見出し画像

【HIPHOP座談会】2022年 早くもクラった曲

Twitterにて、HIPHOPのレビューを書き続けて4年目に突入したドラム師匠です。私と同じようにHIPHOPを紹介している PAPA-KIMG(パパキムジー)さんとの座談会の第2弾です。KIMGさん、自己紹介をお願いします。


PAPA-KIMG:ドラム師匠と同じく2児の父です。
ツイッター や インスタ で月に20〜30本ほどMVを紹介しています。レビューは沢山書けないので、気になる曲は音源の貯蔵庫 SoundSourcePool にためてます。都内在住です。

ドラム師匠:今回は、【2022年 早くもクラったMV】をそれぞれ3曲ずつ紹介します。

打ち合わせで3曲ずつと言ったのに、KIMGさんから10曲入りのプレイリストが送られてきて「最高か!」ってなりました(笑)

PAPA-KIMG:いや〜曲が決まらなくて、あの10曲から絞りきれてないですけど…聴いた時にクラったかどうかを基準に、無理くり3曲選びました。

ドラム師匠:どれが選ばれたか楽しみです。では私から紹介します。

※文章のリズム感を優先し、アーティストへの敬称は略しています。

──────────────────────

ドラム師匠がクラった曲①

YO-1 / Own Style〜情熱〜


ドラム師匠:KIMGさんは、ラッパー YO-1 (ヨーイチ)を知っていましたか?私はこのMVで知ったんですけど、フォロワーさんに「気づくのが遅い」と言われました(笑)

PAPA-KIMG:僕も完全にノーマークで、このMVで知りました。プロデュースしている SKINNYBEATS は知っていて、最近いいと思ってました。

ドラム師匠:いいですよね。SKINNYBEATS は、BLOCKTVっていう静岡をフックアップする動画に携わっているビートメーカーです。

静岡の若手ラッパーの曲でカッコいいと思ったら、大抵彼の名前がクレジットされています。

PAPA-KIMG:この曲は、矢継ぎ早なラップがいいですね。

ドラム師匠:舌が高速で回転する感じが好きなんです。それでいてフローに抑揚があって、ゆらゆら揺れているという。若かりし頃の TWIGY を思い出しました。

PAPA-KIMG:YO-1 は苦労人というか、年齢的にけっこう上の人ですよね?

ドラム師匠:そうです。30歳でようやく1stアルバムをリリースしました。リリックに「ラッパーは金にならない」って陰口を叩かる描写があって、それでもHIPHOPを続けているところに胸打たれました。

PAPA-KIMG:地方にはまだまだいるんですよね。これぐらいのキャリアがあっても全然スポットライトを浴びてなくて。でも、腐らず活動してるって人が。だから(HIPHOPを掘るのは)面白いんです。

続いて私が紹介します。


▼「Own Style〜情熱〜」が収録された1stアルバム『Patriotism』

──────────────────────

PAPA-KIMGがクラった曲①

WILYWNKA / Big City Roller feat. KID PENSEUR


PAPA-KIMG:以前から KID PENSEUR に注目してて、「Training Days」とか「Amen feat. o.d」をリリースしたのは10代でしたけど、ヤバいな、絶対クるなってチェックしてました。師匠もレビューを書いてましたよね?

ドラム師匠:はい。どえらい若手が出てきたと思ってレビューしました。


PAPA-KIMG:もう顔がね、ラッパー顔なんですよ。

ドラム師匠:見た目で判断しちゃいけないですけど、顔というか面構えを見ればラップが良いか悪いか大体分かります(笑)

PAPA-KIMG:ジャニーズ系の美男子と言われるカッコ良さではないんです。けど、顔つきとか服装にシンパシーを感じるんですよね。そんなKID PENSEURを WILYWNKA がフックアップしているのが熱いです。

あと、WILYWNKAの懐の広さを感じます。変態紳士クラブ をやりつつ、BoomBapもやるし、Chillな曲もやるし、Trapもしています。あれだけメジャーで活躍してても、魂を売った感じがしない。

