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【HIPHOP座談会】2022年 春〜夏にくらった曲

Twitterで、HIPHOPのレビューを書き続けて4年目に突入したドラム師匠です。今回は、Twitter・InstagramでHIPHOPを紹介している PAPA-KIMG さんとの座談会vol.3 をお届けします。2022年春〜夏にクラった曲を3曲ずつ紹介していきます。

PAPA-KIMG:毎回言ってますけど、なかなか3曲に絞れなくて。ます下のプレイリストの15曲に絞りました。ここに入ってるものは本当にクラったものばかりですけど、今の気分で3曲選びました。

▼PAPA-KIMGさんの座談会用プレイリスト 15曲

▼ドラム師匠の座談会用プレイリスト 15曲

ドラム師匠:PAPA-KIMGさんがどれを選んだか楽しみです。では、まずは私がクラった曲を紹介します。

※文章のリズム感を優先し、アーティストへの敬称は略しています。

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ドラム師匠がクラった曲①

炒炒 / 19jail(Prod. Homunculu$)

ドラム師匠:私が紹介するは、和歌山のフィメールラッパー 炒炒(チャオチャオ)です。

PAPA-KIMG:俺もこれクラいましたよ〜。

ドラム師匠:炒炒が良かったのはもちろんのこと、Homunculu$ (ホムンクルス)の一連のプロデュースワークも良かったです。Homunculu$は、和歌山を拠点に活動してて、TOFU とか MIKADO 、最近だとラッパー 7(ナナ)のプロデュースで注目を集めています。

PAPA-KIMG:炒炒は謎が多すぎですよね。オートチューンもかかりまくっているし。

ドラム師匠:そうなんですよ。私も最初に聴いた時、声は女性なんだけど、リリックの主語が「俺」になってて、性別はどっちだ?って迷いました。7のインタビューで"炒炒という女性ラッパーがいて"という話をしているので、ようやく女性だと確信したほどです。

あとMVでは覆面を被ってて、本人かどうかも怪しいです。楽曲もアジアテイストで国籍不明です。

PAPA-KIMG:独特の雰囲気がありますね。若いのに刑務所に入ってたことを歌っていてハードな内容です。「奴は俺を売るが シャバもムショもビジネス」ってパンチラインにクラいました。和歌山でHIPHOPってあんまり聞かないですよね。

ドラム師匠:和歌山は、まだまだ車社会だと思うんですよ。大阪の泉州エリアのテイストとはまた違うシーンができつつあるみたいです。

あと売り出し方も好きなんですよ。虚像と実像が曖昧で行ったり来たりする感じが。私の勝手な思いですけど、このまま謎めいていて欲しいです。ピーナツ君みたいに。

PAPA-KIMG:そうなんですよね。作り込んだ革の仮面がハマってたんで、私もこのままこの路線で行って欲しいです。

では続いて私が紹介します。

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PAPA-KIMGがクラった曲①

Kawabata Cartel×035 / beginning

ドラム師匠:彼らのことを知りませんでしたが、カッコいいですね!

PAPA-KIMG:クルーの名前は、青森の五所川原市の川端っていう地名から取ったみたいです。僕はBoomBapをよく聴くんですけど、Drillはあんまりハマんなかったんですよ。けど、クルーの名前からなんだこれ?って気になって、音を聴いてクラいました。035ってのも青森のクルーみたいです。

Lit summer」って曲では、レイドバックした曲もやっていて、色々な引き出しがありますね。

ドラム師匠:青森なんですね。だから映像に雪が映ってるのか。メンバーの顔も名前もよく知らなくて、みんな荒削りだけだけどギラギラしてて。そんなクルーってワクワクします。これからどう成長するんだろうって。

PAPA-KIMG:そうなんですよ、一人一人、個性がありますしね。最後のバースを蹴っている Tidy Montana とはDMでやりとりしました。HIPHOPに対して熱い思いがあって、"生き様を曲にする" っていうマインドでやっていている人です。女とヤリたいからHIPHOPをやっている奴らが多すぎて嫌気が差すと言ってました。

ドラム師匠:素敵ですね。MVも硬派です。

PAPA-KIMG:それでいて、音楽に対してすごく謙虚で、さらに好きになりました。ソロでも曲を出しているので、そちらもチェックしてもらえたらと思います。

ドラム師匠:彼らがソロでも名を上げていって、クルーの全貌も明らかになってくるのは好きな展開です。伸び代しかない。情報がなさすぎて今回紹介するのをやめたのですが、静岡の8ball gangってクルーも、得体の知れないカッコよさがありました。

