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京都で人間とタヌキと天狗は有頂天で舞う(2022.05.08)

アニメが結構好きです。
とは言いつつそんな毎週新作をチェックしてるわけじゃなく、お気に入りの作品を繰り返し見るタイプだけど。

アニメって物語として結構完成されたものに感じる。
ドラマって登場人物の役柄とは関係ない個人情報の印象とか入ってきちゃうこともあるし、見てて「ちょっと風強くないか、、、」とか余計な事を考えてしまうのです。
それに、人間が演じることで現実味が強すぎてしまうというか、もちろんそれがいいことではあるんだけど、臭すぎるセリフとかがあると「いや、現実じゃありえないじゃん」とか考えちゃうことがある。

比べてアニメって適度な揺らぎがある気がする。
基本的には空想の世界のことだと認識しながら見ているので、なにか少しくらい不自然なことがあっても「まあ、アニメだし」って思う。
だからこそリアルな描写があると、反動で妙に現実感を感じる。
あとは外見とかでわかりやすくキャラクター付けがされているので見やすいっていうのも好きなところ。

それで今回紹介したい作品は『有頂天家族』というアニメです。
この作品については何回かお話しましたが、良い作品で、好きな作品なので何度でも言わせていただきます。
原作は森見登美彦さんという作家さんの小説です。
ただ物語はもちろん、絵や空気感も最高なので、アニメはお勧めです。この物語の舞台は京都ですが、ほんとの京都の街並みが忠実に描かれているのが多く、見ていると京都に行きたくなります。
また作中に出てくるバーも実在のもので、作品の中で架空のカクテルを飲むシーンがあるのですが、京都にあるモデルになったバーに行くとその作中のカクテルが飲めたりするのでお勧めです。
勿論私は行きました。

主人公は下鴨矢三郎というタヌキです。
母と兄弟4人の計5人で京都の下鴨神社に住んでいて、特技は化けることで、基本的にはヘタレ男子大学生の見た目に化けてます。
京都ではタヌキのほかに人間と天狗が住んでいます。
天狗にはそれぞれ治めている山があり、その中で赤玉先生という天狗が矢三郎の師匠にあたります。
タヌキと天狗には絶対的な力関係があり、タヌキが天狗に逆らうことはできません。
ただ他にもタヌキが恐れているものがあります。
いわば天敵のようなもの。
それが人間です。
人間の手にかかってしまえばタヌキは鍋にして食べられてしまうのですから。
そしてその人間の中でも京都のタヌキ達が恐れているのが“弁天”です。
弁天という女性は最初はただの高校生だったものの、赤玉先生が天狗的教育を施したため、今では天狗の力を手に入れ、師匠である赤玉先生ですら敵わないほどになってしまいました。
矢三郎の父親である下鴨総一郎も弁天に食べられてしまいました。
『有頂天家族』のアニメのシーズン1では主にこの総一郎が食べられてしまった謎についてがテーマになります。

さて、ここでこのアニメの魅力についてです。
上述した通り登場人物はいろいろありますが、物語はほとんどタヌキ達の争いで話が進んできます。
タヌキ界のトップを争う話でいろいろ揉めてはいるんだけど、結局見ているほうとしては正直「タヌキの話だしなあ」と思ってしまうのです。
そして物語の魅力の大きな部分を担うのが、主人公:下鴨矢三郎の存在です。
矢三郎の口癖は「面白きことは良きことなり」。
揉め事だろうがタヌキの天敵である弁天と対峙するときでさえ、矢三郎は「このスリルがやめられなくもある」と笑っています。
この矢三郎の立ち居振る舞いがこのアニメを一気に面白くさせているのです。
時に酒に酔い、時に女子高生に化けてみたり、時に宿敵であるはずの弁天や人間たちと鍋を囲んでみたり。
そんなタヌキの宿敵・弁天と仲良くしている矢三郎を見て他のタヌキ達は「そんなことでは鍋にされてしまうよ」と言いますが、矢三郎は「その時は笑って鍋になってやる覚悟だ」と笑います。
まさに「面白きことは良きことなり」の精神。

このアニメは冒頭、矢三郎のこんなセリフから始まります。

「人間は街に暮らし、狸は地を這い、天狗は天空を飛行する。
平安遷都この方続く、人間と狸と天狗の三つ巴。
それがこの街の大きな車輪を回している。
天狗は狸に説教を垂れ、狸は人間を化かし、人間は天狗を恐れ敬う。天狗は人間を拐かし、人間は狸を鍋にして、狸は天狗を罠にかける。
そうやってぐるぐる車輪は廻る。
廻る車輪を眺めているのが、どんなことよりも面白い。
私はいわゆる狸であるが、ただ一介の狸であることを潔しとせず、天狗に遠く憧れて、人間をまねるのも大好きだ。
したがって我が日常は目まぐるしく、退屈しているひまがない。」

そして狸界のリーダー争いに決着がつき、神社で初詣をするシーンでこの言葉でこのアニメが終わります。

「我ら一族とその仲間たちに、ほどほどの栄光あれ。」

“ほどほどの栄光”なんて素敵な言葉遣いすぎます。

面白いのでぜひ見てくださいな。

#アニメ感想文

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