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個性とオリジナリティー 前編


 僕が楽器の個性を引き出すために気を付けていること。
 それは、振動を邪魔しない、ということです。つまり、打面のアタックの振動をどれだけ素直にドラム全体に行き渡らせるか、そこがポイントだと思っています。

 まずは楽器をチェック。パーツ類のネジは緩んでないか?シェルは変形したり、割れがあったりしないか?エッジは滑らか?フープは曲がってない?ヘッドも、凹んだり破れたりしてないか?
 これらはすべて素敵な振動を妨げる要素です。ここで異変があったら、速やかに対処しましょう。困った場合は楽器屋さんに直行。専門店やネットショップもあります。

 ではでは~、準備が整ったならば・・・やってみよう!(よければ皆さんも)。 
 両面のヘッドを一旦緩めてしまって(テンションボルトがグラグラになるまで)、片方の面づつ、ボルトを指でなるべく均等に締めていきましょう。もうこれ以上ボルトが回らないとなったら、ここからチューニングキーで90度か180度など同じ割合で締めていきます。(ずいぶん簡単に言いましたが・・・大変な作業)。

 次に打面ヘッドのボルトに近い場所を指で軽く「トン」と叩きます。このとき裏面の同じ場所も指で触れてみて、振動を確かめます。
 
 振動来ましたか?
 
 振動が来ればOK。来なければ何かが邪魔をしています。
 楽器は本当に問題なかった?では裏面側のボルトを少し廻してみましょう。少しピッチがズレているかもしれません。
 ラグを挟んで裏表のボルトが同ピッチになると「おっ!」とびっくりするくらいの振動があります。 これを一周、すべての箇所が「おっ!」となるくらいに調整します。

 打面を叩いた振動が、シェル内の空気を、シェル自体を伝わって裏面を振動させ、裏面は振動を表面側に押し返す。表面はまた裏面に押し返す。さらに。。。
  
 ドラムに振動という血液が通いはじめます。大切なのは血の流れを良くすること。これは何か特別なものを付け足すのではなく、邪魔なものを取り除いていく、という作業です。血行が良くなると、その楽器の音が生き生きとして、本来持つ、その楽器固有の魅力が素直に現れます。

 さて、ここまでお付き合いいただいた奇特なあなた。叩いてみた感想はいかがでしょうか?

 これが〈両面均等張りで同ピッチのサウンド〉ということになります。どうですか~。とても素直な素晴らしい音してませんか?間違いなく〈使える音〉です。
 
 ・・・・・・だけど・・・次第に・・・「いい音だな~」という感想よりも、「あっ、こういう感じだったら、もっとこうしてみたいな~」というイメージが、アイディアが湧いてきませんか?

 個性は見えた。他の個体との差異は分かった。じゃ、僕なら、私なら、こういう使い方をしてみたい!という事ですよね。

 ここからは次の段階〈オリジナリティ〉の話になります。大切なのは音に対する深いリスペクト。近いうちに書いてみたいと思います。
   


 補足

 他のチューナーさんで、
 シェル自体の湿気(木胴の場合)をドライヤーでとばす、
 ヘッドそのものにドライヤーを軽く当て(一周する)エッジとの馴染みを良くする、
 なんていう技を使われる方もいます。

 すべて、ドラマーが叩いたショットを、いかに邪魔をなくして伝えるかってことなんですね。


 

 
 さぁ、君も邪魔なものを脱ぎ捨ててごらん?

 なんちゃて。

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