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ワクチン -同種造血幹細胞移植後-

同種造血幹細胞移植を受けた後は、感染予防のためにワクチンを打っていくことが勧められます。

移植後に接種すべきワクチン、接種できる時期などあります。

血液の病気の説明、治療内容については、合計すると何時間も主治医から話があったのではないかと思います。

ワクチンについては、主治医からあまり詳しい話がない人も多いのではないでしょうか。病院によっては、通院している病院とは別に、ワクチンを取り扱っている病院へ行かないといけなかったりします。

ワクチンこそ自分で理解して、自主的に動いていかないと、過ぎ去ってしまう危険性があります。

何をどのように打っていけばよいのかをお教えします。

ガイドライン

日本造血幹細胞移植学会が2018年に出している予防接種のガイドライン(第3版)では以下の表にまとめています。

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不活化ワクチン

不活化ワクチンは移植後半年から打ち始めます。慢性GVHDが悪化している時にはまだ打てませんので、慢性GVHDが落ち着いてから打ち始めましょう。

リツキサンのような抗CD20抗体の薬を使って半年は打てなかったり、CD4やIgGといった免疫状態の回復も見て接種開始をきめているので、実際に打ち始める前には主治医に相談してください。

・肺炎球菌

肺炎球菌は移植後半年ではなく3ヶ月から打つこともできます。

プレベナーを3回接種します。その後通常6ヶ月開けてニューモバックスを打ちます。

前回の記事を見てください。

・四種混合

ジフテリア、百日咳、破傷風、ポリオは四種混合で一つのワクチンで打てます。

ポリオは日本では昭和55年の1例を最後に報告はありません。それでも日本全体として、ポリオワクチンをやめると、のちに流行を起こす危険性があります。そのため、日本で報告がなくなっても定期接種 A類疾病に含まれています。

国民のほとんどが免疫を持っていれば、流行は起こらないので、同種移植後にポリオのワクチンを打ってなくても、今の日本に住んでいてポリオが感染することはないでしょう。個人的意見ですが、移植後ポリオの流行地域に行かないなら、ポリオ抜きの三種混合でも特に問題はないでしょう。もしワクチンを受けに行った施設に、四種または三種混合しか置いてないなら、置いてあるものを接種していただければよいかと思います。

百日咳、破傷風は日本でも感染しうるので、受けておきましょう。

(ジフテリアの報告は1999年が最後)

・Hibワクチン

インフルエンザ菌b型は略してHib(ヒブ)と呼びます。冬に流行るのはインフルエンザウイルスで、これは細菌であって、異なる微生物です。

重症になると髄膜炎を起こします。移植を受けていない人でも、寮生など集団生活をしている学生で、集団感染を起こしてニュースになることもあります。

肺炎球菌と同様に莢膜を持つので、好中球ではやっつけられません。移植後の液性免疫が下がっている時に感染しやすいです。

ワクチンを打つことで、感染するリスクを下げられると考えられます。


これら、肺炎球菌ワクチン、四種混合ワクチン、Hibワクチンは同日に打つことができます。そうすることで通院頻度を減らして、効率よく接種できます。

生ワクチン

生ワクチンは免疫が低すぎる時に打つと実際に感染を起こしてしまう恐れがあります。

接種基準としては、移植後2年を経過していること、慢性GVHDを認めないこと、免疫抑制剤が終了していること、輸血やガンマグロブリン製剤投与後3ヶ月以上経過していること、リツキサン投与後6ヶ月以上経過しているなどがあります。

不活化ワクチンと同じで、その他も免疫状態を確認して投与を決めるので、接種前には主治医へ相談してください。

生ワクチンでは麻疹・風疹がメインとなります。

これらの感染症は日本でも流行を認めています。

移植前に実際にかかったり、ワクチンを打って免疫をつけていても、移植を受けるとほとんどの人が免疫が無くなることがしられています。

下の図は、麻疹の免疫がある人が移植を受けた後どうなるかを調べた結果を表しています。二本のカクカクした線がありますが、下側がワクチンによる免疫がある人、上側が麻疹に感染して免疫をつけた人です。

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ワクチンによって免疫をつけていた人は、移植後4年には全員麻疹に対する免疫がなくなっています。

感染したことがある人も、最終的には90%の人が免疫を失っています。

移植後に免疫が残っているか、抗体の測定をされることがありますが、その時点で免疫があっても高い確率でその後免疫はなくなっていきますので、移植から2年経ったらワクチンを受けられることをお勧めします。

麻疹と風疹両方が含まれたMRワクチンというのがあるので、これを2回接種してください。2回目は1ヶ月後に接種してください。

コスト

ワクチンの再接種は自費になります。つまり、移植後のワクチンは自費なのです。

ワクチンは一本1万円近くしますので、すべて打つと15万円ほどかかってしまいます。

市町村によっては、移植後の再接種の助成をしている自治体があります。私が知っているところだと、静岡市がそうです。

接種前に自治体のホームページなどで確認をして見てください。

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