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ドラム師匠がクラった曲②

YTG / 当然HIGH

ドラム師匠:次に私が紹介するのは、ゆるふわギャングやJNKMN率いる謎の集団・JODYのメンバー YTG です。この人のフローが独特で、語尾を言い切らないというか、途中で言葉がぐにゃぐにゃになるイメージです。トラックも含めてサイケデリックに脳内が歪みます。

言い切らないもんやから、それってどういうこと?ってどんどん引き込まれてしまいます。

PAPA-KIMG:確かに独特なフローがいいですね。酩酊感というか、なんとも言えない感じですね。

ドラム師匠:飛ばされますよね。さらにこの話に続きがあって、この曲をプロデュースしている LYNN は自身でもラップをしているんです。それでMVを見たら全くイメージが違ったんです。

PAPA-KIMG:イカつい人かと思ったら、確かにイメージが違いますね。ギャル男じゃないですか(笑)人は見かけによらないな〜。ギャップ萌えします。

ドラム師匠:でしょ(笑)どういう繋がりでYTGをプロデュースすることになったのか経緯が気になります。YTGとLYNNを合わせて注目して欲しいです!

PAPA-KIMG:では次に私が紹介します。

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PAPA-KIMGがクラった曲②

写楽,Reo Skaug / Not In Sight (Prod. carefreeman)

ドラム師匠:くー、カッコいい!

PAPA-KIMG:カッコいいですよね。これはもうね、ビートだけで、いやイントロだけで選んでたかもしれない。

ドラム師匠:ハハハハ

PAPA-KIMG:いや本当に、冗談ぬきで。carefreemanが作るビートが本当にヤバくて。滋賀県のビートメーカーで、BUPPONの曲とかプロデュースしてます。

ドラム師匠:以前carefreemanが主催するパーティーに遊びに行ったんです。その時にオーガナイザーの しゅがぁ さんに、「これから絶対にくるビートメーカーです」って紹介してもらって、正直その時はピンときなかったんです。でも、家帰って調べたら、この曲も、あの曲もプロデュースしてる!って驚きました。

PAPA-KIMG:昔からピアノとギターを使っているビートが大好きで、ヤバい曲って電車で聴いてても首が揺れちゃうんですよ。

ドラム師匠:ハハハハ

PAPA-KIMG:俺の中のヤバい曲の基準が、電車の中だろうが、女の子が見ていようが無条件で首を揺らしてしまうものだなって。その最たる例が、この曲です。

ドラム師匠:気持ちいい曲ですよね。気持ちいいと言えば、エビスビーツの曲も気持ちいいんですけど、それよりもっとJAZZYで洗練された心地よさです。

PAPA-KIMG:G-KANKAKUの2人がラップをしていて、俺もGの感覚が欲しいです。Reo Skaugも帰国子女なだけあって、英語の発音もキレイです。

ドラム師匠:写楽 のLiveを見た時、「照明を暗くして下さい」ってリクエストしてました。それで空間を含めた彼の世界観を表現をしてて、凄く良かったです。自分のやりたいことをマイペースに表現してたら、ようやく光が差してきたように思いました。

PAPA-KIMG:あと、MVのスクリーンに映っているのが映画『グーニーズ』なんです。俺の好きな映画で、余計に気になりました。

ドラム師匠:あえて流してますもんね。トイピアノを使っているあたりと関係しているかもしれません。

PAPA-KIMG:幼少期の好きなものとか何か意味があるのかな?世界観とか知りたいです。

ドラム師匠:次に会うことがあれば、質問してみます。それでは私が最後に紹介するのはこの曲です。

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ドラム師匠がクラった曲③

T-STONE / HA-HA feat. Young Dalu |03-Performance|

ドラム師匠: T-STONE が1st Album『Type 1 Diabetes』をリリースしました。そこからMVを出しまくっていますし(10/8現在:5曲)、客演仕事も多くてノリに乗っているアーティストです。PAPA-KIMGさんは、アルバムのジャケットを見ましたか?

