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【進路変更】「止まりたくない」は危険な心理

こんにちは。
自動車ライター/インストラクター/ジャーナリスト/ドラマーの齊藤優太です。

今回は、タイトルにあるとおり、「止まりたくない 」という心理が運転に影響することについて考察します。

車の運転だけでなくバイクや自転車などの車両を運転するとき、「止まりたくない」と考えてしまうケースがあると思います。

ここでは、分かりやすく自動車(いわゆる"車")を例に挙げて「止まりたくない」という心理が危ないということについて考えます。


「止まることができる」と「止まりたくない」は意味が違う

筆者撮影

道路を走行していると、路上駐車や工事現場などの「障害物」に出くわすことがあります。

走行中に障害物などを避けるときは、並行する車線や対向車線にはみ出す形で避けなければなりません。

そして、このときに悩ましいのが、「止まるか」「止まらずに進むか」の選択です。

並行する車線へはみ出す場合は後続車、対向車線へはみ出すときは対向車の有無や速度などによって判断は異なります。

ここまで、当たり前のことしか述べていませんが、私は、この当たり前ができていないドライバーが多すぎるのではないかと感じています。

教習所および道路交通法のルールは?

まず、障害物や工事現場など、やむを得ない理由で進路を変えるときのルールを改めて確認しましょう。

簡単に言ってしまえば、教習所で教わるルール、つまり法律に定められている進路変更についてです。

道路交通法では次のように定められています。

道路交通法 第26条の2「進路の変更の禁止」

1.車両は、みだりにその進路を変更してはならない

2.車両は、進路を変更した場合にその変更した後の進路と同一の進路を後方から進行してくる車両等の速度又は方向を急に変更させることとなるおそれがあるときは、進路を変更してはならない

3.車両は、車両通行帯を通行している場合において、その車両通行帯が当該車両通行帯を通行している車両の進路の変更の禁止を表示する道路標示によつて区画されているときは、次に掲げる場合を除き、その道路標示をこえて進路を変更してはならない。

3-1.第四十条の規定により道路の左側若しくは右側に寄るとき、又は道路の損壊、道路工事その他の障害のためその通行している車両通行帯を通行することができないとき

3-2.第四十条の規定に従うため、又は道路の損壊、道路工事その他の障害のため、通行することができなかつた車両通行帯を通行の区分に関する規定に従つて通行しようとするとき。

道路交通法 第40条「緊急自動車の優先」

1.交差点又はその附近において、緊急自動車が接近してきたときは、路面電車は交差点を避けて、車両(緊急自動車を除く。以下この条において同じ。)は交差点を避け、かつ、道路の左側(一方通行となつている道路においてその左側に寄ることが緊急自動車の通行を妨げることとなる場合にあつては、道路の右側。次項において同じ。)に寄つて一時停止しなければならない。

2.前項以外の場所において、緊急自動車が接近してきたときは、車両は、道路の左側に寄つて、これに進路を譲らなければならない

道路交通法より

条文をそのまま掲載したため、「?」となっている方もいるでしょう。

条文を分かりやすく簡潔に説明すると次のようになります。

【原則】


原則として、むやみやたらに進路変更するのは禁止

【進路変更するときの注意点】


進路変更するときに、次のようになる恐れがあるときは進路変更をしてはならない。
後続車や対向車などの車両に急ブレーキをかけさせる恐れがあるとき
後続車や対向車などの車両が急ハンドルで避けなければならない可能性があるとき

【例外】


進路変更が禁止されている場所であっても次の場合は進路変更してもよい
緊急自動車に進路を譲るとき。
・工事などによって進路変更せざるを得ないとき

条文を噛み砕くと上記のようになります。
※なお、分かりやすさを重視しているため、省略している文言等があります。

基本的に進路変更する側の方が立場が弱い

法を読み解くと、進路変更する車両は、後続車や対向車の進路妨害をしてはならないことがわかります。

簡単に言ってしまえば、進路変更する側の方が立場が弱いということです。

しかし、実際の道路では、「頭を無理やり突っ込めば進路変更できる」と勘違いしているドライバーが多くいます。

本来であれば、後続者や対向車がいる場合、合図(ウインカー)を出して障害物の後ろで待って、タイミングがよいときに進路変更して障害物を避けなければなりません。

確かに、法律に定められている方法で進路変更しようとすると、永遠に進路を変えられない状況があるのもわかります。

だからといって、無理やり車の先端を突っ込んで車の列に入るのは後続車や対向車に迷惑となります。

また、割り込まれた車は、急ブレーキや急ハンドルなどの急操作が必要となり、思わぬ事故を起こしてしまうことも考えられます。

そのため、後続車や対向車などの車両に急操作をさせるおそれがあるときの進路変更は法律で禁止されているのです。

では、教習所でしっかりと教えていないということなのでしょうか?