ドラム師匠:確かにセルアウトといった悪口を聞かないですね。HIPHOPレーベル 1% からリリースしてますし。変態紳士クラブがメジャーでも売れているから、ソロではゴリゴリのBoomBapをしてバランスを取っていると思います。

PAPA-KIMG:MVのコメント欄を見ると、変態紳士クラブの流れでこの曲を聴いて、KID PENSEURを初めて知って"ヤバい"って書いている人が多かったです。フックアップがちゃんと機能しています。

ドラム師匠:変態紳士クラブはソフト層まで聴かれるようになっています。その内の何割かがHIPHOPにハマってくれたら、シーンの裾野が広がっていきますもんね。

PAPA-KIMG:あと、映像では後ろに STICKY BUDS も映っているのもいいなって。

ドラム師匠:彼もラッパー顔ですよね。いい顔してます。では次、私がクラった曲を紹介します。

▼「Big City Roller」が収録された7曲入りEP『NOT FOR RADIO』

──────────────────────

ドラム師匠がクラった曲②

RYKEYDADDYDIRTY / ALL GODS BLESS ME


PAPA-KIMG:これか!これはヤバい!ヤバすぎる!この曲はみんな知ってるだろうから敢えて選ばなかったんです。

ドラム師匠:私はこれをKIMGさんと語りたくて選びました。RYKEYDADDYDIRTY が刑務所から出てきてからリリースしたMV「蜘蛛の糸」「CRY NOW SMILE LATER」がどれも凄いんですよ。

PAPA-KIMG:刑務所の中で書いた曲ですよね。

ドラム師匠:20曲分のリリックを書き溜めたってKAI-YOUのドキュメントで言ってました。


PAPA-KIMG:ラッパー達が、"RYKEYほど朝から晩までラップしている人はいない"って言ってますもんね。ラッパーと呼ぶべき人です。

今回、刑務所に何の罪で入ったかはパーソナルな問題なので、僕らはそこを語る必要はないと思います。ただ一発で(気持ちを)もっていかれるフックを何曲も作っていて、音楽家としてスゴいですよね。

ドラム師匠:確かに、出所してから音楽と向き合う純度が上がりました。

PAPA-KIMG:リリックに関しては、自分の置かれている状況を俯瞰して書いていますよね。「幸せにして欲しいあの子」というフレーズは、奥さんのことか、娘さんのことかは分かりません。この一言で犯した罪が償えないことは分かっているはずです。でも、これだけは言わせてという気持ちが現れています。

ドラム師匠:彼は刑務所を"精神と時の部屋"と言ってますし、自分自身について何度も何度も考えたのでしょうね。名前も"RYKEY"から"RYKEYDADDYDIRTY"に変え、名前を自ら汚しています。

私がリリックで良いと思ったのは、「神様がいるのなら わがままを言わせて」の後、「幸せになりたいのさ俺も」と素直な気持ちを表現している所です。普通は、他人からどう見られるかとか、恥ずかしいって思い、このフレーズを却下すると思うんですよね。でも、ちゃんと歌詞に刻んでいます。正直すぎるゆえの危うさがあって、そこがまた魅力です。

PAPA-KIMG:確かに表現の突き詰め方が、RYKEYらしいですね。

ドラム師匠:それを象徴する出来事があって、KIMGさんに見てもらいたい動画があります。ライブでこの曲を歌った時に、RYKEYが泣いているんです。刑務所でどんな思いで過ごしたか伝わります。


▌被害者がいて、悲しい思いをしているのに…

PAPA-KIMG:確かにグッときますね。ただ私は、こういう曲を伝える難しさも感じています。

別のアーティストなんですけど、刑務所から出てきたことを歌った曲があってレビューを書いたんです。そしたら、「被害者がいて、悲しい思いをしているのに、よく名曲だなんて言えますね」っていうコメントをもらいました。

