20200615 No21 毎朝のケーススタディ:10年間の宿題 - 1

本日で、ナイジェリアでの任期は終了。

という予定であったが、僕はこの記事を首都のホテルで書いてある。なので、任期は延びていることだ。(本来であれば、昨日に米国に発ち、米国の某公衆衛生機関で研修を受ける予定であった。)

米国研修の機会は逃したが、同等かそれ以上の学びの機会を疫学チームの朝ミーテイングで得ている気がする。米国研修でもきっとケーススタディという、実際のシチュエーションを想定した勉強法が実施されていたと思うが、こちらはケーススタディの元素材で経験を積ませてもらえている。

特に、今の状況が稀有なのは、完全に地元の人と一緒に、州保健省の中で働いているということだ。北部では国連機関や国際NGOはパートナー組織として、州や自治体を支援するという立場であった。しかし、今は国籍と肌の色が異なるだけで、ナイジェリア人のチームリーダーから、均等に仕事を振られてこなしている。おそらく、今後の国際保健キャリアを予見しても、この立場で毎日仕事することはないであろう。

その仕事の中で頂いた、自分への宿題を記しておこうと思う。このパンデミック対応で、現場で課題となっていることです。未来の有事では、これらにより良く対応することを目指すべきである。

COVID19を信じられない住民たち:

エボラの時も住民が医療者を攻撃するということがありましたが、それと基本構造は似ていることを見ているのでは。肌感覚ですが、2-3割の人は今パンデミックが起きていることを信じていないように思う。それには、二つ要因があると思います。1つ目は、見えにくい病気であるということ。Asymptomaticやmild symptoms など言われても、ピンときません。皆さん、マラリアの一種のように捉えている。2つ目は、いきなり実施された公衆衛生対策が、いきなりすぎた。元から政府に対して信頼していない人々は、ロックダウンや州間の移動規制は政府の横暴で、自分たちは不利益しかこうむっていないと感じている。

今までにない病気でよく分からないし、いきなり極端なことを実施する。エボラでも同じではなかったでしょうか。致死率が高くて、罹患したら家族から引き離されて、死亡しても、まともな葬式もあげることも許されない。エボラ対策を経験したことないですが、類似性はあるのではないかと思います。

宿題①「社会・地域とのコミュニケーション方法の確立」
国際保健でも、Communication for Development(開発のためのコミュニケーション)という分野が重要視されているが、今になってその重要性が理解できた。戦略的かつ系統的に、コミュニティに情報伝達して、信頼関係を構築しないと、何かの行動を期待することは難しい。日本であれば、国家元首が緊急事態宣言をすれば、危機感を持ってくれる人が大多数であろう。しかし、大統領や政府および繰り返し訴えても、全く信じてもらえないがある。

では、今の状況で考えうる解決策は何か。
1)宗教・伝統的リーダーの巻き込み。ナイジェリア人は非常に信仰深いので、キリスト・イスラム・伝統的指導者に協力してもらう。これはポリオ対策や予防接種でも取っていた方法であり、尚更重要であると思うのだが、このパンデミックにおいてどれだけ有効的に実施されているか不明だ。
2)地元メディアの巻き込み。疫学チームの活動取材にロイターが来たことがあった。Contact Tracingの活躍を取材してくれたわけだ。しかし、ロイターは、ナイジェリアの出来事を、国外に発信していく。我々が発信すべき対象は、自分たちのオフィスから30キロ圏内にいる人たちだ。なので、地元メディアにこちらから、働きかけるとかはできないであろうか。
3)SNSにスマートに対抗。思った以上に、SNSで広まるデマが、人々の不信感や恐怖を煽っている。朝のミーティングでも、ネガキャンにはポジキャンで対応すべきだと提案が出た。一理あるように思う。従来のコミュニケーション方法に加えて、このスマホによるSNS情報社会を味方につける必要がある。

想像以上に、長く書いてしまった。これはシリーズ編になるかもしれません(笑)


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