教習所で教える進路変更

教習所では、2段階(路上教習)のカリキュラムに「進路変更」という項目があります。つまり、進路変更の練習をする機会があるということです。

進路変更の項目では、タイミングの取り方や進路変更の手順など、交通社会に出たときに役立つことを教えています。

ただし、路上教習の中で教えなければならないため、生徒が完全に理解しないまま教習が終わってしまうのが大半です。

また、限られた時間の中で進路変更を習得しなければならないため、「進路変更できないときは止まって待つ」ことを教えられないケースもあります。

免許取得後の慣れで止まることを忘れる

運転免許を取得し、初めて一人で運転しているときに、進路変更しなければならなくなったとき、不安や恐怖など、さまざまな理由からゆっくり進んだり、止まって待ったりするという方も多いでしょう。

その後、徐々に運転に慣れていき、スムーズに走行できるようになると、走行しながらの進路変更もできるようになります。

そして、走行しながら進路を変えた方が時間短縮に繋がり、交通の流れにあわせて進めることから、運転に慣れてくると「止まって待つ」ことをしなくなります。

…というより、「止まって待つなんて効率悪いし、流れを止めてしまうから走りながらの方がいいんだよ!」と思うこともあるでしょう。

運転に慣れることはよいことではありますが、本来のルールや原則を忘れてしまっては意味がありません。運転に慣れているからこそ進路変更のときに「待つ」という余裕やゆとりが必要なのではないでしょうか。

「止まりたくない人」はどんな人?

進路変更したいときの交通状況は、その時その場で異なります。

そして、時々の状況に合わせて、止まるか止まらないかを判断しなければなりません。

では、ここで、読んでいる方に質問です。

走行中、目の前で突然車がハザードを点滅させて止まりました。
偶然にもタイミングが良く、後続車や対向車はいません。
この時、あなたは、止まりますか?それとも、速度を落とさず避けますか?

この質問の答えで、あなたの運転スタイルがおおよそわかります。

そして、追加で、もう一問。

なぜあなたは「止まる」または「避ける」と答えたのですか?

この答えで、あなたがどのくらい危険を予測しているのかがわかります。

「止まる」と答えた方

止まると答えた方は、比較的怖がりで慎重な運転をしているのではないでしょうか。
また、止まれる状況であれば、避けるより止まるという選択をすることのほうが多いでしょう。
ただし、減速ばかりしたり、止まりすぎたりすると、周りの交通の迷惑になったり、通行を妨げになったりすることもあるので、周囲の状況に目を配りながら流れに合わせた運転をするようにしましょう。

「避ける」と答えた方

「避ける」と答えた方は、なるべく止まらずに進み続けたいと考えているのではないでしょうか。
また、止まれる状況であっても、止まりたくないと考えていることが多く、多少無理をしても進路変更をしたり信号を通過したりする可能性が高いでしょう。
運転がある程度できるからこそ、周囲の交通に対しての気配りや配慮をしながら、他車のことまで考えた運転をするとよいでしょう。

条件を追加して同じケースの進路変更を考える

では、同じシチュエーションで条件を追加して、障害物を避けることについて考えてみましょう。

もし、先ほど質問した時と同じ状況で次のいずれかに該当していたら、あなたはどうしますか?

・路面が凍結している
・路面に砂利や落ち葉などが散乱している
・濡れた路面を走行している
・マンホールや橋の継ぎ目などを走行している

これらのいずれかの条件が加わったり重なったりしたら、、、
止まりますか?
避けますか?

ここで、一番最初の質問の答えを思い出してください。

おそらく、先ほどの質問で「止まる」と答えた方は、条件が追加されても止まれる可能性が高いでしょう。

一方、先ほどの質問で「避ける」と答えた方は、止まることができなかったり、避けきれなかったりするのではないでしょうか。

なぜなら、「止まる」と答えた方は「止まれる状況なら止まる」という意識があり、いつでも止まれるよう足をブレーキペダルに構えている可能性が高いからです。
しかし、「避ける」と答えた方は「止まりたくない」という心理から足をブレーキペダルに構えていない可能性が高く、いざというときのブレーキが遅れる可能性が高いです。

このように、障害物への対応に対する質問をするだけでも、ドライバーの心理や運転行動は、おおよそわかります。

※なお、ここで挙げた行動や心理は、あくまでも一例に過ぎません。本当の心理やドライバーの考えはもっと複雑です。

最も有効な方法とは?

筆者撮影

では、障害物を避けるときは、どのような運転行動をするのが良いのでしょうか?

ここでは、教習指導員の資格を保有する私の考えを紹介します。

基本は止まる!ただし・・・

障害物に出くわしたときは、基本的に止まる方が良いでしょう。

ただし、事前に安全確認ができたときは、障害物との安全な間隔を空けて通過しても問題ありません。

もし、安全確認が不十分で少しでも何らかの不安があるときは、止まる構え(ブレーキペダルに足を乗せておく)をしておきましょう。

ここまで読んで「当たり前のことじゃん」と思った方もいるでしょう。

その通りです。

ですが、この当たり前ができない…できていない…しようとしないドライバーが多いのが現実です。

進路を変えるということは、リスクを伴います。

もし、安全確認ができていなかったり、不十分だったりした場合、事故を起こしてしまうだけでなく、周りの車両や人まで巻き込んでしまうことがあります。

そのため、進路変更は、十分に気をつけながらする必要があるのです。

最後に・・・

自動車(車)をはじめ、車両を運転するということは、危険を伴います。

最悪の場合、人の命を奪ってしまったり、財産を傷つけてしまったりします。

このようなリスクと隣合わせであることを自覚しながら運転することがドライバーとしての責任です。

このことを忘れずに、日々の運転をしましょう。

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