返答はしてませんが、確かにそうだなとは思いました。

でも、僕が発信しているのはパーソナルなことじゃなくて、そういう所から這い上がるというメッセージを受け取っています。一度過ちを犯した人でも立ち直れるってことを伝えたいです。

ドラム師匠:そういった人達を受け入れるのがHIPHOPですし、一度貼られたレッテルを覆すのもHIPHOPですから。

KIMGさん、次の一曲お願いします。

▼CDの購入はこちらから

──────────────────────

PAPA-KIMGがクラった曲②

TENOHILLA / 誇


PAPA-KIMG:TENOHILLAは、RepYourSelf という東京のクルーからできたラッパー W@R とビートメーカー RYSKU のユニットです。

ドラム師匠:カッコいいですね。数年前はRepYourSelf の名前をよく目にしました。若手なのにBoomBapに本気で取り組んでいるなって。でも、しばらく名前を聞かなくて、正直存在を忘れていました。

PAPA-KIMG:このTENOHILLAは10曲入りの『掌』ってアルバムをリリースしており、本格的に動き出したようです。映像を担当しているMESSが、意外なことに 藤井風のMVを撮っているんですよ。

ドラム師匠:えっ!?藤井風って紅白に出てた人ですよね?

PAPA-KIMG:そうそう。ウチの嫁が 藤井風 が大好きで、「あなたMESSって知ってる?HIPHOP系のディレクターみたい」って言われて調べたら、RepYourSelfだ!ってなりました。しかもゴリゴリのHIPHOPをディレクションしてるという。

▼MESSこと召田湧真の映像作品を紹介するHP


PAPA-KIMG:このビートのクオリティ、ヤバくないですか?爽快感というか、街を闊歩(かっぽ)したくなると言うか。朝靄の雰囲気がいい感じです。

ドラム師匠:女性ボーカルのサンプリングが心地いいです。トラックは爽やかなのに、ラップではもがいていて。それでも光は見えている感じがします。

PAPA-KIMG:再生回数を見るとまだあまり知られてないと思うので、注目して欲しいですね。


▼購入・各種配信はこちらから

──────────────────────

ドラム師匠がクラった曲③

G-KANKAKU / JAMAN


ドラム師匠:私が最後に紹介するのは、G-KANKAKU のマイクリレーです。ビートは Leo Iwamura で、もうイントロだけでもヤバいの確定ですね。頭で解析できないですが、いわゆるハイハットではない高音がグルグル回る感じでヤラれます。

PAPA-KIMG:確かにこのビートはヤバい!何の音って言ったらいいんですかね?カシャ・カシャ鳴っているのが、インドネシアとか東南アジア系の民族楽器っぽいんです。仏教的な雰囲気もあって。

ドラム師匠:そして、どのラッパーもカッコいいんですよ。

PAPA-KIMG:邪魔しない個性というか、それぞれがいい感じですよね。

ドラム師匠:S-kaine はヘッズの間で有名だと思いますが、私も数名知らないラッパーがいました。これだけカッコ良くても、現場(クラブ)に通っていないと分からないレベルだと思います。それだけ関西のアンダーグランドシーンは奥深いです。

PAPA-KIMG:最近、ヤバいなと思うアーティストが関西の人が多くて、特に大阪。俺、大阪の人より大阪のアーティストのことを詳しいんじゃないかと思います。負けない自信はあります(笑)

ドラム師匠:確かにKIMGさんはよく紹介してくれていますよね。特に南大阪を。ちなみにG-KANKAKUは兵庫が拠点です。

PAPA-KIMG:G-KANKAKUも謎めいてますよね。「Gの感覚を持つクリエイター達」ってどういう感覚なんでしょう?

