。

 それからの異国の地での仕事は日本にいた頃とは比べものにならないくらいの苦労があったが、それ以上に自分の仕事にやりがいを感じる毎日を過ごした。もしかしたら、ショウコと別れた自分の選択を必死に正解にするためにがむしゃらに頑張っていただけかもしれないが、いつしかこの仕事が自分の天職だと思えるくらいに充実していた。数年ごとにプロジェクトが一区切りつくと日本へ帰国をして会社の仲間や大学時代の友達、ダイ坊たちと会って近況報告という名の飲み会を開いて盛り上がった。俺は仕事柄ショウコと別れて以降は彼女は一切できておらず、毎回色々な人に早く彼女を作れとからかわれた。そんな冗談に対してはいつも仕事が恋人だと冗談で返した。そして、新しいプロジェクトへ向けてまた日本を発つ。そんな繰り返しをずっとしていた。

 3年前。またプロジェクトが一区切りして日本に帰って実家で寛いでいるとカナエが声を掛けてきた。

 「お兄ちゃん。ショウコさん、覚えている?」

 忘れるわけがないだろう。

 「ああ、覚えているよ。」

 素っ気なく答えた。

 「良かったー!この間ね、ショウコさんと偶然会ったの!」

 「そっか。」

 「興味無いのー?てっきりお兄ちゃんが新しい彼女を作らないのはショウコさんのことが忘れられないからだと思ってたのに。」

 カナエは残念そうに声のトーンを落としながら話した。興味はあったけれど、ここで食いついてしまうと未だにショウコの事を忘れられない未練まみれの男だと思われてしまうのも嫌だったので、ただ素っ気なく返しただけだった。

 「まあ、いいや。もう言っちゃったし!」

 カナエは開き直るように言った。何をしたのかと聞いてもカナエははぐらかして最後まで教えてくれなかった。カナエはダイ坊と最近どうなのかと聞くと顔を真っ赤にしてこっちの質問にも何も答えてくれなかった。これがカナエと最後に過ごした時間だった。カナエはこの1年後に死んだ。

 カナエの訃報を聞いた時にはすぐに日本に戻ることができずに遠い地で涙を流した。あんなに可愛くて生意気だった妹が旅立った。1週間近く仕事を休んで毎日ずっと部屋の中で無気力に過ごしていた。家族というものは本当にかけがえない、それが交通事故で一瞬にして欠けてしまった。正直に言うと葬式に行けなかったのは事実だが、正しくは行きたくなった。会社の同僚たちは日本に帰ってもいいと言ってくれたが、カナエが死んだ事実と向き合う覚悟ができずにいた。だから、交通事故を起こしたリョウさんという人から初めて手紙が来て以降、お互いに手紙をやり取りしていく中で少しずつカナエの死を受け入れることができた。だから、ダイ坊はカナエの命を奪ったリョウさんを恨んでいるけれども、俺は恨んだところでカナエは帰ってこないしカナエが救ったエリという命が続いていることが救いだと思う事にした。それと同時に俺も自分の家族を持ちたいと思い始めた。カナエの死は俺の心に大きな穴を残したけれども、それと同じくらいカナエと過ごした思い出が大切なものだと気づかせてくれた。俺も自分の家族を持って素敵な思い出に囲まれた人生を送りたいと強く思った。その時にいつも頭の中をよぎるのはショウコだけだった。

 そして、今回の帰国。次のプロジェクトは半年程度で終わるらしく、それが終われば上のポストが日本で待っていると告げられた。年齢的にも30代後半に突入したし、そろそろ日本で新しい相手を探そうとしていた。でも、そんな簡単に好きな人なんてできない...。なぜなら...

 「なぜなら、俺の心の中にはショウコとの思い出が今でも輝き続けているからだよ。」

 そう言って、目の前のショウコを見つめた。自分がいかに愚かで子供みたいにわがままを言っているのかは分かっていた。

 「ねえ、お願い事してもいい?高校生の時に”なんでもやるから。”ってカズ君が言ってくれたお願い。...私ともう一度やり直してこれからの私の人生を幸せにしてください。」

 「もちろん。こんな俺で良ければ次こそはショウコを絶対に幸せにする。」

 ショウコはやったーと言って満面の笑みを浮かべた。そうか、受験生の時のあのお願い事はまだ使っていなかったのか。俺は別れ話の時についた嘘と本当の理由を正直に話すとショウコは全て分かっていたよというような優しい笑みを浮かべた。

 「知ってたよ。だって、カズ君が嘘をつく時の癖があるんだもん。だから、嘘だって分かっていたけれどカズ君が決めたことだから仕方ないと諦めた。でも、やっぱり諦めきれなかったからこうしてここに来たの。あれからずっと私の中にもカズ君が居続けたの。だから、もしも今日がこのまま終わったならカズ君を世界で一番嫌いになるように努力しようと思ったの。でもね、そんなことできるならとっくの昔に区切りをつけて今頃は誰かのお嫁さんになっていたはずだわ。」

 誰かのお嫁さんになっていなくて本当に良かった。今まで失われた時間を巻き戻すことはできないけれど、空白の月日をかき消すくらいに2人の思い出で埋め尽くすことはできる。だから、これからはもう二度とショウコの手を離さないようにする。

 「半年後からはずっと日本にいる事になるから結婚しよう。」

 そう言うとショウコは左手の薬指を優しく撫でる仕草をしながら首を縦に振ってくれた。

 「ねえ、今度の休みにカナエちゃんに報告しに行きましょ。私、カナエちゃんにありがとうって伝えたいの。」

 どうして?と聞くと、”女同士の秘密よ。”と言われた。ショウコはそのままお会計を済ませましょうと言ってきたので、言われるがままにお会計を済ませてお店を出た。

 「ユウジさんのところへ今から行かない?」

 ショウコは俺に聞きながらもすでに歩き出した方向はユウジさんのバーのあるほうだった。ダイ坊、俺はやっと昔から動き出したよ。次はお前の番だろう。ユウジさんのバーの扉を開くと、ユウジさんは俺とショウコが手をつないでいる姿を見てニコリと笑った。今日は琥珀色のグラスの隣に綺麗なカクテルが並ぶ。人生は同じ数の出会いと別れがある、でも、一度別れてももう一度出会うこともある。

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