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映画レポ ヤクザと家族 The Family(2021年1月公開)

この映画は「ヤクザと家族」ですが、"ヤクザ映画"では有りません。"家族"の映画です。
この映画があまりに良いので、"ヤクザ映画か"と遠ざけず、沢山の人に観て欲しいので、ノートします。

とりあえず、映画館に行って下さい。これは、大きい画面で世界に入り込んで観るのが、オススメです。
*このノートは、前半は視聴前の方の為の見所、後半はネタバレ有りの小ネタ考察をします。

出演者が全員良い

映画のポスターを見ても分かるように、全員にドラマがあり全員が家族です。それぞれの心情や立場が分かるからこそ、ヤクザという生き方が苦しいです。
主演の綾野剛さんの演技は圧巻ですし、舘ひろしさんや市原隼人さんのオーラの出し方、存在感は半端ないです。

ヤクザ クロニクル(年代記)として描く

時代を1999年-2005年-2019年と描いています。ヤクザ自体の在り方も含めて、義理人情に生きる男気のカッコ良さと、時代の変化(暴力団対策法や排除条例の制定)により変わっていく生活を描いています。
1999年スクーターで爆走していた山本が、2005年ではセンチュリー?に乗り、2019年にトヨタのハイブリッド等に乗るシーンなど、乗り物の変化も印象的でした。

主題歌MVが凄い

この映画は、2019年に撮られたものですが、主題歌のMVは2020年12月28.29日に撮られています。監督は、映画の脚本監督を務めた藤井道人さんです。世界観そのままに、出演者が再集合して撮り、映画のアフターストーリーとして作成されているので、映画を観た後必ず観てください。鳥肌が立ちひろし。
綾野剛×藤井道人×常田大希で「ボクらの時代」20210131@フジテレビでも良い対談をしているので、どこかで探して見てくださいw

ここから、ネタバレを含む考察です。

8

9

3

話したいことが沢山有ります。
◇監督脚本 藤井道人さんについて。
1986年生まれの34才。天才です。穏やかな風貌ながら骨太で反骨精神のある方に思えました。
演技もさる事ながら、脚本と構成でやられました。130分の長さがあっという間に感じる充実感、スピード感と迫力が有りどのシーンにもメッセージが有り見逃せません。
MVの内容も、映画を見終わった後に観ると、観る前とは全く違った感情を湧き上がらせる内容でした。棺は透明で白い煙で満たされており、山本自身は既に冥土の世界にいる。娘さんや仲間たちの姿は山本の理想なんですよね。抜け落ちた14年間、成長を見守れなかった姿を見守り、成長した彼女に許されてハグをする。切ない。葬儀のシーンもスーツ姿がビシッと決まった家族はカッコ良くタバコを吸っている市原隼人に、しびれます。翼くんも真面目に成長している。山本のそう在りたかった世界。

メタファー 監督は、この映画のメタファーを「煙」だとインタビューで話されています。ヤクザが吸っているタバコ、食べ物の湯気、海の中の血の広がり、MVでも砂煙や、身体から出る湯気、特にタバコの煙は、ヤクザの生きにくさ"煙たがられる存在"を、表しています。岩松了さん演じる嫌な警察官が、2019年でアイコスを吸ってるのも、憎い演出です。綾野剛さん演じるけん坊が家族で食べるお味噌汁の湯気は、暖かかったのになあ。穏やかで愛が有った瞬間。。

ヤクザと家族 まさに家族としての繋がりについて考えさせられました。けん坊は、親を覚醒剤で亡くしていて、フラフラしている時に、柴咲組に拾われて生きる場所を貰えた、その繋がりが濃くて熱いモノだからこそ、関係が濃密になる。
それを見ていた翼も、自然とそうなっていくのは、もう環境が家族内部に有るからですよね。あのお店で宿題をしていた翼くんが。。と親目線で心を痛めてしまいます。2019年時代、金髪に白いズボンで、けん坊をリスペクトしているのが、ビジュアルで伝わるのが良かったです。磯村勇斗さん良い演技をしています。今回始めて知ったのですが、映画を沢山観て演技の勉強をされていて、大変知的な方みたいです。年を重ねるのが楽しみですね。尾野真千子さん演じる由香の娘役、小宮山莉渚さんもいい演技しますよね。。最後の翼との対話、泣ける。彼女もヤクザの家族としての苦しみを背負う人生になってしまった。"血縁としての家族"についても考えさせられる。彼女は自分を納得させられるのか。

役者のオーラ クロニクル形式を取っているので、役者は歳を演じ分けなければいけないんですよね。観た方は分かりますが、2005年から2019年の変化、2005年しのぎが沢山有りスーツをバリっと着こなしてキラキラと男前なヤクザ、イケてましたね。打って変わって、何もかもが変わってしまった2019年、あんなに男の色気が出まくっていた人達のオーラはどこへ。。役者って凄いですね。佇まいや声、表情、何もかもがその役の苦労や、ヤクザ自体の衰退を表していて、心だけ14年前のままのけん坊の戸惑いが、そのまま私たちの心に重なって、切なかったです。

三人の女性 普通ヤクザ映画だと、女性が出てくると、愛人や姐さんとしてヤクザに寄り添う女性が描かれてきたと思うのですが、この映画の女性は自立している所が違うと思いました。寺島しのぶさん演じる、愛子は亡くなった組長の奥さんでしたが、焼き肉屋をやっていて、華やかさは全く有りません。子供をおぶって肉を返す。ヤクザとは一線を引きながら、見守る。いい女だ。翼ーお母さん大事にしろよー!
由香も学生から公務員になり、シングルマザーとして健気に働く。Twitter拡散からの結末は、辛さと恐ろしさが渦を巻くスピード感で、観ていて辛かったです。娘さんも普通の学生だったのに、一件の書き込みがキッカケで、転校を強いられる。
ヤクザは肯定出来ませんが、反社会勢力の関係者になってしまった人間は、どうしたら社会に戻れるのか。本人は何もしていないのに犯罪者のように扱われるのであれば、いっそその世界に入った方が楽なのではないかと。考えてしまいますよね。

小ネタ 撮影が静岡の沼津なんですよね。役に立たないヤクザが、一生懸命シラスをとっているのが、笑いどころでした。暴力にもクスリにも転ばないヤクザ。癒し所って事で良いのかしらw

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