ドラム師匠:分かりません(笑)。中心メンバーである KAKKY っていつもニコニコしているんですよ。私にも丁寧に挨拶してくれて。そんな人柄だから、引き寄せらるように人が集まってくるのはないかと思います。

PAPA-KIMG:へー、そうなんだ。YouTubeのコメント欄の質問にも丁寧に答えてますね。僕もこの曲で知らないアーティストを知れました。最初のVerseでベレー帽被ってラップしている Ridho Louis (リドー ルイス)にヤラれました。写楽って確かCracks Ampのメンバーですよね。

ドラム師匠:そうです!っていうかCracks Ampがスッと出てくるKIMGさんがスゴいです(笑)。今度、G-KANKAKUのライブに行ってくるので、どんな様子だったかまたツイートしますね。

では、KIMGさん、最後の曲をお願いします。

▼購入・各種配信はこちらから

──────────────────────

PAPA-KIMGがクラった曲③

doc flawless / doc flawless

PAPA-KIMG:練馬のラッパー doc flawless です。この曲もディレクターがMESSなんですよ。師匠、doc flawlessは何歳だと思います?

ドラム師匠:この人、知りませんでした。若いですよね。十代かな?

PAPA-KIMG:実は、今年の春に高校卒業したばかりなんですよ。それでこの仕上がりってヤバくないですか?

ドラム師匠:カッコ良すぎます!スケボーのシーンが多いですね。

PAPA-KIMG:この人はスケーターでもあって、スケボーも上手いんですよね。UBJっていう恐らくスケボーを中心としたクルーを引き連れてています。

ドラム師匠:なるほど。後半はスクラッチも擦りまくってます。

PAPA-KIMG:HIPHOPの要素がすごく詰まった作品です。後半、練馬のレジェンド D.O も一瞬だけ映っています。D.Oから認めているんでしょうね。

MV「doc flawless」のワンシーン

ドラム師匠:あ〜あれ、D.Oでしたか!顔を映さない演出が憎いですね。

PAPA-KIMG:首のTATOOをみれば間違いないですね。Tシャツにも"練マザファッカー"って書いてます。

ドラム師匠:D.Oは変に自分の色を付けないというというか、若手の邪魔をしないというスタンスがいいですね。

PAPA-KIMG:doc flawlessも、D.Oに敬意を払いつつ、フックアップしてもらってまで再生回数を上げる意図はないという。互いにリスペクトしていることは、分かる人には分かりますよね。

ドラム師匠:私は教えてもらうまで気が付きませんでした(笑)

▼購入・各種配信はこちらから

──────────────────────

終わりに

ドラム師匠:はい、ということでお互い3曲選んできました。KIMGさん、いかがでしたか?

PAPA-KIMG:3曲という縛りでしたが、他にも紹介したかったな〜。

ドラム師匠:KIMGさんによる、大阪南部のアーティストの紹介も聞きたかったです。

PAPA-KIMG:G−HEZZでしょ。彼らにはクラいましたね。絶対キますよ!恐らくですけど、G−HEZZのメンバーはSNSに疎そうなんです。でも音源はめっちゃカッコいいっていう。周りで支えるチームがプロモーションをしてあげて欲しいですけど、そういう感じじゃないからカッコいい気もします。

ドラム師匠:また次の機会に紹介して下さい。こうやって対談するのは、程よい緊張感があっていいですね。相手に伝えるとなると、もう一度聴き直して、曲の良さを再確認する必要がありますから。

PAPA-KIMG:僕も最初50曲ぐらいに絞って…

ドラム師匠:全然絞れてない(笑)

PAPA-KIMG:そこから10曲に絞って、座談会用のプレイリストを作って、通勤途中で「これは消せないな」とか言いながら聴いてました(笑)
まあ、それが楽しいんですけどね…

ドラム師匠:このペースでいくと、次に対談するのは夏の終わりぐらいですね。記事として出すのは9月上旬の予定で…

PAPA-KIMG:またやりましょう。

ドラム師匠:それでは、最後まで読んでくれた方、ありがとうございました。

PAPA-KIMG:ありがとうございました。

HIPHOPを広めたい一心で執筆しています。とは言え、たまにこれを続ける意味があるのかと虚無感に襲われます。 このまま頑張れ!と思われた方、コーヒー1杯おごる感じでサポートお願いします。自信をつけさせて下さい。