PAPA-KIMG:注射器を刺してるやつですよね。

ドラム師匠:そうです。タイトルも"1型糖尿病"って意味で、今回、初めて病名をカミングアウトしました。幼少期にこの病気を患って、インスリンのコントロールのために、ずっと注射を打ち続けてたはずなんです。

PAPA-KIMG:そうですよね。

ドラム師匠:HIPHOPは世の中の不満とか憤りを、音楽にして吐き出すことが多いじゃないですか。で、病気を患った人は常に死と向きあってて、そんな人が抱えている不安とか悩みをポジティブに変換するため、HIPHOPで表現するのは非常に力が宿るなと思いました。

PAPA-KIMG:確かに。HIPHOPで表現している人って、負の部分というか弱みをあえて見せないって人もいます。けど、この人は、あえてそこを出すことがメッセージになっていて感じるものがあります。

ドラム師匠:彼のLiveを見ても、非常に生命力を感じるんです。常に"死"と向き合い"生"を意識してきたから、強さがあるのかと思いました。

PAPA-KIMG:この曲のタイトルも「HA-HA」で、笑い飛ばせということですもんね。

ドラム師匠:生い立ちも含めて、この曲ができるまでのドラマがあるなと思いました。それと偶然やと思いますが、このMVが公開された日に、元Normcore Boyz の Gucci Prince が死去したことが発表されました。

PAPA-KIMG:あ〜、そのタイミングだったんだ。

ドラム師匠:Normcore Boyzって本当に笑顔が似合うクルーだったのに、ギスギスした感じで活動休止になってしまって。Gucci Prince の死因も引っかかりますけど、それでも生きてる以上は笑ってたいなと。色々な感情を含めて強く心に刻まれました。

PAPA-KIMG:それと、最近MVを出しまくってる 03-Performance ってスゴいですよね。YouTubeを開くと「また新しいのが出てる」って頻繁に目にします。出演しているアーティストもすごくツボをついてるし、あのマイクを垂らすスタイルだからMVを量産できるんでしょうね。

ドラム師匠:登録者も1万人を超えた見たいです。MVを次々と出すことで、全国のラッパーを紹介するのは、新しいメディアの形だと思います。

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PAPA-KIMGがクラった曲③

SINK / Lucifer

PAPA-KIMG:最後に私が選んだのは、SINK です。

ドラム師匠:私もこの曲が好きで、レビューを書きました。実は最初に聴いた時、曲調が重いなって通り過ぎようとしたんです。でも、リリックが引っかかって後戻りしました(笑)

リリックに耳を傾けて、歌詞を見ながらじっくりと意味を噛み締める。そんな風に曲を聴くのは久々でした。

PAPA-KIMG:そうなんですよ。僕もイントロをちょっと聴いて「ん!」って思い、シャウトアウトした声に耳が反応して聴き入りました。

ドラム師匠:成功していないからこそ書ける言葉がありますね。

PAPA-KIMG:這い上がってきた感じがスゴいなと思いました。

ドラム師匠:叩き落とされ、叩き落とされ、それでも這い上がる執念すら感じます。

PAPA-KIMG:この人、35歳で決して若くないんですよ。でも、「35 楽勝で間に合う」っていうフレーズがグッときます。SINK名義では今年に入ってから活動したみたいなんですが、それ以前も別の名義でやってたのではないかと推測します。とにかく、ただ者ではない感がスゴいです。

ドラム師匠:リリックに地元の有力者から誘われても断るエピソードがありますしね。あと、このフレーズにグッときました。

In the booth で換金するエゴ
乗せた言葉吐くたびにまた0
以下のマイナスから積む何度も
経験と札束は何度も

「Lucifer」のリリックより引用

自分のやっている活動も、あんまり報われないなって思うことが多くて、どこに向かっているか分からなくなることがあるんです。それでも、もがいてる様が、自分と重なり勇気をもらいました。

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終わりに

ドラム師匠:いや〜(約90分)喋りましたね。

PAPA-KIMG:喋りましたね。好きなことを語ると時間があっという間に過ぎるな。今回プレイリストにした15曲はどれを選んでよかったんで、ぜひチェックしてもらいたいです。

ドラム師匠:この座談会をやってて良いなって思うのは、改めてここ最近の楽曲を振り返るだけじゃなく、曲の良さを伝えるにはどう表現したらいいか考えますから。程よい緊張感があります。

次は年末ですね。2022年のベストを3曲選びましょう。PAPA-KIMGさんは血を流しながら選んで下さい(笑)

PAPA-KIMG:いや〜、それはヤバいな(笑)

ドラム師匠:それでは、最後まで読んでくれた方、ありがとうございました。

PAPA-KIMG:ありがとうございました。



HIPHOPを広めたい一心で執筆しています。とは言え、たまにこれを続ける意味があるのかと虚無感に襲われます。 このまま頑張れ!と思われた方、コーヒー1杯おごる感じでサポートお願いします。自信をつけさせて下さい。